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Cabaret LPT revisited | Kanebo, no longer exists / Kose / Hollywood

それでは、前回のキャバレーでは、良いコンディションのヴィンテージが手に入らず紹介できなかった、大手メーカー2社を紹介します。最初にカネボウ化粧品です。

Theme 3 : カネボウ
「かつて存在した日本の企業」とウィキペディアに書かれている残念な会社

創業は、紡績会社である鐘淵紡績㈱としては1887年、化粧品事業開始は1936年、絹石鹸(savon de soie)からスタートしましたが、本格展開したのは1961年、一時別会社化していた化粧品事業部を統合してからで、香水も1960年代から登場します。
海外進出も早く、1961年の香港を皮切りに、1965年にはパリに研究所開設、1979年にはロンドンのハロッズで販売開始。資生堂の海外進出が台湾1957年、イタリア1963年、アメリカ1964年、フランス1980年なので、香水の本丸、フランスには資生堂より15年も早く進出していました。
創業100周年の1987年には中国進出、90年代にはサウジから中東進出、21世紀に入り東欧8か国にも進出するも、粉飾決算を繰り返し2005年に倒産、翌年花王グループに編入、事業清算後、会社としては2008年に消滅しました。
カネボウは、輸入代理店としての香水販売にも注力し、キャロン、レヴィヨン、ダリなどのフランス香水を全国の化粧品店でくまなく販売するという他の化粧品メーカーにない路線でした。数多くのカネボウブランドも発売していましたが、資生堂と比較してより日常使い、悪く言えば格下のイメージは否めず、倒産後花王に買収されてからは香水販売に対し消極的で、会社が消滅した2008年から、ミラノコレクション、店頭のみで毎年限定販売するだけで、倒産前のカタログはすべて廃番です。
現在は花王の1ブランドとして2021年に統合が完了、サイトも徐々にカネボウ時代の情報を削除しています。お問合せは花王のサポートにつながるので、今回戦後昭和の国産香水について調べることが出来なかったのですが、なんとキャバレー10日前、なんと当時のカネボウ美容部員より導入教育用の香水セットを譲ってもらうことが出来ました!高かったです!!念ずれば通ず!これがその資料です。箱には「こんな風に売れ」的なメモが書いてあります。

カネボウ美容部員用教材。左から①表。ロゴは横書き、説明は縦書き ②蓋を上げると販売員の説明用パワーワードがびっしり ③裏。当時の商品レンジや価格、発売予定月日まで書いてあるので、おそらくこの教材は年単位で作成していたのでは ④キャップは簡素なようでそれぞれ商品のモチーフが刻まれている

カネボウからは、この資料にもラインナップがあり、カネボウブランドとしては最高価格帯のナンフェアスを紹介します。

16. ナンフェアス(1974) フランス製 

カネボウの香水はキャロン、レヴィヨン、ダリなどフランスブランドの輸入代理店としていた影響からか、ナンフェアスのような高額価格帯の調香はフランスに依頼していました。今回紹介する香りで、ナンフェアスは他ブランドと一線を画していると思います。教材にも「香水を使い慣れた人向け」「個性的なムードのある装い」とあります。確かに、ベースノートに「レザーノート、麝香、アンバー、シベット」とあって、時代的に動物性香料バリバリ使用しています。ジャンル的にはグリーンフローラルシプレですが、ガルバナムのグリーンで立ち上がる、その後がどこまで行っても典型的な国産香水の香りにはなっていかないんですよ。パッケージにもしっかり「フランス製」と書いてあります。フローラルのメインはアイリスとバイオレットで、レザーが程よく効いているから今回紹介している作品の中で、最も現代に通じる香り。レザーが控えめでダスティな感じにとどめているところが、国産メーカー品の奥ゆかしさでもありますね。左上は、ナンフェアスのサンプルで、香水ですが5ml位ありそうで、サンプル一つとっても豊かな時代だなあ…とため息です。当時は値引き販売をしない分、高額購入者にはさらに財布の紐をひらかせるべく、高い価格帯のサンプルを結構なサイズでしっかり作っていた事がわかります。しかも、いちいち違うパッケージデザインですから、汎用ボトルに慣れた21世紀のニッチ香水ファンにとっては、信じられない贅沢な時代だと思います。

ナンフェアス EDT 戦後昭和の国産香水は、香水とオーデコロンのセットで出す会社が多かったが、カネボウは香水とオードトワレの2濃度が多かった。上の美容部員用教材のラインナップも、すべて香水とEDTのセットだった。この辺の差別化の理由も、叶うなら関係者に聞いてみたかった

