La Parfumerie Tanu

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Guerlain Classic Fragrances

Guerlain Classic Fragrances

少し前までゲランが日本で「ブティックフレグランス」と称して限定店舗で販売していたクラシック香水全6種です。現在は一般のレディス香水のラインナップに合流し、取扱い濃度も拡大し、選択の幅が広がりました。相変わらず取扱い店舗が限られているのと日本未発売の濃度もありますので、ゲランブティックへお出かけ前の心構え、並行輸入品ご購入前のお試しに、香りの印象を知る手がかりにご利用下さい。

<香調はゲラン公式HPより>

パルファム店頭用テスター。極まれに海外ディスカウンターで手に入ることも

Jicky(1889) エメ・ゲラン調香、セミオリエンタル、アロマティック

19世紀末を間近に控えた1889年に発売されたジッキーは、近代香水の幕開けとなった、初めて合成香料を使用したユニセックスタイプの香りで、クマリンやバニリンという最先端の合成香料にラベンダー、ローズウッド、シベットなどを加えた、当時としては複雑な香調で、バラやスミレ、シンプルなブーケしかなかった香水の世界では際立って異質だったようで、一般的な女性には相当スキャンダラスな香りとして受け止められ、一番初めに使い始めたのは、暗い街頭に立って香りで顧客を引き寄せようとした売春婦だったそうです。そこから(!)男性にも受容れられ、発売後実に23年後の1912年、ようやく女性誌で大々的に評価を得たそうです。3世紀に亘り行き続けるだけの魅力を、どうぞお試し下さい。また、ラベンダーとバニラの絶妙なハーモニーが、緊張した神経を柔らかくほぐすアロマ効果もあるので、普段香水をお使いにならない方のナイトキャップ代わりにもお勧めです。ゲランブティックではPとEDTの2濃度扱いあり。EDPは日本未発売。

 ジッキーEDT93mlリフィラブルボトル

Apres L'Ondee(1906)ジャック・ゲラン調香、フローラル・パウダリー

※「にわか雨の後」という名を持つこの香りは、つけた瞬間はスッとした渋さと酸っぱさで香り、やがて全身をごく薄いベールが包むかのように淡くアイリスやスミレが香る、非常に静やかな名香です。また、ミドル〜ラストの展開が、ルールブルーに似ているため、「ルールブルーのライトバージョン」とも称されますので、ルールブルーのお好きな方にも絶対オススメです。夏場でも、沢山つけてもくどくならず涼しげに香ります。一日の終わりにシャワーなど浴びると、何故か物凄く香りが甦る、リフレイン・ノートが凄いのも一興です。現在は本国でもEDT1濃度のみの展開、またアメリカでの販売がなく、流通量も細いのか、並行輸入品や海外通販でも出回らないので、ブティックフレグランスの中では比較的入手困難品。

 アプレロンデ100mlEDTビーボトル

L'Heure Bleue(1912)ジャック・ゲラン調香、セミオリエンタル・フローラル・パウダリー

※カーネーションとアイリスが軸ですが、高温多湿の日本ではインセンス風に感じる厳かな香調。欧米ではミツコ、シャリマーと並んで定番格の人気を誇りP、EDP、EDTにデオドラントローションもあります。いずれも少量ですごく香り、持続もEDPでも一日充分楽しめます。個人的には深みもあり、透明感も味わえるEDPがお奨めです。PとEDPとの違いは「有難さ」でしょうか。パルファムと比べさすがに香りの深さは少々軽めですが、蒼い時の名の如く、トップの香り立ちが終わり、ミドル〜ラストへと深淵に展開するのはパルファムと同じで、むしろ高温多湿の日本ではEDPのほうがつけこなしやすいかもしれません。ゲランブティックではPとEDTの2濃度扱いあり。お奨めのEDPは残念ながら日本未発売ですが、並行輸入品や海外通販で容易に入手可能。

