La Parfumerie Tanu

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Aldehyde 44 (2006)

ニューヨークはソーホーに本拠地を持つハンドメイド系ニッチ・フレグランス
ブランド、ル・ラボのダラス店限定フレグランス、アルデヒド44です。
当然香りは黒板キキキー!を髣髴する化合物路線まっしぐらで、きしむような
積載量オーバーのアルデヒドがウリという以外、特筆すべき特徴はありません。

調香はディヴィーヌのラムスールを手掛けたヤン・ヴァスニエ。因みに2004年
から2006年という3年間は、ラムスール(2004)、リニューアル版バガリ(2006)、
そしてこのアルデヒド44(2006)と、何故かメガトン級アルデヒド系の香りが
相次いで発売された珍奇な次代でもあります。一応、この3つは海外の香水サイト
等では21世紀のパウダリー・アルデヒド3傑または3姉妹と言われています。

系統としては、この3つの中では一番シャネル22番に近いのですが、若干刺す様な
酸味を孕んでいるため、アルデヒドがパウダリーというよりは伸ばしたビニール風船
っぽいというか、一番合成臭に感じ、かつ水っぽいのでモダンといえばモダンですが、
クラシック粉物香水ファン的にいえば満足度は薄目。ダラス限定ですので、手に入る
チャンスも限られている上たいへん高価(50mlでUS145ドル)なので、アルデヒド好き
には話の種に一発吹いてみたいという以外食指が動いて仕方ない、という程ではあり
ません。上記3点の現代アルデヒド3傑の中では一番高額なくせに一番小物、という気が
します。3傑中、最も造作が複雑で難易度が高いのはバガリ、最もパウダリーで主張が
強いのはラムスール、最も化合物的かつ底力がないのがこのアルデヒド44と感じます。

あれこれ策を講じて大枚はたいてアルデヒド44を入手するなら、3傑の他の2点にするか
いっそディスカウンターで100ミリ15ドルもせずに手に入る、旧ウビガン/現ダナ名義の
ルーテスあたりで手を打つほうが、コスパは勿論満足度も破壊力も高いと思います。

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