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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Aramis (1966)

立ち上がり:重厚な香り。ウッディな感じもする。これ付けるにはまだ自分は若輩者の気がします(もう50ですが)
 
昼:やや重い感じが薄らぐ。でもなんかズーンとした感じは残る
 
15時位:ここらでやっと身の丈にあった感じ
 
夕方:いい感じに残香が残ってます。でも私みたいな職場にジーンズとカジュアルシャツで行くような奴がつけるもんじゃないなこれ。
 
ポラロイドに映ったのは:ジ・オヤジ!でも加齢臭が臭くない人。
 
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アラミス オードトワレ110ml
 
Tanu's Tip : 
 
ユースデューで社会現象を起こし、適正価格で良質な、かつ幅広い嗜好の消費者に訴求する製品を輩出し、辛口フレグランス・ジャーナリストもアメリカ人なら多少ひいき目に評価する、エスティローダーのフレグランス。アラミスは、エスティローダーの別ラインとして立ち上げたメンズブランドで、デビュー作であるアラミスも、ユースデューと同じく社会現象的にヒットしました。奇しくも、昨日ご紹介したサーアイリッシュモスと同年に発売されましたが、現在でもアラミスはアメリカンメンズフレグランスブランドのメインストリームに君臨し、日本でもデパートにはアラミスのカウンターが数多く出店しています。
 
若い頃からフレグランスを使う嗜みのあったジェントルマンが、自分のお金で初めて買ったのがこのアラミス。大学の卒業旅行で立ち寄った空港の免税店で購入し、最後まで大事に使い切ったそうですが、当然学生で香水の知識も乏しく、免税店で幅を利かせていたのか、予算内だったから、名前を知っている香りがアラミスだけだったからか、いずれかの消去法的選択で購入したようですが、ちなみにその際お母様へのお土産に買ったのがプワゾンで、これはどう考えても親の顔を浮かべる前に流行っていたから買ったとしか思えないのですが、今でもジェントルマンの実家に行くと、当時新発売のプワゾンが、ほぼ未使用のまま箱に入って本棚の隅に置かれています。お母さん、嬉しかったんだろうな、大事にとっておいて…と帰省の際聞くと「ああ、あれ?持って帰っていいわよ」と即答で言われ、ちょっと残念でした。
 
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男の身体に、アラミス。挑発的で、洗練され、そして男らしい(箱の裏より)
 
カボシャール(1959)、エスティ(1968)、アロマティクス・エリクシール(クリニーク、1971)そしてソフィア・グロスマンとの共作であるビューティフル(1985)など、歴史的名香カボシャール以外は主にエスティローダー系列のヒット作を手掛けたベルナール・シャンが調香したアラミスは、カボシャールのペアフレグランスと言ってもいいくらい面立ちが似ているレザーシプレで、革っ!苔っ!パチュリっ!といったレザーシプレの塊に、ハーバルアロマティックなノートを重ねた、ジェントルマンが言う通り、確かにおっさんだけど臭いおっさんじゃない、責任感の強そうな身持ちの良い男性を彷彿とします。この辺も、イメージとしてはエスティローダー系なので「アメリカン・プライド」な自負を感じます。アラミスも長い年限の中にだいぶ香りが変わったと言われますが、現行品のアラミスはドライでガツンと来たあと、本人ではなく周りの人間が「え、ええ?えええ~香りや~」と深呼吸したくなるような、いい男の香りなので、長く使いつけている方には申し訳ないですが、変わってもいい男、というのは心強いですね。

Sir Irisch Moos (1966)

A Gentleman Takes Polaroids chapter eight : An Origin of a Gentleman
 
立ち上がり:うーん懐かしい男の香水の匂いだ。子供の頃に大人がつけてたヘアトニックぽい感じもする
 
昼:トイレの芳香剤みたいだなあ…
 
15時位:古びたビルの洗面所を思い出すぞ
 
夕方:なんにせよ懐かしい香りだ。しかし二度とつけようとは思いわないかも…昔なんでこれを所望したのかよくわからない。
 
ポラロイドに映ったのは:青年から中年への端境期の過ち。
 
Tanu's Tip : 
 
