La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Meharees by L'Erbolario

The Affordable

 - 身の丈価格でお値段以上の仕事をするお奨め香水紹介 -

 

ギターをたしなむ方が口癖のように言います。「1万円と10万円のギターでは、品質は雲泥の差だが、10万円と100万円なら、それはもう装飾や年代の希少 性など、大概は外的要因でしかない」微妙に懐具合の負け惜しみにも取れるこの口癖、果たして香水に置き換えたらどうでしょう。香水における価格差とは、勿 論原料の品質、調香の良し悪しもあるでしょうが、多分にブランドイメージと外観・宣伝費、そして調香師、ボトルデザインなどに関わった人々への報酬も含ま れているのは容易に想像がつきます。それが海外の商品であれば、輸送費、関税、保管料、オンラインショップならウェブサイト管理料、店頭販売なら地代と、 生産管理費全般がのしかかってきます。

それでは、果たしていったい幾ら以上払えば心身ともに満たされる香水に出会えるのか。あの法外な価格の香りとそっくりなこの香りは、いったい何が違うのか。 香水は高ければ高いほど良いのか。香水に、薬品の世界では選択肢の常識となったジェネリック品はないのか。「世界で一番高い香水」と自薦するブランドは、 どの部分が高いのか。考えればキリがないですが、常に「ボトルはシンプル、容量は適量、価格は適正」をよしとするLPTとしては、放置できる問題ではありません。そこで、身の丈価格でお値段以上の仕事をするお奨めの香水やメーカーをシリーズ、ジ・アフォーダブルでご紹介することにしました。ブランドネームにこだわらない、品質第一、香り上等でOKな人が世の中で一番幸せな香水ファンです。そんな人をLPTは心より応援します。

アフォーダブル(身の丈)な香水の筆頭株として、第5章のカナトゥーラ取材に詳しいイタリアの最大手自然化粧品メーカー、レルボラリオ「香りのシリーズ」から、一部で話題沸騰、ウェブ炎上のメアレスをご紹介します。

Meharees by L'Erbolario

メアレスは、レルボラリオ「香りのシリーズ」の中でも人気の、アックア・ディ・プロフーモ(オードパルファム、ただし持続は短め)をはじめ香水石鹸や豊富な バスラインにデオドラント、キャンドルまで揃っている、充実したトータルコーディネイトが楽しめるアンバーオリエンタルのユニセックス系ラインで、カト リック国であるイタリアの方には馴染みの深いミルラと、まさしく「砂漠のオアシス」を髣髴とさせる甘いデーツが主軸となっています。大衆自然化粧品メー カーらしく、調香師は勿論、詳しい調香や原料などの情報はありませんが、何故かこのメアレス、現地価格21.5ユーロ(50ml)にして、価格差5倍以上 もするフレデリック・マルの「身を焦がすムスク」(115ユーロ/50ml)に酷似している、とアメリカ最大級香水コミュニティ、Fragrantica で大炎上。「ムスクラバジューにそっくり」「この値段で信じられない」「香水としての品質はディオール以上」「メアレスの方がいい」と、結果としてメアレ スは勿論レルボラリオというメーカーの株も上げ、世界的に名を広める結果となりました。

双方を比較すると、ムスクラバジューはEDP濃度ですが、メアレスはムスクラバジューのEDT版、というのが一番わかりやすい表現でしょうか。レルボラリオ のアックア・ディ・プロフーモは濃度的にはいずれも軽めのEDT程度なので、カナトゥーラではあえて販売時「オーデコロン」と表記をしている位で、もしマ ルちゃんでムスクラバジューのレジェール版を出すなら、わざわざ処方せずにメアレスを詰め替えれば終わる気がします。ラバジューは好きだが濃厚すぎて使い こなせない、という方にもうってつけで、軽い割にはしっかり香りが長持ちしますので度々付け直す必要もありません。またムスクラバジューにはデーツもミル ラも使われていないはずですが、イタリアだとデーツとミルラを合わせるとオレンジポマンダーのアンバームスク漬けになるのでしょうか、プリンと醤油でウニ の味、みたいなトリッキーな突然変異かもしれませんが、確かにクローブやシナモンの甘いスパイス、タンジェリンやオレンジなど芳醇な柑橘、そしてアンバ リーなベースノートが馥郁とメアレスの香気をかたどっています。

単なるジェネリック香水としての代替品ではなく、純粋にアンバリー・オリエンタル系のユニセックス香水として、非常にバランスが良く、寛ぎと色香を併せ持っており、全く安っぽさがありません。案外、日本の気候ならムスクラバジューよりメアレスの方が汎用性が高いと思いますので、普段はオリエンタル系は使わな いが何かひとつ、冒険にアンバー系オリエンタルノートの香水が欲しい、という方にもお奨めします。

 オードパルファム、香水石鹸

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