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Tour de Taiwan 2 | Hours & Ours Taipei store

Tour de Taiwan 2 | Hours & Ours Taipei store

デパート激戦区の一角にあるお洒落なお店

台湾二都レポートの2日目は、高雄から台湾高鐵(新幹線)で北上し、昨夏行けなかった台北市内の香水店、Hours & Oursをお届けします。

デパート激戦区・信義地区の大通りから一歩入るといきなり多少閑静な住宅街。防犯のため鉄格子で武装した、お世辞にも瀟洒とはいえない外観のメゾネットが左右に並ぶ路地ですが、この台湾風メゾネット、うちの台湾の親戚もこういう作りの家に住んでいるんですが、中に入るとめちゃめちゃ広くて綺麗!外見の粗雑さからは想像できない高級住宅地なんです。それを証拠に、1Fはきれいにリノベされ、所謂「意識高い系」のカフェやショップが立ち並んでおり、そのひとつがHours & Oursです。

お店では、セールスマネージャーのキーラさんがお出迎え。訪問時は3名のスタッフで営業していました。冒頭にご紹介したメゾネットと同じく、一見小ぶりそうに見える店内は、入ってみたら結構広くてびっくり!スタイリッシュでゆったりとした空間ながら、左右には天井近くまで棚がびっしり。現在20ブランドを扱っていますが、日本なら中洲のテーブルも什器にして、この3倍は詰め込むんじゃないかな?

左)Hours & Ours 正面。上はメゾネット住宅で誰かの家 右)店内奥からみた右側。ジェントルマンを物差しがわりに置いていますが、中の広さが良くわかると思う
私達は自分が好きなものしか売らない

LPT こちらの台北店はいつオープンしたんですか?

キーラ 2022年1月です。翌年1月には台中にもう1店舗オープンして現在2店舗なんですが、台中店はこの3月に移転も控えています。

LPT お、規模拡大ですね?台湾のニッチ香水店はどこも破竹の勢いですね。取扱ブランドを見ると、日本にも上陸している割と知られたニッチストリーム系からレトロモダンな復興系、いかにも極小ロットのインディブランド、どこで見つけて来たのか的アジア発ブランドまで、結構尖がったセレクションですが、誰がどうやって取扱いを決めているんですか?

キーラ 主に社長のシンシアが、Esxenceなどの見本市やネットでアクセスしてブランドと直談判よ。シンシアは香水業界で長く経験を積んだ後、独立してHours & Oursをオープンしたんだけど、基本的にうちの取扱ブランドは、代理店経由ではなく直輸入しているの。ただ、台北店と台中店では売れ筋が違うから、店の個性に合わせて選んでいるわ。そして取扱を考えるブランドは、取引を始める前からスタッフ全員でしっかり作品を学んで、その上でいけそうなブランドを決めて、販売が決まった後も、再度徹底的にトレーニングをするのよ。

LPT 取扱う前から事前研修って激アツすぎですね、取引しない可能性だってあるのに…それってスタッフさんは、取扱いブランド数以上に経験値を上げているという事ですよね。日本では、新作発売時、ブランドや輸入代理店が導入教育を申し出ても「スタッフの負担になるから遠慮して欲しい」と断られて、結果新作が1本も売れないという香水店もある位です。

キーラ そして私達は、自分たちが好きなブランドしか売らないの

LPT 恐れ入ります…。それでは、Hours & Oursで人気のブランドを教えていただけますか?

左より、ヴィオレ、ハイラム・グリーン 中央:バーファムサン、ブラヴァナリッツ(スペインのナチュラルパフューマリー) 右:ローグ・パフューマリー(米)
ジェントルマンが立っていた棚。JF Schuwarzrose以外は未踏ブランドばかり。下半分は在庫棚
台北と台中、初心者とマニアでは嗜好性が全く違うから

キーラ う~ん…

LPT あれえ?どうしました?

キーラ お客さんの中には、香水初心者もいれば、何十年も香水を使っている玄人筋もいるし、台北と台中では人気も違うし…ゴニョゴニョ…

LPT あ、いや、台北店しばりで構わないんで、それじゃ上級者向けに人気の、でお願いします。

キーラ だったら、BARFAMSN(バーファムサン)ね!2022年に創業したマレーシアのナチュラルパフューマリーよ。極小ロット生産というのもあるけど、特にBorneo Teaが人気で、入荷してもしても売り切れてしまうのよ、去年なんか年6回も仕入れたわ!

LPT し、しぶい…鼻から疲れが抜けるような、酸味の効いたお茶の香りですね。パッケージからもっとアバンギャルドなのを想像しましたが、むしろヒーリング系ですかね?高温多湿の台湾で人気なのもうなづけます。

ジェントルマン ライチっぽい香りがする...

キーラ そしてANKA KUS PERFUMES(アンカー・クシュ・パフューム)ね。メルボルンのブランドよ。2022年Art & Olfaction Awardsのファイナリストにも選ばれたの。

LPT あっこれ、フォート&マンレの二人が泣き別れして、ラセイ・フォートじゃない方、通称マンレの方がやってるブランドですよね?パッケージにフォート&マンレ時代の無統一な統一感が滲み出ていますが、マンレ側のデザインだったんですね。

キーラ 最後は、とてもハイクオリティなブランド、ドバイのAZMAN(アズマン)よ。人気なのはジンの香りI am Darkness、ウード満載のRiskね。

LPT ところでHours & Oursは、LPTが応援しているメゾンヴィオレを置いているんですよね。それが縁でお店を知ったんですが、台北店では何が一番人気ですか?

