La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Givenchy Gentleman (1974)

立ち上がり: アラミスと似た感じ。でも少しスキッとした感じでしょうか。
昼: ベチバー系の香りが出てきました。
15時位: 大分薄くなってきましたがレザー系が薄っすら
夕方: 前と変わらず
ポラロイドに映ったのは: 夏でもネクタイしめてスーツ着てるけど汗っぽくない人(うらやましい)
 
後世に影響を与えた偉大なる名香のひとつとして名高いジバンシイ・ジェントルマンは、アナイス・アナイス(1978)を共同制作した調香師の一人、ポール・レジェが手掛けていますが、アナイスとジバンシイ・ジェントルマン以外知られていない方で、名香でも調香師とセットに語られることが殆どない香りだと思います。
 
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ジバンシイ・ジェントルマン オードトワレ100ml 当時のいい男の香りがします
 
ジェントルマンはベチバー系と言っていますが、どちらかというとワイルドなパチュリ感が強く、ベチバー主体の香りよりもっと男ましましな感じがします。オークモスやレザーなど、当時男を表現するには欠かせない香調に、体臭と親和性の高い動物性香料で、逆転の発想で「生身の男がそこにいる」という存在感をアピールしながらも、ボタンを閉めてもシャツの下は裸で胸毛がうっすら透けて見えるが、決して嫌らしさにはつながらず、むしろ正しいセックスアピールが完成するという、清廉と淫靡の狭間という絶妙なバランスを保っています。70年代の洋画のエロいシーンで登場するカッコいい男性は、脱ぐ前は1ミリの隙間もないスーツ(三つ揃い)をビシッと着ていて、きっとこの辺りの香りがするんだろうな、というシンプルな想像が働きます。
 
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さてこのジバンシイ・ジェントルマンはジバンシイのメンズとしてはベチバー、ムッシュー・ジバンシイ(共に1959)に続く3作目ですが、ジバンシイはその後色々メンズのバリエーションも増える中、最初のドジョウ、ジェントルメン・オンリーが登場するまで39年もかかっており、その後堰を切ったようにジェントルメン・オンリーのドジョウがバカスカ出ています。よく「ジバンシイ・ジェントルマンを現代的に解釈…」みたいに語られるジェントルメン・オンリーシリーズですが、香りとしては現代的解釈とは言えないくらい現代的な上、よく見るとオリジナル版は「ジェントルマン」と単数ですが、ドジョウは「ジェントルメン」、つまりもはやひとりの男を際立たせるのではなく、最大公約数の群衆としての男性向けに方向性がシフトしており、このオリジナル版とは別物として考えたほうがよいでしょう。セクシーの解釈も全然違い、どこか汚れた匂いも混在した清潔感に異性は本能的に惹かれる、というジバンシイ・ジェントルマンの抗えない魅力を捨てた時点で、ジェントルメン・オンリーシリーズは現代に生きる男性と共に別の道を歩んでいると思います。
 
 

Eau de Fleurs de Cedrat (1920)

A Gentleman takes Polaroids chapter twelve : Gentleman in rainy season
 
立ち上がり: レモン系の爽やかな香り。複雑さはないですな。単純明快でいい香り。
昼: 朝香水つけ忘れてたっけ?
15時位: 上に同じ
夕方: 上に同じ つけて10分もすれば消え去ります。思い切りが良いねー
ポラロイドに映ったのは: こじゃれた茶店なんかで出てくる レモン少し絞ったお冷。
 
Tanu's tip :
 
香水の出来不出来を測るうえで、日本ではさほど重要視されませんが、欧米では香りの良し悪しと同じくらい、いやそれ以上に重要視されるのが「香りの持ち」。香水の消費量が日本人のそれとは比較にならない欧米では、いい香りでも長持ちしなければつけ直すことになるし、つけ直す分減りも早い、よって不経済だ、不経済な香水はよくない…あれ?さっきまでいい香りだから気に入ってたんじゃないの?という視点の違う論法で評価されてしまいます。ただし、そもそも外出用に使うものではなく、衛生状態が今よりずっと悪く良い薬もなかった中世には殺菌剤や気付け薬として発明されたオーデコロンはまったく別。シャワーを浴びて、バッシャバシャ浴びて、ああさっぱりした風呂入った、で出かけるころにはもう香りが消えていてもかまわない、むしろ消えてくれて上等、だって出かける時はそれこそお気に入りのオードトワレやオードパルファムをつけるんだから。
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「セドラの花」オードフルールドセドラ オードトワレ100ml
 
