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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Clive Christian Noble VII collection : Cosmos Flower & Rock Rose (2016)

今回のリアンヌ・ティオ・パルファム訪問時、リアンヌさんが別れ際「お好きじゃないかも知れないけれど」とサンプルボックスを持たせてくれた、世界で一番高価な香水を売っているブランド、クライヴ・クリスチャンのレビューをLPTでご紹介する機会が遂にやって参りました。

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ノーブルVIIコレクション サンプルボックス 2mlアトマイザー2種入り

今ここでクライヴ・クリスチャンについて、ブランドの始まりから現在まで書くには、クラシック香水紹介ガイドを標榜するLPTとしてはどうしても超えねばならない山ークライヴ・クリスチャンが買収したのと同時に消滅したクラウン・パフューマリーについての総括ーがあり、現時点では時間的都合上クラウンについて先に特集する事ができないため、今回はサンプルレビューとして、うっすらご紹介させていただきます。クライヴ・クリスチャンといえば、本人はレディオヘッドのトム・ヨーク系でイマイチ杳とした風情ですが、このクライヴ氏のお嬢さんであるヴィクトリアさんが超絶ド派手で、スーパーセレブ級の華やかさはおのずとブランドイメージの中心となっています。新作発表会などではでかいセンスに香水を吹き付け、客に向かってわっさわっさ仰ぐプロモーション風景が有名です。
 
今回ご紹介するのは、クライヴ・クリスチャンの最新作、ノーブルVIIコレクションと銘打ったペア・フレグランスで、1700年、英国イングランド北西部・チェシャー州(LPT的には『香水を買うならマクルスフィールドのブーツに行くといいわ!』で一躍有名になった、マクルスフィールドのある州、まあ田舎です)のウィラストン村に、ジョン・ベイリーという当時のお金持が私邸として建築し、子孫が19世紀半ばまで増改築を繰り返していったものの没落、20世紀後半には廃墟同然と化していたカントリーハウス、ウィラストン・ホール(チェシャー州第2級登録建築物及びナショナルトラスト登録文化財)をクライヴ・クリスチャンが購入、その後10年かけて補修工事を行い、18世紀前半に栄華を極めたクイーン・アン・スタイル(即位1702〜1714のアン女王の治世に由来する、イングリッシュ・バロック調とも呼ばれる建築様式)の邸宅を、家具職人だったクライヴの卓越したインテリアデザインの技が現代に蘇らせ、さらには香水の世界観へまでも昇華させたーのが、このノーブルVIIコレクションであります。
 
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ウィラストン・ホールの庭。 
 
ノーブルVIIコレクションの核となるのは、クイーン・アン調の英国庭園で愛でられた、植物愛好家や冒険家垂涎のエキゾチックなふたつの希少植物で、そのままレディスのコスモスフラワーとメンズのロックローズに用いられており、構想幾年月、クライヴが昨年の投資ファンド買収にもめげず世に出したこのコレクションは、まさに18世紀クイーンアン治世への果てしなきオマージュ。調香は、公式には明かされていませんが、クライヴ製品をレギュラーベースで手がけているゲザ・ショーンと思われ(リアンヌさん談)、ゲザ氏は何といってもエセントリック・モレキュールズ01を手掛けたイソEスーパーを偏愛するアンチ・パフュームを代表するドイツ人調香師という一面の他に、オーモンド・ジェインでもフォーコーナーズを始めオーナー調香師のリンダ・ピルキントンとの共作も多数あり、イギリスのメゾンブランド必携の売れっ子です。それでは、各作品の紹介に入らせていただきます。
 
Cosmos Flower (2016)
 
熱帯アメリカに位置するメキシコ原産で、スペインに渡った後ヨーロッパにひろまり、日本には明治20年ごろ渡来したと言われるラテン語の「宇宙」から転じたキク科の花、コスモスは、チョコレートコスモスという品種があり、これがチョコレート様の芳香を持つことから、コスモスフラワーには天然ココアノートが加えられています。ジャスミン、オスマンサス、プラム、ピンクペッパーをココアノートが束ね、柔らかなパウダリー感が肌馴染みを演出する、痩身蒼白美少女系かつ今風のフルーティ・フローラル・シプレです。パルファム濃度ですが、香り立ちは至って平坦で、パルファムに期待する序破急はあえて盛り込まず、フラットに持続していきます。モチーフが18世紀のバロック邸宅に広がる「エキゾチックな英国庭園」にしては、エキゾシズムと言うよりはスクエアなブリット感が勝っており、21世紀的にはあまり意外性がありませんが、これまでのクライヴものにしてはオレオレ度が控えめで、アニック・グタールのオードシャルロットがもう少しフルーティでエアリーになった雰囲気にも感じ、お若い方から違いのわかる熟年女性まで、幅広い年齢層につけやすい、優しいフェミニンな香りです。
 
Rock Rose (2016)
 
 クイーン・アンの治世では地中海から英国へ盛んに輸入され、日本では半日花と呼ばれるほど、開花してもすぐにしおれてしまうものの、原種のバラのような黄や赤の小花を次々と開かせるので、ガーデニングに用いられる事の多いロックローズ。別名ラブダナム、シスタスとも呼ばれ、このロックローズから採るレジン系香料、ラブダナムはマスキュリンなフジェール系フレグランスには欠かせないベースノートです。ノーブルVIIコレクションのロックローズも、その名に違わぬかなりジオッサン系のムックリしたフジェール系で、ネロリ、ラベンダー、バイオレット、ハーブ、パチュリ、アンバーといったフジェール系の王道に、ココアノートを加えコスモスフラワーとのペアフレグランスとなっています。小声系のコスモスフラワーを対比して、ロックローズは強い男のイメージを主張しておりますが、双方ともまずまず格式のある香りなので、オンタイム向けといえましょう。

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ウィラストン・ホールの内装と間取り。

 

さてこのノーブルVIIの舞台であるウィラストン・ホールですが、英国高級物件紹介サイト、ラグジュアリー・ポートフォリオ・コムではすでに「もとクライヴ・クリスチャンのチェシャー別邸」として大手不動産会社・ストラット・アンド・パーカー社が管理、200万ポンド(≒2億6千万円、2016年10月現在)で売りに出されています。イギリス人にとって不動産を直して買い値より高く売るのは常識、もとは一体幾らで入手して、売れたら幾ら手にするのやら。こうやって資産家はさらに資産を増やしていく、または懐の寒さ対策で家を売るわけですが、総面積4.8エーカー(約5,876坪)、ベッドルーム数6、屋根裏部屋付2階建邸宅の敷地面積約7,000平米と、ちょっとウサギ小屋住まいの日本人には想像のできないサイズなので、今回もオランダ取材に際し英国側で大変お世話になったウィットネル氏にウィラストン・ホールについて伺うと「イギリスの田舎屋敷にしては大した事がない。わしのうちは3/4エーカーじゃ」(ウィットネル氏談)と一般人宅の敷地面積を引き合いにだして、尚更わからなくなりました。しかしなんと「そこ、うちから車で1時間半もかからんのう。ついでにわしはナショナルトラスト永年会員じゃ」とのことなので、ひょっとしたらそのうちリアル・ノーブルVIIに足を踏み入れる事が出来るかもしれません。さあ、その時物件は誰の手に?乞うご期待!!
 
Clive Christian Noble VII collection 
Cosmos Flower perfume 50ml : 495 euros
Rock Rose perfume 50ml : 495 euros
 
画像(サンプル以外):ラグジュアリー・ポートフォリオ・コムより転載