今回紹介しきれなかった戦後昭和の国産香水は、中に香水を含ませたムエットを封入した試香用アルミボトルを用意。これだけでもう1回キャバレーが出来る

それでは、もう一つのメーカー、コーセーをご紹介します。

Theme 4 : コーセー
1946年創業の同族企業、現在は4代目

コーセーは1946年、小林孝三郎が東京都北区に小林合名会社を創業し、2年後にはを株式会社小林コーセーを設立します。創業して80年近いですが、現在も小林一族が経営、次男三男、おじさんもみんなコーセーです。またコスメデコルテ、アルビオンもコーセー系列で、系列会社も小林一族の運営です。終戦から半年ちょっとの創業ですが、香水は創業時代から作っていて、1946年に6アイテムしかなかったうち3アイテムが香水で、バイオレット、ヘリオトロープ 、ムゲット。はい、出ましたヘリオトロープ 。ムゲットはミュゲ、すずらんですね。特にバイオレットは創業時代から人気で、2006年、創業60周年記念品として復刻し、販売員などに配布した位です(ボトルはヒロミチ製でした)。創業から1950年代、昭和30年代までは「香水のコーセー」と呼ばれていたそうですが、冒頭でご覧いただいた業界紙の広告でもあった通り、オリジナルというよりは舶来品の模倣とシングルフローラルが中心でした。現在は、もはや香水のコーセーの面影はなく、ジルスチュアートをライセンス販売している程度で、アロマ系のライフスタイルフレグランス中心です。

コーセーの公式サイトには「コーセーと出会う」というアーカイヴコーナーがあり、商品の歴史を丁寧に紹介していますが、このページと資生堂の歴史ページを比較すると、資生堂の自社愛を上回っている気がして、創業者一族の誇りみたいなものを感じます。

17 アルファード(1973年5月発売) 香水

1966年、創業20周年を記念して、高級ラインのアルファードが誕生しますが、最初はスキンケア、メイクアップラインと続き、7年後の1973年にブランドネームを冠した香水、アルファードが登場します。シャネル19番の系譜をドストレートに感じるグリーンフローラルアルデヒドで、ガルバナムの立ち上がりはカネボウのナンフェアスにも通じます。ただ19番程キリキリしていなくて、すっきりとしたガルバナムで始まり、クリーミィなオロナインで終わる、全き戦後昭和の国産香水です。このヴィンテージ、かなりコンディションが良いです。ボトル入手時、発売年がわからず、1966年に登場したにしては随分19番の影響を感じる…と思い、コーセーに問い合わせてみたところ、正確な発売年月を教えていただき、1973年発売なら納得!と腑に落ちました。

アルファード 香水 創業20周年を記念して誕生した高級ライン・アルファードの名は、世界初の美容液、アルファード R・Cリキッド プレシャス(1975)に引き継がれる



Theme 5 : ハリウッド化粧品 
創業者がキャラ立ちしていたカリスマ美容家系同族企業 


ラストはハリウッド化粧品をご紹介します。現在フレグランスはすべて廃番及び生産終了です。

メイ牛山 カバ系のおばちゃん、懐かしいですね。
創業者のご主人、牛山清人(きよと)氏と一回り年が若かった上、96歳まで現役だったので、創業者夫妻で大正から平成まで経営を掌握していました。
大正時代に日本で初めてパーマネントを導入、昭和2年に銀座で美容院オープンしました。ちなみに吉行あぐりが市ヶ谷に山の手美容院をオープンしたのは昭和4年です。
※ただ、1927年、昭和2年当時、まだメイ牛山は美容界に登場しておらず、専ら清人氏の経営する美容院が先進的な技術を導入していました。メイ牛山さんは、昭和7年にハリウッド美容講習所に入学後頭角を現し、1939年、昭和14年、28歳、清人氏40歳で結婚してから美容家「メイ牛山」の登場となります。

20. レディーチャタレー (1984) EDT, 粉香水

上品なオロナインローズ系で、ローズですがシングルノートではなく、抑えた感じの知的なローズフローラルです。レデイチャタレーはメインが粉香水というハリウッド独自のパウダーフレグランスで、粉香水自体は1956年から発売していました。このレディチャタレーは1984年、オードトワレと合わせ粉香水 が発売されています。