でも、このジャック・ゲランが1920年、ミツコを発売した翌年に発表した、つけた後の香りがゲラン史上最速で消失するオードフルールドセドラは「オードトワレ」なんですよね。欧米の香水コミュニティでも「いい香りなんだけど、こんなに持たなくてこの値段はないよね」「瞬間消えるね」とその二点ばかりフォーカスされているオードフルールドセドラ。つけた瞬間、針やデジタルが豪速で回るストップウォッチの文字盤が目に浮かぶ程、瞬殺で香りが飛んでしまう驚くべきその速さは、体感したものでなければわかりません。肌の上よりも保香性の高いムエットにたっぷり含ませても、10分後には何も香りません。ゲランの他の「オー」と名の付く一連のオーデコロン、オーインペリアル(1853)やオーデュコック(1894)、近作のコローニュデュパフュマー(2010)と比較してもなぜこれでオードトワレと呼ぶのか、猛烈に逃げ足が速い上、ゲラン公式サイトでも「服の上からスプレーしてさっぱり」「ほかの香りと重ね付けしてもグッド」と、シャツクールかよ!!ともはやこれ1本で楽しめるフレグランスとは別物として扱われていることから、これ1本でひと夏過ごそう、など思っている方には「オードフルールドセドラは用途が違う」と耳打ちしてあげたくなります。ちなみに国内販売価格は100mlで12,312円です。
 

 

熱中対策シャツクール 冷感ストロング 100ml
ジェントルマン 梅雨から夏場の必需品、シャツクール 類似品は妙に香料が残るので、できればこれか無香料のものをお勧めします。ちなみにオードフルールドセドラには「汗をかく度にひんやり持続」の効果はありません

なぜこんなに持続しないのか?それは、原料が「天然レモン、ベルガモット、セドラ、以上」だから。たちあがりのレモン感は、今から40年くらい前に日本でも大ブレイクした「ラブズフレッシュレモン」というレモン一発のオーデコロンを思い出しますが、さすがに桁1個違うので、同じレモンだったら前者はOPP・TBZ・イマザリルといった農薬バリバリで転がしておいても絶対腐らないレモン、後者は千疋屋で売ってる契約農家から取り寄せた高級柑橘類のバスケット、みたいな格があります。レモンのほかにビターなベルガモットとセドラが出てくると、もうストーリーは後半戦。ジェントルマンのポラロイドにも、シャレオツなベーカリーカフェかなんかで出てくる、レモンスライスと氷をたっぷり入れたでっかいカラフェから、素敵なエプロンをしたかわいいお姉さんが注いでくれるお水を一飲みしたあの瞬間が映っています。そういう店、経費節減なのかずいぶん減りましたね。
 
 
 
 

Parfum magazine no. 182 coming out

一作年6月よりスタートいたしました店主タヌの連載「忘れられない香り-The Unforgettable Scent-」掲載の老舗香水専門誌、パルファムの最新刊・182号が、今月6月20日(火)発売となります。

季刊誌であるパルファムは、日本を代表する香水評論家、平田幸子先生が長らく編集長をつとめ、基本的には国内発売される新作香水紹介やショップインタビューを中心とした専門誌ですが、掲載テーマは香水にとどまらず、芸術、文化、シネマ、ファッションなど各方面から力量確かな執筆者の多岐にわたる寄稿が、美しく印象的な画像満載のフルカラーページで堪能出来るのが特徴です。

今回の本誌特集のテーマは「夏こそチェンジ&チャレンジ」。開放的な気分になる夏、香りも冒険のススメ!高温多湿の厳しい気候に負けず、え、こんな時期にこの香り?みたいな逆転一発大勝利な1本、夏からはじめる新しい香り…夏イコールフレッシュなシトラス系、なワンパターンなチョイスはもう卒業!香水一筋40年の専門誌、パルファムならではの視点やセレクションでご紹介いたします。また今号に限らず、新作香水のご紹介に合わせ、記事中の香りを抽選の上惜しみなくプレゼントしているのも見逃せません。記事を読んで気になった香りは、迷わずプレゼントコーナーに即応募!というお楽しみがあるのも、パルファムの大きな魅力のひとつです。

