La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Merefame (1979)

Merefame (1979)

1959年創業で現在化粧品業界売上全国10位のメナードが、創業20周年を記念し、全社上げて発売したシグニチャー・フレグランス、メルファムです。 現在も販売されており、価格もパルファムが30mlで35,679円、オードトワレも 60mlで10,185円と堂々たるものですが、昨今は海外で大ヒットした緑映や重ね香の陰に隠れ、メナードのサロンでもテスターすらなく、店頭に置いている所はまずありません。立位置としては、廃番にしないことが社の誇り、みたいな、資生堂のすずろに近いのではないでしょうか。

メルファムの特筆すべきは、当時第一線で活躍する頂点の1人であり、マダム・ロシャス(1960)、カレーシュ(1961)、ディオレッセンス(1979)そしてアムアージュ・ ゴールド(1983)等のの作者である巨匠・ギィ・ロベール氏が、日本のメーカーとタイアップして調香した唯一の香りであることで、現在もメルファムのパッケージ にはロベール氏の創作にあたってのメッセージが添えられています。今、それが 現代の購買者にどれだけ影響力があるかは分かりませんが、クラシック香水好きとしては否が応でも期待が高まります。

ただ、残念ながら香りとしては、タイムレスなクラシック感というよりは、 既にこの世での役目を果たし終えた時代の終焉を漂わせる「古臭い」化粧品の香りで、一言で言えばしっとりしたパウダリーなシプレフローラル、なのですが、昔の化粧品を一切合財しまっていた古いドレッサーをあけたらどわっと香ってきた昭和の亡霊みたいに感じます。近似値でいえば資生堂の琴(1967)ですが、琴にはタイムレス感があり、 レトロに辿り着いていますが、メルファムはレトロに辿り着く一歩手前で止まっています。ここに、メナードというどこか洗練されない野暮ったさが付きまとうメーカーの限界を感じるのは、ロベール氏の単独調香ではなく、メーカーとの共同開発だからでしょうか。天然香料をふんだんに使い、丁寧に作られているのが分かるだけに残念です。オードトワレでも香り持ちがよく、昭和の演出をしたい向きには確実に逆転一発大勝利になると思いますが、店頭にもない、価格も高い、では気軽に手が出ません。クラシック香水好きとしても心に迷いが生じる古臭さなので、もしご興味のある方は、ご面倒でも全国のメナードフェイシャルサロンにてテスターの貸与(全国に1件だけテスターを所有している店舗があり、そこから転送してもらう)を依頼し、まあ、適当にお試しエステでもやって貰うか何かした上で、テスターを使わせて貰ってから購入を検討されることをお奨めします。

 

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