キーラ アビムが一番人気ね!それと、限定販売だったから既に終売しているんだけど、CYCLE001は根強い人気で、未だに在庫の問合せがあるわ、一年中よ。その度に「完売です…」ってお断りしているのよ。

LPT そしてよく見ると、中央のメインテーブルのど真ん中にCYCLE002がいますね!Hours & Oursでも推されていてうれしいです。日本では、鍵付きの棚の最下段に陳列されている店もあったので、こうやって台北で盛り上がってくれるとファンとしては幸せです。

左)店内右側には洗面台もある 右)科学者系調香師、クリストファー・ロダミエルのブランド、The ZOO
やっと会えたローグ(ならず者)

LPT あの、今回楽しみにしていたブランドがあるんです。アメリカの宅香系、ローグ・パフューマリーなんですけど「IFRA度外視で古典香水を適正価格で作る」という、LPT的にはちびりそうなコンセプトで、オーナー調香師のマニュエル・クロスという男性が細々とやっていて、今から5年くらい前に問い合わせたら、まだ販路がなくてEsty(アメリカのハンドクラフト系販売コミュニティ、ヴィンテージやハンドメイド香水の販路にもなっている)に出品していたのを、サンプルだけ購入したんですが、最近リブランディングして、パッケージも洗練されて、ようやく自社オンラインストアや海外拠点もできたのに、日本には出してくれなくなったんですよ。

キーラ あるわよ!ローグだと、うちではL'Homme M. Lacroixが一番人気で私も大好き。人気過ぎてラベルが剥げて名前が消えている位なの(笑) 試してみたいものはある?

LPT L'Homme M. Lacroix、う~んタイムマシン系!ドライな樹脂系ですね。それではいかにも名前がクラシックなChypre Siamをお願いします。(ムエットをもらう)こ、これはたまらん、麗しき時代錯誤の戦前香!すみません、肌に載せてください!(この間他の棚を取材)ああ、もうこれは決まりだ、1本いただきます!

気が付くと13時を回っており、次々とお客さんが来店してきたので、そろそろ失礼する事にしました。台湾のみならず、アジアではここだけ、みたいなブランドが多く集まるHours & Ours。LPTの取材翌週にオーナーのシンシアさんがEsxenceへ買い付けに行くとの事だったので、次に訪問したら、また更にエッジの効いたブランドが増えているかもしれませんね。キーラさん、ありがとうございました!

左)店内正面のメインテーブルど真ん中、ちょこんとCYCLE002が鎮座 右)キーラさん(左)と。いつも思うが香水店の照明は香水に最適化しているため、人間を取るとかなり残念な結果になる。取材中、物凄い情報量で各ブランドの紹介をしてくれたキーラさん。好きなブランドの事は何でも知ってる系の説明だったのは「好きなものしか売らない」から。どのブランドからも「私はこれが好き」とお気に入りを教えてくれた

NoseWayだけじゃなかったメンバーシッププログラム。Hours & OurSは4ランク、下位ランクの値引率は若干低めだが最高ランク・金星達成のハードルも低め、とはいえ1年間で8万NS$の購入で次年度15%OFFって、つまり38万円相当のお買い物なわけで…
Chypre Siam (2017) EDT / Rogue Perfumery

シプレ系の元祖は、言わずと知れたコティのシプレ。シプレ系は守備範囲が広く、ベルガモットに始まり、オークモスでもんやり包まれる、快活と退廃を頻繁に往来する香りです。真ん中の花香料は結構何でもあり、言うならトップのシトラスも甘くなければなんでもいい。シプレ・シャムは、ベルガモットの代わりにタイ料理必須のケフィアライムに置き換え、花香料は濃厚なジャスミンとイランイラン、そしてドライなリフトのニトロムスクとシベットの獣臭がガンガン効いてるヴィンテージスタイルのシプレで、立ち上がりはおっさん香だが、じわじわと女装して、最後は本物の戦前女優が出てくるようなタイムラインに感激。ミドル以降オロナインブーケ迄飛び出して、クラシック香水の魅力総動員です。オードトワレですが1日中ふんふん香るので満足度も高く、ぶっちゃけ今回の台湾ではこれが一番良かった。店頭即決だと大概失敗するタヌが、店頭ムエット→思わず肌乗せ→堪らずボトル購入→勝利宣言、という稀有な1本。惜しむらくは30mlサイズを買ってきた事、これは絶対75mlにすべきだった。

シプレ・シャム(2017) EDT 30ml NT$3,480(≒16,500円) 大きいサイズを買えばよかった…
数々のアメリカの有名シェフと25年間働いたプロの料理人だったマニュエル・クロス(50)が2005年「廃番になってしまったお気に入りのコロンを自作した」時から調香師に転生、独学&宅香インディブランド、ローグ・パフューマリーへと発展した

Hours & Ours Taipei
+886 2 2769 0079
1F., No. 13, Aly. 167, Ln. 30, Yongji Rd., Xinyi Dist., Taipei City 110066 , Taiwan (R.O.C.)

取扱ブランド(2024年2月取材時)

AEMIUM / ANKA KUŞ PARFÜM / AROMAS DE SALAZAR / AZMAN / BAHFAMSN / BRAVANARIZ / EIGHT & BOB / FOLIE À PLUSIEURS / HIRAM GREEN / JF SCHWARZLOSE BERLIN / LE JARDIN RETROUVÉ / MAISON REBATCHI / MAISON VIOLET / OCO / RÉGIME DES FLEURS / ROGUE / ROSAE VIRTUS / VERTUS / THE ZOO / BRUNO ACAMPORA

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