ドイツ大手大衆化粧品会社、モイラー&ヴィルツが、ドイツなのになぜか「アイルランドの苔」にインスパイアされて作ったメンズライン、サー・アイリッシュ・モス。ちゃっかりサーの称号までついています。かつてアイリスと苔、みたいな意味だと紹介されていたこともありますが、Irischはドイツ語で「アイルランドの」「アイリッシュ」という意味で、アイリスは形容詞でもIrisと無変化なのと、アイルランドは苔で有名で、全ヨーロッパに生息する苔の実に約半数がアイルランドに集中しているので、苔といえばアイルランド、アイルランドの苔、サーアイリッシュモス、というわけです。いちおう発売から50年を過ぎても廃番になっていないロングセラー品です。
 
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サーアイリッシュモス オードトワレ50ml 各種グルーミングラインあり
 
明治屋のメロンシロップばりに着色したグリーンの液体で「苔」のイメージを増長していますが、こんな絵具みたいな緑の苔があるかよ!というぐらい、香りもいたってケミカルなハーバルグリーンです。これを、身体につけるのか?とまで思いますが、実はこのサーアイリッシュモス、今から10年くらい前のある日、ジェントルマンが古い香水本で紹介されていたドイツのメンズフレグランスを見ていて「ショウブの根と苔」と訳されていたサーアイリッシュモスに強烈な興味を持ち、そんなにつけてみたいなら、買ってあげよう…と、日本未発売なのでEbayかなにかで買ったところ、まあ甘くて重く、ショウブ(アイリス)は誤訳なので目立ったアイリス香もなく、濃厚で古臭いおっさんメンズ香水臭だったんですが、ジオッサンなだけでそう悪い香りでもなかったんですよ、ただあまりに重くて、当時淡口好みだったジェントルマンはサーアイリッシュモスを、冬場には時折手に取っていましたが、あまり使わないうちに棚晒しで何年も経ってしまい、大掃除かなんかの時に洗面所からおろして私が捨ててしまったんですよ。それで、まあこのジェントルマンコーナーを始めたら、やたらと「サーアイリッシュモスに似ている」と亡霊のように思い出すので、あれがジェントルマンの原点なのか、捨てなきゃよかったな、ともう一度買い直したわけです。そしたら、この私でもおかしいと思う位、香りがケミカルに変わっていて、もはや香水と言っていいのか?と思う位どぎつい処方変更で、まあ、よくある話で最初は真面目に作っていてもだんだんドラッグストアラインに零落して、処方も材料も安っぽくなったんだろうな、でも長年の愛用者は今やおじいちゃんだろうから、嗅覚も多少バカになって需要と供給が合致しているのかな、と、サーアイリッシュモスといい、一昨年英国地方都市薬局特集でご紹介したレンセリックのツイードといい、こういう現行品を手に取り、嗅いだ瞬間ノックアウト、という強烈ケミカル臭のクラシックフレグランスには、どこかパターン化した「負の段取り」みたいなものを感じます。破壊力的には資生堂のオードロードスを彷彿とします。あれも甘酒横丁(人形町)の古い薬局では、フルラインナップ棚にあって、お店の人に聞いてみたら「基本、うちは香水や化粧品は在庫しないんだけど、定期的に来る人がいる商品だけは在庫して棚に並べているんですよ」と言っていましたが、サーアイリッシュモスも、思うにドイツではチェーン店系のドラッグストアや普通のスーパーじゃなくて、高齢化が進んだ地域の個人商店や、盛岡のニュータウンにあるスーパーのメンズコスメ売り場みたいな所でしか手に入らないじゃないでしょうか。
 
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参天製薬 大学目薬って感じ
 
ちなみにモイラー&ヴィルツは1792年から200余年世界で愛されている元祖オーデコロンの一つ、4711を出している会社で、日本では柳屋ポマード(まだ売ってます)で有名な柳屋本店が輸入総代理店ですが、さすがにサーアイリッシュモスは出してくれない、というより出しても使う人がいなさそう…

Perfume Lecture by Sachiko Hirata, the top fragrance jounalist

2017.3.13
香りのレクチャー講座・受講者募集!
☆☆☆夜の部(18:30)店主タヌ参加決定!☆☆☆

 

