La Nuit (1985)
1966年のクチュールデビューから、金属などの異素材などを多用し、常に斬新な作品を発表し続けたパコ・ラバンヌが1985年に発表した、ラ・ニュイのオードパルファムです。調香は80年代を中心に濃密な香りを数多く手がけたジャン・ギシャール、ボトルはアンドレ・リカルドの作品で、発売当時はきちんと3濃度同時発売に加え豊富なバスライン、限定クリスタルボトルも発売されるなど、鳴り物入りだったようです。現在は廃番ですが、最終ロットなのかEDTのデッドストックを細々と見かけます。
ずばり「夜」の名を持つラ・ニュイは、まさにしっとりとした大人の女性にしか似合わない、80年代のクラシカル・シプレとはここに帰結する、と言える位の傑作です。トップのフレッシュなシトラスやバジルが潮を引くと、オークモスやパチョリ、ローズ、レザーがゆっくりと花開きます。とがったところがどこにもない、大変肌なじみの良い香りです。発売当時の広告に登場する、青いソワレをきた美しい背中の大柄な女性、まさにそのイメージです。オードトワレもありますが、EDPの美しさがカラー劇画調だとしたらEDTはモノクロオフセットの風情ですので、手に入るのならEDPをお奨めします。
80年代の名香と名高いラ・ニュイも、最近のブランドイメージから突出してアダルトなせいか、惜しくも廃番となってしまいましたが、欧米では熱心なファンが多く、かなりのプレミアがついているようで、オークションなどで適正価格での出品があると争奪戦になっています。ちなみにラ・ニュイはミニボトルが発売当時相当流通しましたおかげで、ミニボトルでならそこそこ手に入りやすいので、もし見つけたらどうぞお試し下さい。
ラニュイ EDT 50ml