La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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pour un homme de Caron (1934)/ A Gentleman takes Polaroids chapter one:The Great Iconic, A Gentleman's chioce

pour un homme de Caron (1934)
 
立ち上がり:
バニラ臭が強く甘い香り。微かにスモーキーな感じも
 
着衣後:
同上
 
1時間経過:
同上
 
5時間経過:
昼にはほとんど抜けてしまいかすかにパウダリーな匂いが残っている
 
10時間経過:
夕方には殆ど香り抜けます
 
ポラロイドに映ったのは:
赤トラの飼い猫 太り気味の奴 愛想良し
 
Tanu's Tip :

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「すぐに香りが抜けてしまったので、もう一度試していいですか?」 ポラロイドを撮ろうにもなかなかピントが合わないようで、基本的に1日だけ試香してもらい、第一印象で写し取っていただくAGTPとしては異例ともいえる陳情を受け、ジェントルマン苦戦の二重露出となりました。1904年、20世紀の幕開けとともに始まったグラン・パルファン、キャロンの歴史は、数々のカリスマ的なレディス・フレグランスはさほど売上には貢献せず、実のところ今回ご紹介するキャロン初のメンズフレグランス、プール・アンノム(1934)をはじめとするたった数種類のメンズものだけで売上の6割だか7割を占めています。中でも創業者エルネスト・ダルトロフが調香したプール・アンノムは親子何世代にもわたり愛用している殿方も多く「親父が使っていた」「おじいちゃんの香りがする」とおおむね「良き家庭の思い出」につながるようで、パウダリーバニラで究極の清潔感を描いたら、シッカロールの匂いになりました、ああ風呂入ったヒゲ剃った、という香りです。ジェントルマンが撮り逃した、たちあがりの良質な天然ラベンダーオイルの清浄なハーバル香は確かに抜けが早く、たちまちパウダリーなバニラムスクへと変わり、これがまた何時いなくなったのかわからないくらい美しい抜け方で立ち去り、心には「ああ風呂入ったヒゲ剃った」の気持ちよかった記憶だけがくっきりと残るため、今日も、また今日もと使い続けて飽きがこず、長きにわたり愛されて、結果キャロンの屋台骨になったのでしょう。男の粉物香水としては右に出るものがないでしょう。メンズフレグランスの用途は、女を魅惑するためだけにあるんじゃない、男は清潔が一番だ!俺は風呂入ってヒゲ剃ってんだ!という主張が、天まで届いて一往復して後光がさしています。使いやすい香りがありきたりだとは限らない、絶妙なさじ加減のもとに成り立っているという金字塔的名香。とにかくいつも使うものだから、プール・アンノムには50ミリなんてケチなサイズはありません。最小サイズは125ml。その上が250ml、500ml、もちろん1リットルサイズも普通にあります。アフターシェーブやバスアイテムも充実。こういう香りは、長持ちするようにできていませんので、朝つけて昼に香りが飛んでいたら、いそいそと昼休みにでもタッチアップしてください。そしてまた、ひと風呂浴びたわけでもないのに「ああ風呂入った…」と深呼吸してください。それにしても、なんで太った赤トラ猫がポラロイドに?
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