La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Burlesque (2012)

立ち上がり:粉もの系、柑橘系の香りが最初強いですがすぐローズへと移行していきます
昼:アイリス系も出てきました。
15時位:粉もの系にありがちですがお香みたいな香りになってきて落ち着いて良い感じです
夕方:この時間まで持ちますが落ち着き方が好ましいかと。
ポラロイドに映ったのは:理由は自分でもよくわかりませんが昆虫標本とかが壁にかかっている高校の科学授業で使う教室、生物部が部室で兼用してる所。ホルマリン系の香りが微かに漂う。
昔の特撮番組だったら突然照明消えて怪人が屋根から飛び降りてくるのが似合いそうな場所。
 
Tanu’s Tip :
 
5月に入り、ぞくぞくと都市封鎖解除が始まったヨーロッパ。この原稿を書いている時点でフランスが5月11日、続くオランダが18日に解除となり、公共機関を利用する際はマスク着用の義務、と「お願い」や「要請」の果ての自警団的同調圧力に疲弊しながら、緊急事態宣言下のなか、連休明けの通勤があいも変わらずの混雑率で始まった東京とは、同じパンデミック下でも何かが大きく違う気がします。
連休の初め頃、隣町の江古田へジェントルマンと食料品調達を兼ねて散歩に出かけました。店主タヌが通った大学もある江古田は、いかにも学生が好きそうなライフスタイル系雑貨屋やカフェ、居酒屋や多く、その多くが休業要請で本来の営業が立ち行かなくなる一方で、串カツやさんが店頭で野菜を、そして多くの個人店がルート不明の中華マスクを販売していました。「アベノマスク、立体マスクに改造します 改造費1枚350円」という雑貨屋もありました。江古田駅南口前にある老舗の日用品店では、地下の食器・タオル売り場にいたら突然「マスク入荷しました〜(10枚780円)」という店員さんの呼び込みにも特段群がる客もなく、見ると日本語が殆どかいていないビニール袋に入ったマスクが大量に串刺しラックに入荷、ラックの下段には明かに手作りの布マスクがカゴ盛りで販売されていました。商店街のリサイクルショップでは「マスクありますよ〜もちろんリサイクルじゃないっすよ」とお兄さんが呼び込み。50枚で3,500円位だったか、やはり入荷ルート不定の、きっとフランスやイタリアでも出回っているでろう、ある意味ユニバーサルデザインな箱入り中華マスクが小山積みでした。かといってそれを買っているお客さんがあるわけでなく、江古田では「本業+(中華)マスク販売」が最早日常の光景になっていたのには大変驚きました。
 
まだ市販のマスクや消毒用エタノールや除菌ジェルなどのアルコール消毒剤が開店前から並ばない限り入手できない上、法外な価格で転売されていた頃、今でこそ世界の香水メーカーの多くが除菌ジェルやハンドソープを緊急製造し、LVMHなどの大手企業は政府に無償提供、メゾンフレグランスブランドでも自社製造しているところは製品として販売したりノベルティとして配布していますが、私が知る限り最も初動が早かった独立系ブランドは、だいぶ前に日本撤退したイタリアのマリア・カンディーダ・ジェンティーレ(MCG)だったと思います。かねてよりニュースレターを購読しており、現在も月1回あるかないかの、さほど多くない回数で配信されていますが、イタリアにおけるコロナウイルス感染症の拡大が目を覆うほどのスピードで爆進し、1日の、感染者ではなく死亡者の数が800名以上という恐ろしいニュースが届くようになった3月14日付のニュースレター、見出しも堂々「除菌ジェル」。え、MCGってイタリアのブランドだよね、大丈夫なのかな?MCGの所在地を見ると、ちょうど感染の激震地ミラノとフィレンツェの中間にあるサルツァーナ。3月14日当時、4月に予定していたLPT主宰のイベント会場で使用する手指除菌製剤を買う事ができず困っていた私は、同じ除菌剤でもマリア・カンディーダ・ジェンティーレ製!なんていったら場がもりあがるかも…と思い購入を決意、ついでに言うと13ユーロの除菌ジェルポンプ1本購入するのに送料40ユーロかあ…と、香水ファンが海外通販で陥りがちな「送料の精神的希釈」として、このブランド作品で最も気に入っており、ここ数年の個人的ヒットとしては5本の指に入るバーレスクの100mlボトルをストック用に合わせ買いする事にしました。さて、一応公式サイトは現在日本配送もしてくれるけれど、イタリア国内でも需要が逼迫しているはずなのに、日本の客に送ってくれるのかな?オーダーが殺到して、国内優先って事もあるだろうから、イタリアの事だし、いつまで経っても来ねえや→Paypalに申請→だいぶ経って返金、でもいいや…と思いながら注文後就寝、翌朝メールチェックをしたら、なんと既にDHLで発送完了通知が届いていました。日本へ出してくれた事、それもこのコロナ禍の最中に即配?!でも、本当に驚いたのは数日後小包を受け取ってからでした。

