La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Cristalle eau de toilette (1974)

立ち上がり:これも不思議な香り。グリーン系の香りなんですが薬草っぽい匂いがかなり独特。面白いけど難しそう
 
昼:この手の香りの宿命か減衰早いですね。でも柑橘系の香りが強くなってきたような気がします
 
15時位:微かな香りですが 複雑な香りが残ってます。これは良いんだが使うの難しそうです。
 
夕方:消えました。この手の香りの宿命ですね
 
ポラロイドに映ったのは:面白いんだが読みだすとぐったり疲れなかなか読了できない 上下巻&文字上下二段組ハードカバーの小説
 
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クリスタル EDT 100mlフラコン
 
Tanu's Tip :
 
昨日ご紹介したオードロシャスから遅れる事4年、ココ・シャネル逝去の直前に満を持して発売したNo.19(1971)のヒットを享受していたシャネルも、19番より更にフレッシュでライトな香りとして投入してきたのがこのクリスタルです。調香は当時の専属調香師で前出の19番やも手掛けたアンリ・ロベールで、発売から20年近くEDT1濃度だったクリスタルは、濃度違いとしてオードパルファム(1993、ジャック・ポルジュ調香)、その16年後に初のバージョン違いとしてオー ヴェルト(2009、同)が加わりました。この3点はすべて現行の一般流通品として全国のデパートに展開しているシャネルのカウンターで入手可能で、EDTは60mlで8,640円(税込)からとシャネル製品の中ではお手ごろな価格です。オードロシャス同様、レディス向けフレグランスですが、いかにもなメンズ物が苦手な男性にもご愛用頂けるユニセックスな香調で、同じアンリ・ロベールが手掛けたプールムッシュウ(1955)に通じるものがあります。

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クリスタルもオードロシャス同様この時代らしいシトラスフローラルシプレで、同時代のオードランコム(1969)、ディオレラ(1972)など仲間がいっぱいいますが、とりあえず今回ご紹介したオードロシャスとの一番の違いは「ちょっとだけ底意地が悪そう」なところで、基本のシトラスフローラルシプレに苦み成分と青み成分がましまし。そしてフローラルにヒヤシンスとハニーサックルがある分、ちょっともたついた甘みがあり、そこにどすっとオークモスとベチバーが鎮座しているので、フレッシュ、キラキラ!というよりは、快活でいながらどこか決して心を開いてくれない、お腹の中ではどう思っているのかわからない人、という雰囲気があります。その辺の一筋縄ではいかなそうな雰囲気が異性を惑わせる魅力として、クリスタルを単なるフレッシュ・フレグランスとして語る人がいない所以だと思います。
 
概して知的な印象のシトラスフローラルシプレ系ですが、ひとつだけ注意したいのが、クリスタルのように手放しにリラックスできないタイプのアクセントがあると、軽く爽やかなのに、常に意識が少しだけ香りに引っ張られる時があります。ライトなフローラル系でも、自分の苦手な花やハーブが混じっていると、一日中気になって消えるまで香りのことを考えている。それはあなたにとって相性の悪い香りですので、誰がどう名香と褒め称えようと、それはあなたの香りではありません。ジェントルマンのポラロイドに映ったハードカバーの小説も同義で、こういう本や香りは結構体力を奪われます。小説は、そこを超えたところに妙味がある、という意見もあるでしょうが、もともと殆ど本を読まない、特に小説は50年以上生きてきて学校の読書感想文用の本以外、5本の指で足りるほどしか読んだ事のないアンチ読書家の私は、まず確実にこういう小説には指一本触れることはありません。巷でライトな香りはリラックス&オフタイム向け、オフィス向けと判で押したように言われますが、果たしてそう言い切れるのか、疑問に思うことは多々ありますし、逆もまた然りで、甘く重い香り、胸板の厚いフルボディの香りでも、拡散せず肌の上で自分の影のようにぴったり寄り添う香気に心底寛ぎを感じる事も多いので、同じブランドでもいい香りに限って日本終売とか勘弁してほしいと思います。…って、あれえ?何の話だっけ?
 

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このEDT、キャップを取ると中栓の穴がとても大きい。一昔前の資生堂のオーデコロンは、箱に「アトマイザーに移し替えてお使いになることをおすすめします」と書いてあったが、本場フランスの場合、このサイズ、この形状のフラコンは通常どのように使うのか?仮にこのボトルから掌に受けるとしても、ひと振りでものすごく出る。欧州出身の方、LPTまで使い方をご一報いただけますと幸いです

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