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店主タヌ好評連載「忘れられない香り」掲載の香水専門誌、パルファム編集長にて、日本を代表する香水評論家、平田幸子先生のレクチャーが開催されます。

ここ日本では万年初心者向け勉強会やお茶会・サロン的な歓談の場は多々ありますが、その先を知りたい一般愛香家にとって、納得できる学びの場はそうありません。香水をただ今そこに香る「香り」という一面だけではく、歴史・文化・産業・ビジネスといった多角的な方向からみつめ、一方で香水を「売る側」から見た店頭やメディア向けアプローチなど「香水ができるまで」と「香水ができてから」のすべてがわかるのは、香水業界に唯一存在する専門誌・パルファムの編集長として、香水評論家としての長きにわたるトップキャリアを誇る、平田幸子先生の講座がお奨めです。

通常は、全12回修了のパルファム・コンシェルジュ講座など、シリーズ講義を行う平田先生ですが、今回は単発講義となりますので、まずは気軽に香りのレクチャーを受講してみてはいかがでしょうか。

 

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日時 2017年3月13日(月)

時間 昼の部:14:00より 夜の部:18:30より

   ※各部とも楽しいティータイムがございます。

場所 東京都渋谷区神宮前4-32-12ニューウェイブ原宿 8F

   JR山手線「原宿駅」下車 徒歩6分

   東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前駅」下車 
   5番口より徒歩2分
   東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」下車 
   A2口より徒歩8分

参加費 10,000円(税込、資料込)

振込先 みずほ銀行玉川支店 普通 No.903596

    パルファム 平田秀子(ヒラタヒデコ)

 

香りのレクチャー講座 申込

 

≪LPT読者の皆様へ特別なお知らせ!≫

香りのレクチャー講座 夜の部に、店主タヌとCabaret LPTでお馴染みのハンブルサーバント2号・マキが特別参加!キャバレーではキレッキレの厚盛りなくせに、仕事帰りで目の下真っ黒ヨレヨレの頭ボンヤリ自然体な店主タヌと、全方位キュートなリーサルウェポン・マキに会える絶好のチャンス!

レクチャー詳細はこちら↓

parfum-specialist.com

 

 

Authent (2010)

21世紀に入り、香水製作に減速をかけ始めた国内主要メーカーは、まず自社調香をやめフランスのなどの著名調香師を採用したり、ご当地ものやマリー・アントワネットなど歴史セレブの名を借りて、どうにかこうにか話題作りをしてきたものの、海外ブランド品が容易に入手できるようになり、市場の拡大・深耕どころか現状維持も危うくなった時点で、香水=不回転商品とみなし、一斉に廃盤のファンファーレが轟き出しました。一例を挙げると2009年、資生堂国内流通品の大々的な廃番により、欧米でも名香と名高いスーリールをはじめとした、昭和を、いや戦後日本を代表する美しい香りがこの世を去り、幅広い価格帯で多種多様なフレグランスを揃えていたポーラも2015年、サクラガーデンを残し一斉廃番となりました。
 
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オーセント オーデパルファム50ml 15,000円(税抜) 2017年2月現在
 
そんな中、創業よりフレグランスには並々ならぬ情熱を注ぎ続けてきたものの、訪問販売という販売形式が仇になり、全国の化粧品店やデパートなどで気軽く手に取れる資生堂やカネボウ、コーセーなどと比較して、その香水に向ける企業姿勢が伝播しづらかったメナードは、日本企業の中では最も真摯に新作香水を出し続けているメーカーと言えましょう。
フレグランスにおいては、むしろ海外での評価が高く、逆輸入的に話題になった緑映(2002)や重ね香(2004)は記憶に新しい所ですが、一方で2017年1月現在のラインナップのうち5種が1970年代発売のロングセラー品であり、クラシックな香りを次世代へ大事に繋いでいる国内メーカーはそう多くない、いやほとんどないといって良いでしょう。また毎年のように限定品を乱発するのではなく、新作をきちんと何年もプロモーション、販売しているスタイルは、かつてのゲランやシャネルなど、どこのブランドもそうであったように、香水販売の王道だと思います。
 
