La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Tolu (2002)

Tolu (2002)

イギリスの、それも女性調香師主宰のブランドというと、ミラーハリス(リン・ハリス)、ジョーマローン(同、エスティローダーグループ)が日本では絶大な人気を誇りますが、この二つのブランドがどちらかというといかにも日本人が大好きな「香水が嫌いな人でも大丈夫」的でボタニカル=自然派空間演出系イメージが強い(実際に日本は最大の顧客市場らしい)のに対し、2002年にロンドンはボンドストリートに1号店をオープンしたリンダ・ピルキントン女史主宰の手作り香水ブランド、オーモンド・ジェインは、自然派、手作りといえば何でも許されるといった甘えは感じられない完成度の高さで、イギリスらしく空間演出もしつつ、ぐっと濃度を上げた香水好きのための香水らしい香水を輩出しています。ニッチ・フレグランスではどこも売り口上としていますが、OJもご多分に漏れず「最高級の天然香料をふんだんに使い…」とお約束のように仰っております。

現在のレディスとしては、シングル系フローラルノートが5種、フローラル・オリエンタル系が3種、ブランドのシグニチャー・フレグランスであるウッディ系のオーモンド・ウーマン、計9種ラインナップしており、10種ともEDPを基本にすべてパルファムが揃っているのが嬉しい所です。一律、EDP50mlが80ポンド、パルファムも50mlで184ポンドという価格帯も、安いか(ディスカウンター)高いか(ニッチ)に振り切れている香水市場において中の上程度、うまい所中間層を突いています。

ブランド創立時からの代表作であるトルーは、名前の通りトルーバルサムを主軸にした、ソフトでマイルドなオリエンタルノートで、色でいったらキャメル色。それも座るとずぶずぶと身体が沈み込みそうなふわふわのソファや、体温でぬくもりきった低反発枕のように、すぶぶぶぶーととろけこんでしまうような柔らかさが、時に心地よく、時にイギリスの香水にありがちな、若干華に欠ける印象を抱きます。フランキンセンスやミルラ、バルサムやアンバーを使っているという割にはエッジが全くなく、大雑把な印象としては重さのないバルサミックなアンバートンカで、非常に優等生的で滑らかなオリエンタルなので、秋冬用に温かい香りが1本位欲しい時には気負わず難しくないのでお奨めですが、一方で、誰しも1枚位は秋冬の装いに極上のキャメル色したカシミヤのセーターが欲しいと思いますが、いざ手に入れた所で、極上なのはわかるけれど、これが似合うかどうかは別問題で、品格も色香も存在感もキャメルのセーター1枚で表現できる人はそうそういない、キャメルは案外体型が丸出しになるので、後ろ姿が自分で気が気でない、というのに少し似ている所もあり、普通に香るか粋に香るかはその人次第、という危うさもありそうです。変な事ばかり書きましたが、香りとしては丁寧で、良くできているので、サンプルなどで手に取るチャンスがあったら、OJの中ではいの一番にお試しいただきたいと思います。

 

トルー 旧パッケージEDP50ml & 新パッケージEDP

画像提供:ユナイテッド・パフューム(オーモンド・ジェインの親会社)広報担当