La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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La Belle Helene (2011)

MDCIシリーズの最後を飾るのは、ブランドの最新作であるラ・ベル・エレーヌです。
2011年3月の発売から立つこと8か月、もうすぐ2011年も終わりというのに、
公式ウェブサイトにおいて紹介文が書きかけで終わっているのはどうかと思いますが、
調香はパチュリ・パッチ、ゾンカ、タンブクトゥなどラルチザン・パルフュムールの一連の
代表作やアムアージュのジュビレィションXXV(メンズ)、オーディタリなどのニッチ系では
お馴染みのベルトランド・デュシュフュールで、19世紀半ばに初演されたジャック・オッフェン
バッハのオペレッタ「美しきエレーヌ」より名前を拝借しています。

一応、この香りはキンモクセイを主軸としたダークグルマンなフローラル・シプレと評されて
いますが、立ち上がりから全体的な印象は「酸っぱいアイリス」で、ここ日本ではアイリスが
一番強く香ります。運転手がアイリスで車掌がキンモクセイ、と言ったところでしょうか。
公式ウェブサイトではデュシュフュールの十八番である’透明感’に厚みが加わり、香りの後押しと
なっているシプレだ、としていますが、確かにベースのパチュリやオークモスが効いているし、
肌表面ではMDCIものにしては結構まじめにミルラだのアンバーだのが香っていますので、
単なる透明感には終わっておらず、冷感と温感が入交り、灰色と紫がだんだら模様になって、
オレンジが点在しているような色彩を感じる、酸っぱいアイリス、はたまた渋めの果実…依頼した
マーシャル氏ご本人も説明しかねる何とも複雑な香調に、ようやく何だか面白いものが出てきたかな、
という感じです。MDCIの女性物の中では一番胸板が厚く、男性にもお使いいただけると思います。

というわけで、公約通りMDCIの現行レディス物をすべて紹介させていただきました。どっとはらい

 

 いつかみんなのおうちで飾ってもらえるのを楽しみにしているよ!

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