La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

無断転載禁止

Odisiaque N°6 (2021)

f:id:Tanu_LPT:20211107214014p:plain

今春全点踏破でご紹介したSLM(Sous le Manteau™、スーレマント)ですが、この秋6作目となる新作、オディジアーク・ニュメロシスが発売されました。LPTが初めて取り上げたのが本年4月のため、もう新作?と驚く方もいると思いますが、前回まとめ紹介した香りは2016年に一挙登場した作品なので、むしろ実に5年ぶりの新作となります。昨年いきなり英国FIFIニューカマー賞受賞、みたいな形で彗星の如く登場したように見えますが、最近のねずみ算式に新作が増える香水業界にしては珍しく、5年間新作を出さず地味に活動してきて、満を持して新作を投入したことになります。

f:id:Tanu_LPT:20211107211943j:plain

オディジアーク・ニュメロシス EDP 100ml 現時点ではワンサイズのみ
オディジアーク・ニュメロシスとは「6番目の阿片媚薬」を意味するオピア・アフロディジアーク(Opiat Aphrodisiaque)を略した’オディジアーク’に6作目(N°6:ニュメロシス)をナンバリングし「瞑想にも似た、長く緩慢なまどろみから意識が戻り、けだるくも鮮明な意識を嚙み締めた状態」をイメージした造語です。これまでは19世紀末の媚薬処方を基にしていましたが、今回は100年遡る事18世紀、フランスのアカデミー・デ・シアンス*会員で、ルイ15世及び王妃マリー・レシュチンスカの筆頭侍医だったジャン=クロード=アドリアン・エルヴェティウスが手掛けた媚薬処方にインスパイアされた作品です。手掛けたのは勿論SLMお抱え調香師、ナタリー・フェストエアで、下記にSLMお約束の媚薬処方とナタリー処方をご紹介します。媚薬処方は今回も配合比率付なので、ソロモン諸島の阿片が入手可能でしたら、最愛王ルイ15世も往時愛用したかもしれないムフフ内服薬が作れますよ!
*ルイ14世と当時の財務省コルベールが1666年に創立した王立科学アカデミーで、現存する学術団体である。
 
Odisiaque N°6 オディジアーク・ニュメロシス

f:id:Tanu_LPT:20211107213517j:plain

媚薬処方
ショウガの砂糖漬け60、レモン30、クローヴ30、ムスク12、ソロモン諸島の阿片15、シナモン1.2、カスカリラ2.0、クローヴ油2.5、シナモン油0.5、カーネーションシロップ適量
ナタリー処方
カラブリア産ベルガモット、エジプト産ゼラニウム、エレミ、リアトリスアブソリュート、マテアブソリュート、南米産カスカリラバークオイル、トンカビーン、ハイチ産ベチバー、ヘイアブソリュート
 
注)太字は、SLMが採用した媚薬の処方に頻出する、ダウナー系の素と思われる媚薬成分です。
 
オディジアーク・ニュメロシスのキーノートは、カスカリラ・バークオイルとリアトリス・アブソリュート。不勉強で申し訳ありませんが、正直申し上げて、どちらも原料を嗅いだことはありません。SLM的には「レアな香料盛ったわよ!」と作品紹介でもドヤドヤ紹介していますが、後学のため小僧の使い的に調べた内容をお伝えします。カスカリラは樹皮から取れる精油で、何世紀にもわたり治癒性の高い精油として珍重されてきたそうで、精油の主産地はキューバやバハマ。オディジアーク・ニュメロシスには単独の生産者が提供する南米産カスカリラ・バーク精油を使用しています。スパイシーな樹木系の香りが特徴で、オリエンタル系、スパイス系と相性が良いそうなので、お抱え調香師が香水に仕立て上げる際のクローヴ、シナモン、ジンジャーなどのスパイスとは相性抜群。一方リアトリスはクマリンが主成分の甘いタバコノートを持つアブソリュートです。
媚薬処方に堂々阿片が登場している通り、阿片と言えば「ヘロヘロ」。長々と阿片でレロレロにキメてた人が、ヤク切れで正気に戻る瞬間の離脱感とでもいうのでしょうか、阿片でキメた事がないので断言はできませんが、オディジアーク・ニュメロシスを初めてつけた時、確かに一服盛られたとでも言うか、謎の「ぐぅわん」という頭のふらつきと、胃部を鈍く押され、頭が酸欠になるようなクラクラ感を感じました。これは最初の1回で耐性がすぐにできるのか、2度目以降は発生しなかったので、最初の通過儀礼だと思って安心してお使いいただけますが、つけすぎるとキマってしまう可能性があるため、念のため最初は少量からはじめ、徐々に増やしていくことをお勧めします。特にデコルテやうなじなどへの空腹時噴霧は初回禁忌です。
f:id:Tanu_LPT:20211107220147j:plain
f:id:Tanu_LPT:20211107220210j:plain
左)デコルテ危険!右)使用上の注意をよく読んでお使いください
香りとしては、手持ちの作品で近似値を感じたのが、CYCLE001(2020、ヴィオレ)。サイクルの熱っぽいアンジェリカのスパイシー風味に似ていますが、上等な普段着のようなサイクルと比べもっと複雑で、フローラル感は全くないウッディスパイシームスクです。SLMの十八番らしく、朗らかさや眩しさは一切なく、辛みの強い香木系塗香の残り香を思い出しました。香木系塗香といっても甘辛色々ありますが、私が愛用している薫玉堂の「塗香老山白檀」と比較して、老山白檀は桂皮が効いて甘みが前面に出ていますが、オディジアーク・ニュメロシスはもっと丁子や生姜寄りの辛みが効いているのと、香料として試した事がないからこちらも断言できませんが、この辛みがカスカリラ・バーク精油の表情なのでしょうか。更にはアクセントのドライな干し草ノートが終始並走し、つけている自分には辛みが強く感じますが、周囲の方にはかなり上質な香のようなありがたい空気が拡がっているようで、私の試香中ハン1さんが対面成仏していました。香といっても薫香のスモーキーなインセンス香ではなく、塗香や加点前の香木系線香が漂わせる芳しい香りがお好きな方にお勧めです。序破急はあまりなく、ラストの方で人肌の優しさがやっと顔を出すムスクに落ち着くまで坦々と控えめに香りますが、衣類への移り香はしっかり残るので、脱いだ服の残り香で相手を泣かせる催涙作用があります。また、意外と鼻が慣れるのが早いので、知らないうちにオーバードーズにならないよう、節度をもってご使用いただきたい香りです。

SLM製品の購入は、日本発送対応の公式オンラインストアがおすすめです。€120以上で送料無料。新作オディジアーク・ニュメロシスはオフィシャルサンプルの準備より先に本製品の販売が始まり、また前5作のようにサイズバリエーションがなく現在は100mlワンサイズですが、今後50mlや14mlサイズも登場してくれると嬉しいですね。

 

≪あわせてどうぞ:SLM過去記事≫

 

SLM全6作のサンプルは、agent LPTでお試しいただけます。

🔓agent LPTは読者限定サービスの為、閲覧にパスワードが必要になります。パスワードのお問い合わせは、お気軽にlpt@inc.email.ne.jpまでお問い合わせください。

 
画像提供(写真2以外):オリビア・ブランズブール(SLM)
contact to LPT