 ルールブルー75mlEDPボトル

Chamade(1969)ジャン・ポール・ゲラン調香、セミオリエンタル・フローラル

※第一印象は「花束爆弾」。かなりパワフルです。どう香ってもグリーン・フローラルだと思うのですが…ラストのバニラノートがヒヤシンスに溶け合ってそれは麗しいです。個人的に一番のお勧め。個性的な割には毎日つけても飽きません。EDP、EDTになるにつれ、「爆弾」の経過時間が短く、よりナチュラルに纏いやすくなります。逆に、EDP,Pと花粉のような脂っぽさを感じます。シャマードに限って言えば、EDTが最高に奇麗です。ゲランブティックではPとEDTの2濃度扱いあり。

 シャマード93mlEDTリフィルボトル

Nahema(1979)ジャン・ポール・ゲラン調香、フローラル・フルーティ

※アメリカでは当時宣伝予算の1/3をこのナエマに費やすも、あえなく玉砕。現在は本国の展開も先細りなので、次の廃番はこれか?と少々心配。よく考えるとバラじゃないけど、全体像は美しくとげのある芳香麗しいバラそのもの。酸味も甘みも強いので、ローズ上級者向け。EDPとPは、あまり印象は変わりません。つけると、肌にしっくりなじむというよりは、到底辿り着けないような美麗な女性が自分の横に居続けるような錯覚に陥ります。彼女がナエマなら、もうちょっとつける凡婦に歩み寄ってほしい、と一言いいたいです。ゲランブティックではPとEDPの2濃度扱いあり、本国でも取扱いの濃度のみ展開。

 ナエマ50mlEDPリフィルボトル

Jardin de Bagatelle(1983)ジャン・ポール・ゲラン調香、フローラル

※ブローニュの森の中にあり、四季の花々が咲き乱れるバガテル公園にインスパイアされたジャルダンバガテールは、一般的に可愛らしいホワイトフローラルであると評されていますが、ゲラン大丸東京店のBAさんによれば、「白い花というのは、花の中でも最も薫り高く、それだけ挑発的でもあります。決して可愛らしく咲くだけではなく、そこには『誘う』という目的があるのです。発売された1983年は、おりしもディスコブーム時代。ディスコティックの時代を凝縮したイメージも併せ持つ香りです」との解釈通り、チュベローズ、ジャスミン、ガーデニアが甘く、放射的にかおる、主張の強い濃厚なフローラルです。拡散性という点ではゲラン中最大級の破壊力を持ちますので、つけすぎにご注意。ゲランブティックではEDPの1濃度扱いのみ、本国ではEDT・EDPの2濃度展開ですが本国では最近ボトルが汎用型ビーボトル(EDP)とゴールドケース(EDP,EDT)に変わりました。

 ジャルダンバガテール93mlEDTリフィラブルボトル

近年ゲランは国内外で限定店舗販売品を乱発していますが、その中で細々と過去のアーカイヴから復刻もしており、リウ(1929)、スールヴァン(1933)、ヴェガ(1936)など、日本でも帝國ホテル内のゲランブティックや非常に限られた店舗や期間でのみ販売されています。ただ、日本に住んでいるからといって皆易々と帝国ホテルまで行けるかというとそう言う訳でもなく、国内発送も対応していないので、そういう場合は抜け道としてゲラン・シャンゼリゼ本店にメールをして(英語でOK)、カード決済によるメール注文をお奨めします。香水を正規に運ぶ航空クーリエを使用するため、送料が55ユーロと半端ないですが、価格自体国内で買うよりかなり安い上(2012年8月現在リウ125mlはシャンゼリゼ店定価190ユーロ、国内販売価格33,600円)、香水・スキンケアのサンプルは勿論、ノートやポーチ、鏡などのノベルティを箱一杯てんこ盛りに同梱してくれるので、わざわざ交通費をかけて出掛ける事を考えれば、充実感120%なお買い物が可能です。

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