「忘れられない香り - The Unforgettable Scent」は、数と香水名にまつわる「ちょっとすべった」クラシック香水を2選ご紹介。オーナー同士ちゃんと話し合ったはずなのに、挙句の果てには改名を余儀なくされた戦前のあの香り、本社の番地から名づけただけなのに、いつまでもパクリだと誤解され続けた残念な戦後の名香…今回も心と記憶にこびりついて離れない「香り」と、香りにまつわる千夜一夜を、店主タヌが語り部として綴ります。ブログ同様、パルファムでの連載も是非お楽しみ下さい。

今回で連載3年目に突入、第9回目となる「忘れられない香り」ですが、是非とも定期購読のご継続(または電子版によるご購読)をお願いいたします。連載継続もひとえにLPTファンそしてパルファム愛読者の皆様の暖かいご支援によるものと感謝し、これからも心をこめて「忘れられない香り」をご紹介してまいります。

パルファムは定期購読(年4回分前納/送料込2,400円)にてお手にとっていただけます。

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パルファム182号表紙 ずっとブロンド続きだったので新鮮な、ダークカラーの髪が素敵

 

【パルファムは電子版でもご購読いただけます】

※連載「忘れられない香り(The Unforgettable Scent)」開始号である174号より紙媒体の本誌にあわせ電子版がスタートしました。普段オンラインベースでご愛読いただいているLPTファンの皆様へ、本誌と併せ電子版での購読もお奨めいたします。閲覧用無料アプリはiOS・Android双方対応。※パルファム誌購読コンテンツ料としてアプリ内課金が発生します。

《ダウンロードはこちら》  2017年6月20日(火)以降配信開始

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※購読お申込みの際、備考欄に「LPTブログ(またはLPTのFacebookページ)を見た」とお書き添えいただけると幸いです。

La Douceur de Siam & Le Sillage Blanc (2017)

La Douceur de Siam (2017)
 

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黄昏時が訪れる 名もなきいのちが、この悲しみすら拭い去ってくれる
                   ーモントリー・ウマヴィジャニ
 
「私たちのゴールは、洗練されたフランスの伝統に優美なシャムのエレガンスが融合した、模倣しようのないほど素晴らしく比類なき価値を持つ香りを生み出すことです」パルファム・ドゥシタ創業の抱負をこう語るタイ出身のオーナー調香師、ピサラ・ウマヴィジャニが、エキストレ三部作につづき世に送り出したふたつのオードパルファムをご紹介します。
 
フランスのクラシックな香水スタイルに、ジャスミンをはじめ、セージ、ローズ、ベンゾイン、蜜蝋、ベルガモット、サンダルウッドといったタイの伝統儀式で用いられる希少な天然香料をふんだんに取り入れているのが特徴のパルファム・ドゥシタですが、タイは世界の有力香料会社が数多く自社・合弁で香料プラントを構える、香料の一大産地であることは意外に見落としがちで、国内企業でも曽我香料や長谷川香料が進出しています。
 
「シャムのやさしさ」という、ご本人のオリジンを直球で冠したラ・ドゥスール・ド・シャムは、「うつくしい心を持って生まれてきた香り」という第一印象が終始ぶれることなく香る、甘美なローズドメを中心に、フランジパニやチャンパカフラワーといった南国らしく甘重い花々の良さを十分に活かしたコクのあるアンバーローズで、ベースにはバニラオイルやサンダルウッドに加えチャルードという、タイでは薬用に広く用いられるキョウチクトウ科の木の樹皮から産出するオイルも使用し、まさにピサラさん内のタイ文化が炸裂した盛り込みようですが、タイのローカル香料に詳しくない日本人(や殆どの欧米人)にとって、それは目で追う追加情報のひとつにすぎず、なんの予備知識なしでも充分に美しい香りです。
 