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マリア様
開封すると、注文した除菌ジェルとバーレスクの他に、紙で包まれたロゴ入り石鹸2個とたくさんのサンプルが同封されていました。これまた雑貨屋のカラー筋入封筒みたいな紙袋にぐしゃぐしゃっとまとめられ同封されていました。石鹸は非売品らしく、外箱もなく裸同然、
でもその素朴ながら、今一番大事な「手洗い」を意味する固形石鹸が無言でドサっと入っていたのを見て、大変な状態の中イタリアから届いた小包にはたった一言、マリア様の「生きろ」というメッセージが込められている気がして、涙が出ました。残念ながら、この除菌ジェルを使う予定だったイベントは全て中止となり、現在も未使用のまま、石鹸と共に大切にしまってあります。

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オリジナル除菌ジェル250mlと、おまけの石鹸&サンプル。石鹸は2個入っていて、1個は到着時たまたま居合わせたジェントルマンの後輩に謹呈
香りとしては、アイリス・インセンス・パチュリローズの三位一体ゴールデン・セクションともいうべき、ストリップティーズを超えた妖しさと包容力を従えた、同じ粉でも、袋詰めしたらずっしり重く、手を滑らせたらドサっと音がしそうなマットで重厚なパウダリーフローラルで、先の見えない濃霧の中に煌く雷光のように、酸味がちなブラッドオレンジをアクセントに煙に巻くような不透明に近い粉物感は、ここ数年の流行であるキャロットシードをアクセントにしているウッディパウダリー系作品(ヴァイオレット・アイダ:ミラーハリス、オリエンタル・エクストリーム:ミュグレー等)に通じるものがある一方で、マリア・カンディーダ・ジェンティーレ作品に一貫して流れる、古書の芳しい香りのような湿り気を帯びた粉物感は、他の追随を許さない完成度を感じます。イタリアにはタルコ系という直球パウダリーノートのジャンルが燦然と存在するだけに、どんな香りを作っても大なり小なり粉物感があるのは、イタリアで初の女性マスターパフューマーと呼ばれる重鎮のこだわりなのかもしれません。

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バーレスク パルファム100ml(新規格:昨年までは15mlと30mlの2サイズだったが、30mlが廃番になる代わりに大変お得な100mlサイズが登場。ミリ単価が半額以下になりファンとしては感謝感激
ジェントルマンのポラロイドにも、薬品と埃と湿気のハーモニーが奏でる理科室らしき部室が映りましたが、その実なかなかの高評価。ジェントルマンにとって特撮もののシチュエーションは全くネガティヴな意味を持ちません。むしろ郷愁をもって懐かしんでいる、そんな優しさすら漂ってきます。まあ、文面から察するに同じ特撮でも円谷系ではなく、東映系かもう少しB級なプロダクション作品のようですが。実装中のジェントルマンは、それはそれはいい香りで、自分でつけても目の前の人から香っても、いい香りはやっぱり、えええ〜香りや…と再確認し、キャバレー・ジェントルマンを締め括りたいと思います。

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バーレスクは、店主タヌにとって「なくなってもらっては困る香り」対象作品。周期的にストック購入症の発作に見舞われる
 
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