A Gentleman Takes Polaroids Chapter Fourty : DIVINE and Gentleman part 2
立ち上がり:いい印象。微かにスパイシーでなんとなく酒のジンっぽい香りもする。ジェニパーベリー入ってるのかな?爽やかな感じでこの季節によく合いそう
昼:甘い感じが薄れてきてますますいい感じになってきました
15時頃:かなり持ちがいいです。で、ここにきてベチバーの香りも強まってきた。
夕方:嫌な感じの残り香になることもなく、最後までいい印象のままでした。これはあまり突っ込み所がなく文章が平板になってしまう・・・
ポラロイドに映ったのは:学生時代から優等生で40年後に再会しても何も変わらず優等生のままだった旧友、少しはやさぐれていて欲しかったが、変わらないことに安心したりもする。
Tanu’s Tip :
前回お届けした苦悶の前編に続き、ディヴィーヌのメンズ・ユニセックス作品のうち、軽めの香りを3作ご紹介したいと思います。
今回は、どの作品も不思議とポラロイドに子供時代から成人するまでの原風景みたいなものが映り込んでいます。実は、先月ジェントルマンのお父様が84歳で亡くなり、しばらく故郷の盛岡に帰省しておりました。高度成長期に開発され、同世代の世帯が集まるニュータウン出身のジェントルマンは、家族葬ではありましたが、朝から晩まで今まだ地元に住むお父様のご友人やご近所の方が切れ目なくご家族で弔問においでくださいました。18で故郷を離れて以来、下手すると40年以上会っていなかった旧友の多くは、はげ散らかすなど変わり果てた姿になり、誰だか分らなかった一方で、子供の頃まんべんなく「おばさん」と呼んでいた友達のお母さん方は「あ、誰々君のお母さんだ」とすぐに分かったそうです。すでにジェントルマンが子供時代、当時±30代だったであろうお母さん達はおばさんの完成形に到達していたという事で、当時カマキリみたいだと思っていたおばさんが、斎場でもやっぱりカマキリみたいだった、と嬉しそうに話してくれました。
ディヴィーヌ初のメンズ作として2002年に発売され、今年生誕20周年のロム・ド・クール。この香りのテーマは「彼は21世紀の男になりうるか?」21世紀になってまだ2年、構想はきっと20世紀からの持越し、足掛け2世紀で誕生したと思われる「心の男」。この間、メンズファッションで一番の違いはグランジ系のレロレロだぶだぶなストリートファッションが主流だった90年代から一変して、タイトでローライズのスキニーパンツとスリムフィットにトレンドが一変したことでしょうか。毛が漏れるか漏れないかの寸止めで腰骨を締め付ける位置にベルトがくるローライズは、ジーンズメイト練馬店(2017年5月閉店)の店員も「内臓に負担がかかるからお勧めしない」と言い切ったほど、無理のあるデザインだったと思いますが、香りのトレンドとしてまだメンズには押し寄せていなかった「平和と忍耐の象徴(イボじい談)」であるアイリスが主役の、静謐で穏やかなパウダリー・ウッディアロマティックです。調香は、ディヴィーヌのメンズ前作を手掛けているジボダンの重鎮、ヤン・ヴァスニエです。
メンズでパウダリーウッディの代名詞といえばディオール・オム(2011)ですが、まだルカ・トゥリンの香水ガイド(2008年第1版刊行)もFragrantica(2006年開始)もなかった時代、ロム・ド・クールはディオール・オムより9年も前に登場していながら、口コミだけでやってきた独立系ブランド、ディヴィーヌの香りは香水業界の話題になりようがなかったのでしょう。当時としては斬新なアイリス過積載がロムドクール最大の特徴で、フジェール系からラベンダーとクマリンを抑える一方でウッディ要素を高めた、ウッディアロマティックの系譜をしっかり継承しながらも、胸を洗うようにきりっとしたジュニパーベリー、スパイシーな温かみのあるアンジェリカで始まり、じわじわとアイリスがあふれてきます。ただ、アイリスのほかに粉物感を増幅するバニラや、ヘリオトロープなどの花香料がないため、土台のウッディアロマティックもしっかり主張し、ドライなベチバーと抑制のきいたアンバームスクが底支えしているため、当世よくあるユニセックスの粉物系に転ばず、全き男の香りとして終始します。
個人的にはディヴィーヌのメンズ作でロム・ド・クールが初出ながら一番好きで、ジェントルマンにも高評価でした。ただ、自分で実装すると「粉物好きの私がつけると、しばらくいい男と一緒にいた記憶」みたいに香るので、やはり、こちらも月並みですが「いい男につけて、私の傍にいて欲しい香り」この一言に尽きると思います。2022年に味わうロム・ド・クールは、完全に21世紀の男です。