濃度としてはEDPですが持続はむしろ同じフローラル系のメロディ・ド・ラムールを上回り、チュベローズが軸になるメロディ・ド・ラムールと比べ、ウッディノートの底支えがしっかりしているので、ふたつのフローラルを美しい女性に例えたら、華やかで壊れそうな危うさすらあるメロディ・ド・ラムールと比較して、ドゥスール・ド・シャムのほうがより作り手であるピサラさんご自身のイメージに近く、日本に負けじと劣らず高温多湿で雨季も乾期もあり、その激しい気象が心魂に刻まれた、しっとりとした肌のきめと芯の強さを感じます。これまでLPTでご紹介してきた香りの中では、ローズムスクという点で近似値にオーセントを彷彿としますが、クールでソリッドな印象のオーセントよりクリーミーなコクがあり、ふくよかな印象です。ドゥシタの現行5作品の中で、最も日本女性にお似合いなのはドゥスール・ド・シャムに思いますし、日常使いなら私もこれを選びます。
 
閑話休題、非常に個人的な話で恐縮ですが、私は日本で生まれ育ちましたので、国籍とアイデンティティでいうと日本人ですが、日本ブランドや日本人調香師が、日本の伝統文化や古典、要は「和」をコンセプトに作るクリシェ的アプローチは個人的にあまり好きではありません。海外のブランドにしても、日本を題材にして作品を作ると、結局ダルマとか神社とかスカイツリーが、なんかの思想とごっちゃになって出てくるのも、見ていてしんどいというか、日本側もいつまでたっても源氏物語だ、京都だ、禅だワビサビだといっては、現代に生きる日本人にすらもはや身近な存在ではなくディスカバージャパンネタに感じるアイテムを看板にしているのを見ると、もっと作品本位で勝負というか、根源的なアプローチでものづくりができないものか、というより世界が日本のフレグランスに求めるのはジャポニズム位しかないのかな、と思うとやっぱりちょっとしょっぱい想いを抱きます。いやそれよりも、よくある「調香師が旅先で出会った風景」的アプローチも、そこに暮らす地元民にとってはもうどうでもいいものにひっかかった世界観で、きっとどこかずれているんだろうなと思い始めると、こういう穿った視線は暴走するし「香り良ければすべてよし」なのでこの辺にしておきます。そういうわけで、ドゥシタはオーナー調香師のバックグラウンドを最大限に活用していて、私はタイと文化的接点が殆どないので素直にエキゾチックで魅力的なのですが、もしタイのローカルな香水ファンが聞いたらどう思うかは、ちょっと興味があるところです。
 
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ドゥスール・ド・シャム EDP50ml
 
 
Le Sillage Blanc (2017)
 

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光がふたりに降り注ぐ-ほのかな光が、埃の舞う凍てついた空気に道しるべを作る、あなたの愛を読み解くように
                   ーモントリー・ウマヴィジャニ
 
「白い香跡」という胸を洗われるように淡麗な名を持つル・シャージュ・ブランは、ブランド初のメンズフレグランスで、アラミス(1966)やカボシャール(1959、ともにベルナール・シャン作)を更にビタードライにしたような、ダスティなイングリッシュ・レザーノートが際立つクラシカルで端正なグリーンレザーシプレです。アルテミジアやガルバナムなど、ビターグリーンな表情満載で、そこにオークモスやパチュリが畳みかけるように重なり合い、甘さを排除したふくらみが、相手を惑わすような無駄な微笑みは返さない、自制のきいた身持ちの良い男性の姿を投射します。色で言ったらまさに白色、暗明を破る真白な月明かりのような光を眼下に感じます。
 
初出のイッサラやウード・アンフィニのように、カップルでシェアできそうな幅のある香りではなく、もっぱら女人禁制の近寄りがたさが全面に出ており、このダイナミックレンジの狭さが逆に強烈な粋となって印象に残ります。作り手のクラシック・メンズフレグランスへの愛が溢れる、完璧なオマージュと言ってよいでしょう。当LPTメンズ担当のジェントルマンも「これはいい、かっこいいねえ」と大絶賛。汗と脂の季節、適度に体温を奪ってくれるル・シャージュ・ブランの冷涼感は、日本の夏にもお奨めです。
 
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ル・シャージュ・ブラン EDP50ml
 
 

★★★Parfum Dusita全5種のムエットサンプルをプレゼント!★★★ ※終了しました(6/18)

全4回の連載を最後までお読みくださり、誠にありがとうございます。

今回の連載については、Lianne Tio ParfumおよびParfums Dusita PRより日本未上陸であるブランドのラインナップ全5種のサンプルをご提供いただきました。大半はレビューのため試香に使用させていただきましたが、少しでも実際の香りを読者の皆様とシェアしたく、ご希望の方先着2名様に全5種のムエットサンプルをプレゼントいたします。2名様の先着ご応募受付をもって終了し、サンプルの到着をもって発表に代えさせていただきます。