また、特筆すべきは他の国産メーカーと比較しても、歴史と会社規模の違う資生堂は例外としても、実に25カ国に進出、うち東ヨーロッパやロシア、アラブ諸国にまで展開しており、特に東欧・ロシア・中東では、メインストリームではなくハイエンドなニッチブランドとして、高級香水店などが販売拠点となっています。また、海外展示会においても、毎年9月に開催されるニッチブランドの国際展示会、ピッティ・フレグランツェ(フィレンツェ)に唯一出展している日本企業がメナードです。
 
オーセントは、同名の高級スキンケアラインに賦香した香料が大変好評で、同じ経緯で言えばニュクスのプロディジュー・オイルの香りで、甘くジューシィなアンバーフローラルのル・パルファムもオイルの香りが人気で生まれたように、オーセントもクリームの香りからフレグランスへと昇華したオーデパルファムです。フルーティでフレッシュなブルガリアンローズとベルガモットの立ち上がりに始まり、王道中の王道、ローズドメ・ジャスミン・バイオレットといった、長きに渡り普遍的に愛されてきた、甘露なバニラムスクと清浄なサンダルウッドで底支えしたフローラルブーケで、そこに今や現代のスタンダード香料となったピンクペッパー、アンブレットシードを核としてホルモンバランスに作用するアロマティックな調合香料、FEアロマを加えることにより、ただ甘く華やかなだけでなく、時に眼のすわった、そして自分を甘やかさない、芯の強さを備えた優しさを感じます。時折、アロマティックな丸みというよりは独特な硬さを感じるのですが、この硬さがオーセントの背筋となる個性なのでしょう。
 
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オーセンティックを由来とする、その名に違わぬ品格のあるオーセント
 
オーセントはグラースの老舗香料会社、シャラボとの提携で作られており、奇香珍香に走りやすいネタ切れフレグランス業界から見れば、良い香りというものの基本に立ち返った、天然香料を多用した真っ向スタンダードな作品で、王道フローラルブーケといっても我こそ主役、のような香りではなく、控えめに拡散し、上等な普段使いから改まった席でもお勧めですが、ローズブーケとしては鎮静作用に秀でているので、お風呂上がり、うなじやデコルテにスプレィして深呼吸しながらお休みになるのも贅沢ですがお奨めです。元々がクリームの香りだっただけに、こんな寛ぎも叶えてくれるのでしょう。個人的には、オーセントは出元を敢えて問わないユニバーサルな佇まいでやたら日本の文化だの源氏の世界観だのおもてなしの心だのに走って、ジャポネスク押しで(要は売りがそれしかない)海外マーケットの安易なリアクションを掴もうとする間違ったトレンドとは無関係なところが好印象です。
 
常々、国産香水の荒涼たる現状を目の当たりにして日々さみしい思いをしていますが、こんな真面目な香りと、それをまだ作れる力のある国産メーカーが残っている事に光明を得た感のあるオーセント、いつかふんふんと香るパルファム濃度もまとってみたいです。

Mérefame (1979 / 1981) : updated review 2017

ここ数年で国産メーカーはどこも一様に自社のクラシック香水を廃番や大幅縮小に拍車をかけており、例えば資生堂は、2009年にすずろとホワイトローズナチュラル以外の香水(パルファム濃度)を全て廃番、残る国内流通フレグランスも大幅に縮小し、観光客向けのご当地香水や単発の限定品にシフトしています。ポーラもあれだけ未だにカリスマ人気を誇るセレニオンをはじめとした戦後昭和から20世紀末の香水が2015年一斉廃番となり、フレグランスはサクラガーデンただ1種のみとなり、ボディケアの延長での香りに注力しています。この、ボディケアしか残していない状態が「日本の香水はどんどんダメになる」の動かぬ証拠でしょう。自分の国には、自分の国の人に対し誇りを持って売りつなぐ国産香水が、もう殆ど残っていないというのは、本当に、本当に寂しいです。そういう意味で、昭和の国産香水は、それが限りなく西欧の後追いであれ、よりどりみどりで楽しかった、と婆狸はぱっくり口を開けてオイオイ泣くのです。

