La Parfumerie Tanu

- an Imaginary Haute Parfumerie living in your Heart -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Valcan(1976) / A Gentlemann Takes Polaroids chapter five : Japanese Gentleman

 

立ち上がり: むう・・・70年代の日本のお父さんの香りだ。頭からはチックの臭いがしてきそう。青い香りです

 
昼:香りの印象はつけはじめとほぼ変わらず。結構持続性強し
 
15時位:そのままの印象で微かに香る程度
 
夕方:まだうっすらと残る。仕事から帰っても親父臭を隠せるね!

ポラロイドに映ったのは 三つ揃いでオールバックの昭和日本の中産階級リーマンお父さん
Tanu's Tip :
 
毎年盆暮れ正月には、ジェントルマンの故郷・盛岡へ帰省します。ジェントルマンの実家は、日本高度成長期ニュータウン計画最大の失敗、との誉れ高き昭和の新興住宅地にあり、住民の平均年齢が65歳を突破して随分と経ちます。ここから巣立ったジェントルマン世代の若者が戻りたくても働く場がなく、子供の頃お世話になったお店は殆ど閉店、インフラの縮小で街に出るのも本数が少ないバスの乗継ぎしかなく、車なしでは一苦労です。最寄りのコンビニまで徒歩15分。結婚当時はなんでも売ってる個人商店がすぐそばにあったのに、20年近くこのニュータウンを盆暮れ正月のたび見てきましたが、本当に、寂しくなりました。
 
ある日、近所のスーパーに行きました。青森を中心としたチェーン店ですが、もう少し近所に生協があるので、そのスーパーには帰省時あまり行くことはありません。行っても、盛岡名物・福田パンを買うくらいで、その日も昼には帰京するので、福田パンがお盆休みのため直営店で買えないため、30分歩いてスーパーに行きました。パン売り場の裏は化粧品コーナーで、スーパーで普通に売っているドラッグストアコスメが並んでいます。ただひとつ違うのは、昭和のメンズラインが、怒涛の品揃えで充実していることでした。しかも、東京でももはやほぼ見かけない、バイタリスやMG5、加美乃素が、サクセスやギャッツビーと並列で置いてある中、一際輝いていたのが、カネボウ・バルカンのフルラインナップでした。ヘアアイテムが恐ろしく充実したバルカンは、ポマードはもちろん、チックも当然のようにあります。ポマードとチックが現行商品、しかも取り寄せではなく、近所のスーパーで買える、そして買う人のいる世界がある事に、衝撃を受けました。
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メンズコーナー。2段目 バルカン勢ぞろい 下段は加美乃素、右には柳屋ポマード
こう見るとギャッツビーとかサクセスの方が肩身狭そう
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バルカンの右隣の棚には、アウスレーゼ、ブラバス、MG5など資生堂コーナー
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MG5。見かけたのは子供のころ以来かも
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ブラバス。ジェントルグリーンの香りらしい でも今嗅ぐと刺激臭かもしれない
 
私が香水評論を始めてから、バルカンのオードトワレの実物は初めて見ました。資生堂はアウスレーゼのレギュラーとフレッシュ版も2段使って並んでいました。ブラバスやヴィンテージもありました。アンテナに引っかからなかっただけかもしれませんが、ドラッグストアやスーパーの化粧品売り場には、アフターシェーブやヘアトニックはあっても、オードトワレまできちんと揃えている店舗が、どれだけ残っているでしょうか。かつては、化粧品店がその役目を担っていたわけですが、この10年ほどで街の化粧品店は半減どころか、1桁数が減ったのではないかと思うくらいの衰退振りで、もちろんジェントルマンの実家周辺には化粧品店は一軒もありません。
そして、よくよく見ると、未だに資生堂・ザギンザできちんとディスプレィされている、若干年齢層の低いタクティクスはひとつも置いていません。タクティクスは、資生堂インターナショナル製で、アメリカでも売っている、若い人にも訴求力のあるバリバリの現役で、このスーパーの購買層には合致しないのです。

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バルカン オードトワレ 120ml 2,500円(税抜)
店舗では見かけなくてもマツキヨのオンラインなど2-3割引で
入手可能な販売先もあります

 
そう、このスーパーは、昭和40年代から50年代、すなわち1970年代に移住してきた当時の若いお父さんがご愛用のメンズラインにものすごく注力していて、現在は後期高齢者となった男性が「ここに来れば欲しい化粧品店はなんでもある」と言わんばかりの、究極のセレクトショップとなっているのです。おじさん向けではなく、おじいさん向け。1976年発売のバルカンも、まさにニュータウン世代のお父さんが、お父さんになった頃に発売され、舶来物は敷居が高いが、近所で売ってるカネボウなら、母さんが買い物ついでに買って置いてくれる。そして40年、他に買いに行くところがないためスーパーの仕入担当もこんな化石みたいな商品を揃えざるを得ない、といった相関図がはっきりと見えてきます。
 
前置きが長くなりましたが、バルカンはスパイシーフゼアというよりはニベアの匂いがおっさん臭くなったような、ちょっとソーピーなオールマイティメンズノートで、カネボウの商品説明には「洗練されたヨーロッパの伝統の香りをブレンドした」とありますが「何」にヨーロッパの伝統をブレンドしたのかは、明らかにはされていません。多分それは、当時の日本のお父さんに一番なじみのある、風呂場の石鹸なんだと思います。ジェントルマンは、当時のニューお父さんよりも遥かに歳上ですが、昭和のジオッサンがかぶさってくるようで、老け込んだ気分になるのか、日常使いには難しいようでした。