応募締切※終了しました(6/18)

※今回はLPTブログ本編へのお申込みに限らせていただきます。FacebookページやInstagram上では募集いたしません。

ムエットサンプル申込

 

 

Issara & Oudh Infini (2015)

Issara (2015)

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かつてその木が居たここは、今や太古から降り注ぐ雨を逃れる場となった
                     -モントリー・ウマヴィジャニ
 
独学で調香を学んだピサラさんが最初にドゥシタ作品として作り上げたのが、タイ語で「自由」を意味するイッサラです。
 
瑞々しい生木や新緑の松葉から立ち昇る、胸を洗うような清浄感に始まる立ち上がりは、時の経過により徐々に表情を豊かにする、日本人にはなじみの深い桜の葉の香りー花散らしの嵐に遭った後の八重桜のようなクマリン香と、ベチバーのセミマットな甘さに、くぐもったタバコノートとオークモスの層が折り重なっていて、終始のびのびとした穏やかな印象のアロマティック・ウッディです。
 
どちらかというと女性向きのユニセックス系ですが、メロディ・ド・ラムールと同様、非常に抑制の利いた香り立ちで、肌に鼻を近づけるとしっかり香りが残っていても、敢えて立ち上がらずに、接近戦用に処方されたのではと憶測する位、拡散しないのが特徴です。ひんやりした滑らかさが終始漂い、ラストはふんわりとやさしいムスクが香ります。
 
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イッサラ パルファム 50ml

Oudh Infini (2015)
 

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夢に遊ぶなと人は言う。だが、夢なくして人生は何になろう?
                   -モントリー・ウマヴィジャニ
 
 
「無限なるウード」を意味するウード・アンフィニは、エキストレ三部作の中でもウードの名を冠するに値する、最もパワフルな仕上がりですが、ウードというよりもそれを勝るシベットのアニマリックなトーンに圧倒されます。このご時世、こんなにアニマリックな香りを新作として嗅いだ記憶がありません。
 
立ち上がりは、まるで動物園のケージに放り込まれたような、または毛の生えた動物を生きたまま襟巻にした気分になります。このアニマリック感は結構長く続きますが、落ち着くと、ローズドメやオレンジフラワーが花開き、マダガスカルバニラとドライであたたかなムスクに包まれ、やはりウードというよりは70年代後半から80年代半ばに台頭しながらも衰退した、ラニュイ、パルファンドポー、オリジナル版ダリといった一連のアニマリック・シプレ、しかもそれらのヴィンテージ版パルファムの香りが、脳裏に走馬灯のように浮かんでは消えます。
 
香りの底力も強く、サンプルアトマイザーの4プッシュ、つまりフルボトルなら2プッシュ程度の量で一日しっかり香り、下半身から立ちのぼってくる、動物性ムスク感たっぷりの香気が、どんどんスタイリッシュに、エレガントになる美しい経時変化が楽しめます。しかも、これだけパワフルに香りながら、シャージュが穏やかで消え入り方がナチュラルなのは、このブランドの特徴といえましょう。
 
日常使いにはハードルが少々高いかもしれませんが、もし改まった席への参加や正装する機会があるなら、この位しっかりした香りをつけると、少々の事には動じなくなる、心の支えになる気がしますし、引力の強い香りなので、もし私がその場に居合わせたら、必ず今何をつけているか尋ねると思います。取扱店ではユニセックス系~メンズ系と紹介されている事が多いウード・アンフィニですが、日本の男性には相当の経験値が必要と思われる一方で、女性には相当女っぷりをあげる強力な武器になると思います。
 
名前に反しウー度は低いので、ウードフレグランスを何か、という方には決めの1本にはならないと思いますが、クラシック香水でしか味わえないリアルなアニマリック感のある、オリエンタル・シプレを新作で探したい方にはお奨めの秀作だと思いますし、3部作の中では受賞作であるメロディ・ド・ラムールばかりが話題に上るパルファム・ドゥシタですが、個人的にはこの作品が一番満足度が高かったです。
 
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ウード・アンフィニ 50ml