フランスの高名な毛皮商、レヴィヨンの戦後の代表作であるデッチマです。
レヴィヨンはカルネ・ド・バル(1937)など戦前から香水を発売しており、
戦後の復興期から長く愛されたデッチマはテレビCMを打って大々的に
プロモーションされ、映画「ローズマリーの赤ちゃん」のヒロイン、ローズ
マリーが使用している香りとしても知られています。
デッチマが「現役」だった頃、レヴィヨンはカネボウが代理店でしたが、
カネボウからブルーベルの取扱となった際、日本発売がなくなりました。
ちなみに1994年処方変更があり、こちらはリニューアル前、カネボウ取扱の
「黒箱」で、リニューアル後は赤いパッケージに変更しました。処方変更後の
赤箱は人気がなく、最近では殆ど見かけませんが、黒箱は海外オークションなどで
高値で取引されています。
香りとしては、直球の50年代型フローラル・アルデヒドで、ル・ディス、マダム・
ロシャス辺りが同類項となりますが、いずれも鼻祖はシャネル5番であるのは
否めないので、アルデヒドがガツンと香ってローズ・ジャスミン・イランイランが
出てきてサンダルウッドとムスクが残る王道をいっています。昭和の時代に
女性の香水、お母さんの鏡台というと彷彿とするのがこの辺りだと思いますし、
特別官能的でも開放的でもない女性らしさが、記憶のなかの安心感につながるのだと
思います。
つけた瞬間いきなり動物的なムスクがシトラスと一緒に顔を出し、第一印象は
ちょっと手ごわいのですが、このアニマリックなムスクには重さがなく、
アルデヒドのリフト感とともにトップのシトラスが割合長くテンポを保って
いるため、全体的な印象は快活で、体を動かすたびにふわっとあがる香りが
とても心地よいです。
ちなみにカネボウ時代の発売価格は60mlフラコンで5,000円、他に25mlサイズや
50mlサイズのスプレィも発売されており、同時期発売のあったキャロンと比べても
一段割安感があり、古い化粧品店にデッドストックがあるのをたまに見かける所を
考えても、値頃な舶来香水として結構日本でも人気があったのではないでしょうか。
海外では今だに探している人の多い「黒箱」をカネボウの化粧品店で見かけたら、
アルデヒド好きなら試してみる価値はあると思います。