 
それでも、数は少なくなりましたが、戦後昭和の国産クラシック香水は、あなたに気づいてもらえるのを待っています。わたしに後どれだけ時間が残されていて、いつ、消えてしまうかわからないけれど、同じ日本人同士、あなたとお話がしたい、会いに来て…微かな声に耳を傾けることに致しましょう。
 

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メルファム 香水 30ml(2015年販売終了発表)

メルファムは、1979年の日本メナード創業20周年を記念し、マダムロシャスに始まりディオレッセンスで締めくくった1960年代、続く70年代をエキパージュで開け、発売当時53歳という調香師としては脂の乗って充実した時期にあったギィ・ロベール師(1926ー2012)に共同調香を依頼するという、全社あげて発売した記念碑的香水です。まずパルファムが、2年後の1981年にオーデトワレが発売となりましたが、パルファムのボトルは、限りなく広がる宇宙空間に存在する太陽、月、そしてそれらにかかる霞や雲を表現しており、この贅沢なガラスボトルが製造できなくなり、惜しくも2015年に販売終了発表となったそうです。それでもしばらくは顧客の要望に応じ、詰め替え用ボトルにて販売していたそうで(この詰め替え用ボトルでも充分素敵だと思うのですが)、いかにメナードがメルファムの源であるパルファムを大切にしていたかがわかります。現在のラインナップはオーデトワレとパフュームドパウダーという国産香水のミニマムスタイルになっています。
 

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メルファム オーデトワレ60ml 9,700円(税抜) 以下、価格は2017年2月現在

香りとしては、非常にスケールの大きいフローラルブーケパウダリーで、映画のスクリーンサイズで言ったら70mm、カメラレンズなら20ー24mmの広大なスケール感に満ち溢れています。現代の主流である薄くて軽くてきつい香り立ちとは無縁の、朝霧のようにくぐもってはいるが、すみずみと広い風景を眺めているような、達観した美しさがあります。香調はグリーンフローラル・シプレとも解釈でき、シプレの基本、ベルガモット・ジャスミン・ガーデニア・ローズ・オークモス・パチュリといった王道の構成ですが、グリーンシプレ感が強く、ここが今の人が「古臭い」と一歩引くところかもしれません。近似値としては、フュテュール(ロベール・ピゲ、1967)や近作ではアントニア(ピュアディスタンス、2010)あたりの、多少経験値を要する香りとも言えましょう。絹織物の艶を持つ、淡萌黄と鳥の子色の羽衣が、幾重にも幾重にも重なって重厚な掛物になっているような、向こうが透けない透明感は、確かに昭和然としていて、タイムレスクラシックとは言いづらいものがありますが、ロベール師とメナードの調香チームが作り上げた架空の女性、メルファムには、言葉は少ないながら佇まいですべてを語れる、女性の根源的な包容力があり、モンプティルゥが肉体美なら、メルファムは精神の美だと思います。今メルファムをつけると、高揚感というよりは一歩、二歩…と自分の立居振舞いが穏やかになる錯覚に陥り、この落ち着きを日本女性の美しさとしてロベール師は表現したかったのだと受け止めます。パルファムはよりパチュリが豊かに、オーデトワレは若干フローラルが前面に出て、パウダーはローズを強調してより親しみやすい香りに感じますので、現行のEDTとパウダーを重ね付けしたら、パルファムのくぐもったグリーンシプレ感がフローラル寄りにシフトして、敷居が低くなると思います。ここまでのスケールを持つ香水が日本にあり、まだ手に入るという意味では、クラシック香水ファンであれば一度は試して欲しい作品です。

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メルファム パヒュームドパウダー100g 6,790円(税抜)

メルファムについては6年前の2011年、EDTをもとにサロンでの試香のみでレビューを書きました(2013年12月、ブログリニューアルの際に再録)が、当時は自国のクラシック香水を正しく評価出来るほどの経験値が伴っておらず、一度きりの試香で一刀両断した苦い経験があり、もう一度、今度はきちんと肌に乗せ、何日も香りと会話をしながら魅力を体感し、再度ご紹介できたのは得難い幸せです。
 
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左より オーデトワレ、香水、香水(リフィル)
 
取材協力:澤田章江様(日本メナードPR室長)