La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Caron Les Parfums Fontaine, urn fragrances

Caron Les Parfums Fontaine, urn fragrances

【パルファム・フォンテーヌについて】

キャロンが1903年の創業より発売し、一般流通を終了した名香を含む全12種類の大変希少なパルファム(香りによってはEDPもあり)を、キャロンブティックにてバカラグラスのフォンテーヌからクリスタルボトルに手詰め、量り売りしています。ボトルのサイズは7.5ml、15ml、25mlと手ごろなサイズから大容量まで各種選べ、特に小サイズのフラコンは手詰め後金の針金で封をしていただきます。EDPは50mlと100mのアトマイザーに予めセットされたものが販売されています。残念ながら、日本ではデリールドローズのEDPしか取り扱いがありませんが、他のフォンテーヌ品を日本から購入する際は、EDPを中心にパルファムも数種類、予め7.5mlフラコンに詰めてある状態で販売している、アメリカのラッキーセントが購入しやすいでしょう。

なお、キャロンは沢山特約店がある為自社で公式オンラインショップは設けていませんが、モンテーニュ本店では電話注文、クレジットカード決済でパルファム・フォンテーヌ品を日本へ発送してくれます。その際サンプルをお願いすると、フォンテーヌだろうが中近東専売品だろうが、頼めば気前よく2mlずつ入れてくれますので、是非お試しください。

<現行アイテム>

・N'Aimez Que Moi / ネイメクモア(1916) P,EDP
・Tabac Blond / タバブロン(1919) P,EDP
・Narcisse Blanc / ナルシスブラン(1922)P
・Pois de Senteur / ポワドサンチュール(1927)P
・Acaciosa / アカシオサ(1929)P
・En Avion / アナヴィオン(1932)P,EDP
・French Can Can フレンチカンカン(1936)P,EDP(一部特約店のみ扱い)
・Alpona / アルポーナ(1939)P
・Farnesiana / ファルネシアーナ(1947)P, EDP
・Rose / ローズ(1949)P, EDP
・Or et Noir / オルエノアール(1949)P
・Poivre / ポワーブル(1954)P
・Tuberuese / チュベローズ(2003)P,EDP
・Oud / ウード(2009)※中近東専売品
・Secret Oud / シークレット・ウード(2009/2011)P,EDP
   ※中近東専売品(2009年版)を2011年2濃度にして再展開
・Delire de Roses デリールドローズ(2011)P,EDP
・Accord 119 / アコード119(2011)P,EDP

<廃番>

※Coup de Fouet / クードフエ(1957)EDT

フォンテーヌ品の中で、代表作といえばなんと言ってもタバブロンで、実際キャロン本店でもダントツの売上げだそうですが、ここでは厳選した裏番長的存在の3種をご紹介します。

French Can Can (1936)

エルネスト・ダルトロフ作の濃厚でパウダリックなフローラル・シプレ、フレンチカンカンです。ベロージア(1927)のアメリカでの大ヒットから、アメリカ向けに企画されました。名前の通り、ペチコートの中からピンクの粉を撒き散らすかのような躍動感にあふれた香りです。どことなく装飾過多な懐かしさに、ムーランルージュの煌きを感じます。結構香り立ちが高いのでつけすぎにご注意を。公式ウェブサイトのパルファム・フォンテーヌのラインナップからなくなりましたが、一部特約店(米Luckyscent、英Les Senteursなど)ではまだ販売があります。

以前オークションで取り扱っていた際、キャロンのファンではなく、方々で「フレンチカンカン」という名前の香水を探している、という落札者様がいらっしゃって、小分けをしたところ、まさしく彼女が10数年捜し求めた香りだったとの事。なんでも、彼女が若い頃、ディズニーランドのダイヤモンドホースシューの名物、フレンチカンカンが大好きで、当時はダンサーがドレスのスカートを客にばふっとかぶせたり、結構な演出だったそうで、その際にふわっと香った香りが忘れられなかったそうです。そこで彼女は、ディズニーランドのスタッフに訪ねたり、ダンサーさんに手紙を書いたりしましたが、ダンサーさんには「香水はつけてない」との返事がきたり苦戦、その後方々で僅かな情報を頼りに調べ続け、10数年後「フレンチカンカンという香水がある」という所まであたりをつけたのですが、当然日本では手に入らないので、地道にネットで探したら、私の出品を見つけた、とのことでした。小分けの香りはまさしくダイヤモンドホースシューで香った、懐かしいパウダリックな香りで、既にパルファムは廃番だったので、EDPの取寄せをご希望くださり、お届けしました。その直後にEDPも廃番となったのですが(現在は復活)、フレンチカンカンを求めて人生の半分近い時を費やした彼女にラストチャンスの架け橋を渡せた事は、私にとっても良き思い出となりました。

Or et Noir (1949)

1941年に逝去した、調香師エルネスト・ダルトロフが遺した調香ノートを元に、2代目専属調香師ミシェル・モルセッティが1949年に作り上げたオルエノアールは、「金と黒」の名の通り、強い光を浴びたベルベットのような深紅のバラが放つ光と影を、それは見事に再現しています。キャロン公式HPによると、同年発売された「ローズ」が、早暁に摘んだバラのつぼみであるなら、この「オルエノアール」は満開に咲き誇る馥郁たるバラである、と定義しています。濃色ながら濁りのないガーネットの塊のようなどっしりしたシプレローズで、絵に描いたようなかわいいバラはそこにはありません。バラはダルトロフが調香の根幹にすえた香料であり、このオルエノアールを作るにあたり、生涯のパートナーであったボトル・デザイナー、フェリシエ・ヴァンプイユは、最も貴重な香料を使うようにと固持し、当初は全面に金箔を施したバカラのクリスタルボトルで発売したそうです。フォンテーヌ品の中でも地味な存在で、EDPは作られていません。その分希少性が高く、またフォンテーヌのラインナップに3つも存在するローズの香りとしては一番濃厚で存在感のあるオルエノアールが、個人的には一番お奨めです。

オルエノアール、15ml 

Poivre (1954) / Coup de Fouet (1957)

1954年発売。2代目調香師ミシェル・モルセッティ/フェリシエ・ヴァンプイユのコンビ作で、当時流行のニュールックにあわせた斬新な香りを打ち出すべく生み出した、世界最辛の香りです。カーネーションとローズを柱に、スパイシーなクローヴとカイエンヌ・ペッパーがオーバーラップ。甘さと辛さの絶妙なハーモニーにノックアウトされた世界中のファンがポワーヴルを買い求める中、更に軽やかなオードトワレ版として1957年に生まれたのがクードフエ(Coup de Fouet) です。とはいえ香り立ちは控えめで、パルファムとしてはあまり長持ちしない方です。男性ファンも多数。クードフエのほうがよりドライで、コショウの辛さがつけた瞬間鼻にひゅっときます。ポワーヴルもクードフエも、習慣性のある香りで、私がオークションで取り扱っていた時も、忘れられない、何とかもう一度手に入れたいという相談をいくつも受けました。ただ、残念ながら、クードフエは廃番となってしまいました。

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