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NUÉE BLEUE le savon on Kickstarter

f:id:Tanu_LPT:20201203125704j:plain 2020年の夏の始まりを手に汗握りつつも大いに盛り上げた、メゾン・ヴィオレのクラウドファンディング初チャレンジ作品、CYCLE001。ゴール達成率109%という数字は、クラウドファンディングのゴールとしては、かなり危なっかしい結果ではありましたが、100%超えてしまえば、100.1%だろうと1000%だろうと、ゴールには違いありません。晴れて製品化し、今秋10月CYCLE001は世界のバッカーのもとへとパリを飛び立ち、現在はメゾン・ヴィオレ公式サイトで購入する事もできるようになりました。

 
さてそのヴィオレですが、11月から欧州各地で一斉に始まった2度目のロックダウンの影響を受け、本来ならばクリスマス向け限定アイテムとして登場予定だった商品が、製造工場が稼働せず2021年2月まで延期となってしまいました。そこで、あのクラウドファンディングの血沸き肉躍るハラハラ感で、味気ないロックダウンの日々を楽しい時間に変えてしまおう-と、本来は製品化に向け資金を募るためのクラウドファンディングですが、プレオーダーセールとして実施する事になりました。その商品とは、ヴィオレのエリタージュライン最新作で、ちょうど昨年の今頃発売されたニュエ・ブルー(2019)の香水石鹸でした。

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1827年に実業家ヴィオレ氏が共同出資者のギノー氏と創業したヴィオレ=ギノー社は、元々石鹸工場として名をあげた会社で、創業の翌年である1828年には既に当時の製法特許である、100%天然原料を使用したトゥリダス石鹸(英語:Lettuce Suck『レタスの汁を吸う製法、ぎょっとする意味不明のネーミングだよね(アントニー・トゥールモンドさん談)』)から事業拡大、その後は当時の化粧品会社サクセスストーリーの王道である万博出展と王室御用達(ヴィオレのトレードマーク、女王蜂印)で社史の頂点を極めました。創業190周年の2017年に蘇ったヴィオレが、香水の次に進む道として、レトロな香水石鹸を選んだのは、自然な成り行きだったというわけです。2014年に「香水石鹸の世界」と題して一大特集を行ったLPTとしても、これは見逃すわけにはいきません。かくして「青雲石鹸」ことニュエ・ブルー ル・サボンのクラウドファンディングが幕を開けたのですが…

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本来は11月24日から30日間のプレッジ期間を設け、クリスマスイブである12月24日にゴールする予定で、あとは管理者画面からスタートボタンを押すだけのところまで準備をし、開始当日を待っていたところ、なんと4日前の11/20に「うっかり」スタートボタンを押してしまったヴィオレチーム。キックスターターからは過去の参加者に開始案内の自動配信メールが届き、いきなりゴングが鳴ってしまいました。告知用ヴィジュアルはすべて「11/24開始、12/24まで」で作成済だったので、さあ大変。チームは突貫で、しかし何かの事情か、何段階かに分けてヴィジュアルを修正していくのですが、バッカー達は「なんかゴール日とプレッジ日数があわないけど、ま、いっか」とプレッジが殺到し、ヴィジュアル突貫修正の甲斐なく(?!)、開始から約5時間で目標金額の€1,500に達成するという、楽しいサプライズに沸きました。

 

ニュエ・ブルー ル・サボンは、感染予防の基本である「手洗い」を楽しい習慣にしたい、という2020年らしい思いも込められていると思いますが、何よりこだわったのが石鹸のクオリティ。お肌に優しく良い香りだけでなく、自分たちが作る製品がもたらす環境負荷は最低限に抑えたい。まずはフランスのブランドであるヴィオレは地産地消を第一とし、原料調達及び製造はすべてフランス国内。ロレーヌ地方の石鹸工場に製造委託し、石鹸素地に使う植物油には、石鹸材料としての安定性は高いが、環境破壊と労働力搾取が問題になっているパーム油は使わず、ヒマワリ油とコプラ油(ココナッツ油)の混合油を採用。石鹸のラッピングも、原料となる木材がどこで育ち、どういう経路を経て製品になるか、その過程はどれだけサスティナビリティが高いかを認証したFSC認証紙に印刷しています。そして香りはヴィオレ版オーフレーシュ、ニュエ・ブルー。夏の訪れを思わせる爽やかなムスクベースのシトラスフローラルを、サボン用にアレンジ。石鹸用に調香した新しい香りではなく、エリタージュラインからの展開で、ニュエ・ブルーをお持ちであればシンプルなライン使いができるのが嬉しいですね。

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ニュエ・ブルー ル・サボンの販売定価は1個€20(150g)ですが、プレオーダーとなるキックスターターでは、お得な早割(€15/1個または€30/2個、送料別途)、日本向けでも送料無料の3個セット(€45)、5個の価格で6個入の「石鹸大好きセット(€75)」、9個の価格で12個入の「石鹸バカセット(€135)」、そしてニュエ・ブルーEDP1本の価格でサボンが1個ついてくるコフレ(€145)など、前回のCYCLE001では所謂バンドルパックがなかったためにゴール達成までに時間がかかりましたが、今回飛躍的にゴールが早かったのは、達成額が低めだったのもありますが、このようなまとめ買いパックが充実していた所以もあるでしょう。
 
ヴィオレの香りで、ああいい風呂入った、が出来る日が来るとは思いませんでした。来年の2月が今から楽しみです。そして、エリタージュラインから香水石鹸が出るのがクリスマス恒例になってくれるともっと嬉しい…ヴィオリナーデが花開くパウダリーアイリスのプープルドートンヌ石鹸、アネール・ダポジェ石鹸ならメンズ向きにレザーをチューンナップして、スケッチ石鹸ならアンバーでこっくりと、柔らかな香りのタナグラ石鹸は、敢えて微香性にして、洗い流した後の肌に香りが残らないように…等々、妄想特急が止まりません。
 
ニュエ・ブルー ル・サボンのプレッジは2020年12月20日まで。

資料提供:アントニー・トゥールモンド(メゾン・ヴィオレ)
 
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