La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Yatagan (1978) / A Gentleman Takes Polaroids chapter six : Gentleman in Winter

立ち上がり:うーん・・・土臭い。何故かガラナ飲料を思い出す。すごく個性を主張してくる香りだが暑苦しい男に吐息がかかる距離まで距離を詰められた感じがする
 
昼:香りの印象変わらず。濃い男たちの群れに放り込まれ腋臭の匂いにも慣れてきたような感じだ。
 
15時位:やや薄まったか?いや・・・・私が慣れただけなのか?
 
夕方:このくらい薄くなればようやくエレベーター乗ってもOKな感じ。しかし最初から最後まで香りの印象が殆ど変わらない。
 
ポラロイドに映ったのは:胸囲が自分の倍はあり、腹部は私の二分の一位の肌が浅黒い歯が白い漢!(EXILE系ではなくアミーゴだな)私のささやかな世界に入ってくんな!サンタナの来日公演行くの?アンタ?

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ヤタガン 125ml 国内未発売

 

Tanu's Tip :
 
先般のキャバレーLPT vol3では、1978年へのタイムトラベルをお楽しみいただきましたが、ラインナップに入れるか否か、非常に迷ったのがこのヤタガン。日本にも幕末に伝来したというトルコ及び中東によく見られる、カーブして持ち手がカッコいい戦闘用小刀を意味し、キャロンのメンズフレグランス中、最も獰猛かつ主張の強いヤタガンは、発売当時明らかに相当数の顧客をビビらせたらしく、キャロンも自分で発売しておきながら、店頭でのけぞる客に向かって「中東で人気ですよ」と言ってのけたという逸話がありますが、全く想像の及びもしない世界でヒットしている、と言われたお客の困惑ぶりはいかほどであったか、それでその客は納得して、翌日から「中東で流行ってるんだってさ?」と自分も周りも頭にクエスチョンマークを浮かべながら使い続けたのか、今でもヤタガンは全くの現役で普通にキャロンの定番として手に入ります。調香は、エスティローダーのプライベート・コレクション(1973)などを手がけたヴァンサン・マルセーロで、この時代のキャロンは専属調香師がおらず外注に頼っており、さきの専属調香師、リチャード・フレッスが1980年代後半に着任するまでの所謂「空白期間」に案外猛烈な作品が生まれています(注:リチャード・フレッス着任後、モンテーニュ(1987)などを手掛ける一方でキャロンはトロワシエム・オムやパルファム・サクレなど、後世に残る作品を外注に出しているので、どういう専属なのかな、と疑問に思うこともありますが)。

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白い歯っていいな、ヤタガン

 

ただし、トルコの剣刀なはずなのに、ジェントルマンが揉みくちゃにされたのは、何故か白い歯っていいね!のアミーゴ集団。しかも、なで肩薄胸たいこ腹のジェントルマンにとって、極北の逆三角体型のアミーゴ集団と、常にエレベーター満杯状態の気分は、臨死に近い極限状態だったに違いありません。そうはいえども、ヤタガンをつけたジェントルマンは非常に芳しく、針葉樹やハーブのバイキンバイバイ系ノートにオークモス満載のウッディシプレな胸板厚く、かつ甘さのないビタードライなどよめきを放ち、居合わせた私の方が「えええ〜香りやぁ〜〜」のフレーメン反応を起こすほどでした。意外にヤタガンは身持ちが良いので、男女ともに冬の絣や大島の着物に似合いそうで、男性ならお正月の紋付袴にオススメです。下手なフゼア系より確信犯的にカッコいい、ただしキマれば、の話ですが、こういう香りは真冬から始めるのが肝要ですので、興味のある方は「う、今日は寒いな」という時こそチャンスです。応援しています。
 
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