La Parfumerie Tanu

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Tea Rose (late 1970's) EDT

A Gentleman takes Polaroids chapter twenty two : Rosy Gentleman in Summer 1
 
立ち上がり:名前の通り!ローズの香りとグリーン系のお茶の香りそのまんまです。夏の朝には良い感じですね。すぐ汗で流れそうですけど
昼:意外?と香り残ってます。印象は朝と変わらず。まあ今日はここ数週間の猛暑が一息ついて少し涼しいのも原因だと思います。
15時位:最初の印象と殆ど香りにニュアンスが変化しない。珍しいです。大分薄くなってはきましたが
夕方:流石息切れ、でも夏にしては良く持った。東北の夏のような暑いけど湿度が低い環境に似合いそうです。
ポラロイドに映ったのは:盛夏の弘前スタバ(旧陸軍師団長官舎の建物をそのまま使っている)でアイスティーを飲む弘前城横の図書館勤務司書。
 
Tanu's Tip : 
 
「災害級の酷暑」と気象庁が発表するほど猛烈な暑さに見舞われている日本。この異常なまでの暑さは日本だけでなく、アメリカ西海岸などでも50度以上を観測、北極圏ですら30℃オーバーといいますが、アメリカや北極圏の場合、日本の様に連日死亡者が出ているとは聞こえてこないので、たぶんそこは人が沢山住んでいる場所ではないと思います。一方で住宅密集地が暑さに痛めつけられているここニッポン、こんな時期はもう香水云々よりまずは経口補水液だと思いますが、それでもジェントルマンはやりました。しかもここまで暑くなるとは思っていなかった時期からとっくに決まっていたAGTP夏休み特集、それは「夏のバラ色ジェントルマン」。パートナーとシェアできる、ローズを主軸にした香りを前後編でお届けします。
 
前編の今月は、皆さんお待ちかねの「安物買い編」。心と体とお財布にやさしい、三方よしの3本をご紹介します。

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ティーローズ EDT 120ml
まずは、アフォーダブルなローズ系香水としては、これを知らずしては何も語れない、パフューマーズ・ワークショップのティーローズをご紹介します。1970年、レブロンやエスティローダーなどの香粧品業界で経験を積んだドナルド・ボーフナーが妻のガンと共にニューヨークで創業し、現在も家族経営を続けている香水会社、パフューマーズ・ワークショップは、現在のニッチ系ブランドの前駆的形態の会社で、創業当初は社名の通り’ワークショップ’形式でオーダーメイド香水を販売するカウンターを大手デパート、ブルーミングデールズに出店し、既存の香水では満足できないニッチなファン層を獲得。その経験を活かしレディメイドの作品として登場したのがこのティーローズです。日本では昭和から平成の初めごろまでは代理店もあり、ソニプラなどの輸入物を扱うバラエティショップの定番ブランドで、ティーローズはファンも多かったので、ご記憶にある方や実際ご愛用だった方も多いと思いますが、いつのまにか日本撤退しました。とはいえ現在も楽天やアマゾンなど通販で容易に入手可能です。
 
発売以来6千万本以上世界中で売れ、一度も廃番になったことのないビッグヒット&ロングセラーのティーローズですが、発売年が公表されておらず、1972年とも75年とも、そして79年とも言われています。オーダーメイドからスタートしたブランドの製品なため、どの段階を既製品として一般発売と見るかが難しいからかもしれませんが、LPTとしては一応公式サイトの記述に基づき「70年代後半」としておきます。ティーローズはピュアディスタンスで数々のフローラル系作品(1、アントニア、オパルドゥ)を手掛けたフィルメニッヒ社のマスター・パフューマー、アニー・ブザンティアンのデビュー作としても知られ、パフューマーズ・ワークショップ作品の香料もフィルメニッヒが提供しています。 

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何故そこまで世界的ヒットに至ったか、一番の理由はその価格にあります。2018年現在、EDT120mlでUS$15.99(米国内定価)というぶっちぎりにアフォーダブルながら、その香りはどこまでも普遍的な、いつの時代にも愛されるナチュラルなローズ、しかもどこにでも売っている抜群の入手性で、子供から大人まで手が届き、ひいてはモナコ公妃グレースやダイアナ妃をはじめとする王侯貴族や、カトリーヌ・ドヌーヴやニコール・キッドマンなどのセレブリティまでもが、安物香水として一笑に付すことなく「愛用の1本」としててらいなく披瀝する人気の沙汰は、ニッチ系ブランドの前駆的形態の会社とご紹介はしましたが、ニッチ系香水の三悪ともいえる「疑似希少」すなわち①価格のつり上げ②入手性の悪さ③難解礼賛、の真逆を行くところに起因しているのは、まごうことなき事実です。
香りとしては「ローズ香水は女性物」という型にはまらない、ローズ本来の甘さだけでなく、ピオニーの酸味にゼラニウムやバイオレットリーフの青みをアクセントに、シダーウッドですらりと整えた、すっきりとグリーンの利いたソリフロール系ローズで、ベースに甘み成分を用いないぶん、酸味がちできりっとした香り立ちは男性がつけても浮き立つことなく、最初から最後まで同じトーンで楽しめますので、ソリフロール系ローズは好きだけど、徐々にホワイトムスクやバニラが顔を出すものが多いから敬遠しているという男性にも、ティーローズは安心して実装可能ですが、逆に女性らしいまろみのある甘露なバラがお好みの方には物足りないかもしれません。蛇足ですが、ティーローズとは中国原産の庚申バラという四季咲き種の一種で、紅茶に似た芳香を併せ持ち、バラの中でも特にリラックス・鎮静効果の高い精油が取れるバラを指します。確かに、ダージリンの様に青々としながら甘い香りの紅茶ってありますよね。ジェントルマンのポラロイドに映ったのは、なんとも涼しげにアイスティーを飲む、きっとご本人も涼やかな殿方であろう、図書館司書。このスターバックスコーヒー弘前公園前店、行かれた方はご存じだと思いますが、質実剛健、武骨ながらたいせつに時をつないできたのがよくわかる、とても素敵なクラシックハウスで、夏の陽射しに頬を撫でる涼風…今の東京では夢のまた夢ですが、ティーローズはジェントルマンのポラロイドに一服の涼風をもたらしました。

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スターバックスコーヒー弘前公園前店 コンセプトストア2号店

今回ご紹介したのはEDTですが、日本では見かけませんが現行品でEDPもあり、120mlで70ドルとEDTの4倍以上もしますが、それでも一般的なメインストリーム系香水と比較してもまだまだアフォーダブルで、アフォーダブル系香水の鑑の中の鑑と言えましょう。ちなみにパフューマーズ・ワークショップは現在高級ラインAmouroud(アムールード)を前面に押し出していますが、ティーローズのような廉価なレギュラーラインもしっかり継続販売しています。