レディチャタレー 手前左より粉香水(10g、30g)、オードトワレ、粉香水30gの外箱

ここで、ハリウッド化粧品元美容部員のインタビューをお届けいたします。

ハリウッド化粧品元美容部員・イソガイさん(仮)インタビュー

イソガイさん、ありがとうございました。

総括                                  

戦後昭和の女性の方が、ハレの日は舶来香水、毎日の香りは身近な国産香水と使い分け、自信をもって年相応の美しさを香らせていました。自分の国には、自分の国の人に対し誇りを持って売りつなぐ国産香水が、もう殆ど残っていないというのは、本当に、本当に寂しいです。そういう意味で、昭和の国産香水は、それが限りなく西欧の後追いであれ、よりどりみどりで楽しかった、と婆狸はぱっくり口を開けてオイオイ泣くのです。

香りのご紹介は以上でございます。今回も長い時間お聞きくださいまして、ありがとうございました。

 

🛒LPT directにて香りのサンプルをご購入いただけます🛒

期間及び数量限定で、Cabaret LPT revisitedでご紹介した20種の香りを年代別にセットしたサンプルを頒布いたします。Cabaret LPT revisited でご紹介した戦後昭和の国産香水を、選りすぐりの3作を収めたThe Best 3と、時代別に6種ずつ集めたトライアルキットです。

ご注文を頂いてから充填する予約販売です。発送は販売終了後、5月上旬を予定しております。

予約販売期間:2023年4月15日(土)18:00~4月29日(土)16:00

【内容について】

<The Best 3> 選りすぐり3種

1. すずろ(1976)P 0.5ml/資生堂

2. ポーラ:モンスクレ(1963)P 0.5ml/ポーラ化粧品本舗

3. ナンフェアス(1974)EDT 1.5ml/カネボウ化粧品

 

<group A> 高度経済成長前期(終戦~1960年代前半):6種

1. ヘリオトロープ(1917/1948)P / 資生堂

2. ホワイトローズナチュラル (1936/1954) P / 資生堂*

3. 禅(1964)P / 資生堂(オリジナル版)

4. 禅(1964)EDC / 資生堂(現行品)*

5. モンスクレ(1963)P / ポーラ化粧品本舗

6. アルファード(1966)P / コーセー化粧品

 

<group B> 高度経済成長後期(1960年代後半~1970年代前半):6種

1. 琴(1967)EDC / 資生堂*

2. アデリーヌ(1972)P / ポーラ化粧品本舗

3. アデリーヌ(1972)EDC / ポーラ化粧品本舗

4. ナンフェアス (1974)EDT / カネボウ化粧品

5. モンプティルゥ(1973)P / 日本メナード

6. ホットナイト(1971)EDC / オッペン化粧品*

 

<group C> オイルショック(1970年代後半):6種

1. すずろ(1976)P / 資生堂*

2. インウイ(1977)EDP / 資生堂(オリジナル版)

3. インウイ(1992)LDP / 資生堂(1992年リニューアル版)

4. プレサージュ(1977)EDP / 資生堂

5. スーリール(1977)EDP / 資生堂

6. ランコントレ(1975)P / ポーラ化粧品本舗

 

<group D> バブル景気から昭和の終わり(1980年代):6種

1. むらさき(1980)EDP / 資生堂(オリジナル版)

2. むらさき(1980)EDP / 資生堂(1990年リニューアル版)*

3. 花椿(1987)EDP / 資生堂

4. シャスレス(1981)P / ポーラ化粧品本舗

5. セレニオン(1989)P / ポーラ化粧品本舗

6. レディーチャタレー(1984)EDT / ハリウッド化粧品


実装可能なコンディションを優先し、廃番でないものは現行販売品(*)から、ヴィンテージ品は新品未開封品を中心にご用意しますが、時代物も含まれるため(特にA,B)、直接お肌へつけた際、刺激を感じた場合はすぐに洗い流し、ムエットでの試香にとどめてください。

※パルファムは0.5mlを、それ以外は1.5mlを中栓付遮光スクリュー瓶に充填いたします。

🎥動画はnoteで!🎥

Cabaret LPT歴代のオープニングビデオやライブ配信動画など、過去の映像アーカイヴをnoteにまとめました。今回のCabaret LPT revisitedも既に公開済み、今後のライブ配信などもワンストップでご覧いただけます。ぜひnoteのLPTページをフォローして、見逃し配信用にもご活用くださいね!

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