La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Tour de Nederland 2018 | city one : Rotterdam | with Lianne Tio Parfums

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昨年9月に英蘭訪問して、まだたったの半年足らずで再訪が叶ったオランダ。何故こんなにも頻繁にオランダへ行く事になったのか?その動機は?-それは昨秋の英蘭特集でも少し述べたが、店主タヌとその次姉であるハンブルサーバント1号ぼんあね(通称ハン1)の曾祖父は、南ホラント州の古都・ドルドレヒトと世界遺産の風車群が残るキンデルダイクの間あたりの出身で、そこから台南へ渡り、やがて祖母が生まれ、その祖母から我々の父が生まれた…という、実の両親からも聞かされていなかった事実が、約40年前、タヌとハン1の長姉と結婚する際、今は亡き父から聞かされたたった一人の生き証人であり、オランダの街を紹介するテレビ番組をたまたま見ていた義兄が「ドルドレヒト」「キンデルダイク」という地名を聞いた途端、40年近くも前に忘却の彼方へと消え去っていた記憶が突如蘇り明るみに出て以来、それまでオランダの地へ足を運んだことのなかったハン1が「曾祖父の足取りを少しでも辿りたい。ひいじいちゃん、成仏!」と、いきなり今年の正月明けにオランダ行を決意。一人では不案内なので、2016年、2017年と香水を通じてオランダへの道が着いた店主タヌをツアコンとして抜擢した-

 
リアンヌさん、また来たよ!リアンヌ・ティオ・パルファム店内実況中継
                                                                                                      - in Rotterdam
 
今回のオランダ訪問は、狭い国土と充実した公共交通網を活用し、ホテルは料金のバカ高いアムステルダムをはずし、アムスが東京ならちょうど横浜的な位置にあるロッテルダムに定住。そこからオランダ各都市と隣国ベルギーのアントワープへ足を運びました。まずはヨーロッパに行くならば、ここを通らずしてなんとする!のリアンヌ・ティオ・パルファムを訪問しました。1年半で3回会えることになったリアンヌさん、現在は9月の増床リニューアルオープンに向けて最終調整中で、いつもに増してお忙しそうでした。「さっちゃん、見てよ!私ったら目の下真っ黒よ!!」と言うので、ここは女の友情で店頭での顔写真はカット!その代り、お話を伺う間に垣間見た繁盛っぷりを実況中継する事にしました。
 
<繁盛レポート1:オランダ中年男性編>
現在リアンヌ・ティオ・パルファムは、リアンヌさんと実の妹インゲさんおふたりで運営しており、お客さんの多い週末は10年来のウィークエンドスタッフ、ラジアさんも応援に来ます。訪問したのは水曜の昼下がりと普通はまったりタイムで、近隣のアーケードなどは店員さんがスマホがっつり見てたりお茶飲んでたりしている店もチラホラ。私が訪問した時も最初はお客が私だけと、店内でお話ししても接客の妨げにならずにすむかな…と思いきや、ドアを開けて入ってきたのは中年男性2人。
 

日本で中年男性がふたり、香水を買いに来るって図式はまずお目にかかった事がありませんが、何やらリアンヌさんにおすすめを伺っている様子。オランダ語での会話なので聞いてもわかりません。するとリアンヌさんが開けたのは、クライヴ・クリスチャン専用クローゼットの扉!店内ではロジャ・ダヴをはじめ商品は基本オープンシェルフに陳列していますが、クライヴクリスチャンだけは、ガラス扉のついた専用クローゼットにディスプレィしており、お客さんが頼むか、リアンヌさんが特にオススメでない以外はボトルを手に取ることはできません。ムエットでいくつか紹介した後、一人の男性が右腕にプッシュ、もう一種類を左腕にプッシュ…同伴の男性ともあれやこれやと話しています。結構本気で、しかもクライヴ品から絞り込んでいる模様。

そして10分…15分位して、そばで見守っていたインゲさんが一瞬バックヤードへ姿を消したと思った瞬間、戻ってきたインゲさんが手にもっていたのは…きたーっ!クライヴ・クリスチャンのショッパー!しかもデカい!赤ちゃん2匹くらい入りそう!!そして、1個、2個…ええっ、クライヴ2本もいっちゃうの??お客さん、豪気!!

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リアンヌさんの接客を見守るインゲさんと超ドデカショッパー。手前はお客さんが来るまで店内総出で検品していたオーモンドジェイン製品ですね

リアンヌさんが接客する間、インゲさんがサンプルアトマイザーを次々に作ってはラベリングしてお客さんに渡しています。リアンヌ・ティオ・パルファムでは、オンラインストアでのサンプル販売は行っていませんが、購入するとお任せでお奨めの香りを幾つもチョイスして同梱してくれるのですが、店頭で購入した場合は、リクエストに応じ、その場で作ってタダでサンプルをつけてくれるのです。日本でも昔はセントチューブ入りのメーカーサンプルをしっかり作り、何か購入した時とか、特別頼めばくれたものでしたが、今では新商品プロモーションやイベントなどで配布される以外は一般人にサンプルを配布しなくなった上に、こうやってハンドリングでサンプルを作ってお客にあげる、なんて逆立ちしても考えられません。お支払いを済ませた男性とお連れ様、30分ほどのお買い物を楽しんでお帰りになりました。まいどあり~。

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左からオーモンドジェイン、グタールパリ、フォート&マンルのサンプルセット
<繁盛レポート2:オランダ青少年編> ※青少年の為画像はありません
中年男性連れがお帰りになった後、入れ替わりに今度は超かわいい男の子が、やはり二人連れで入ってきました。見た感じ、大学生くらいかな…オランダ人は皆さん上背がありますが、買い物に来た方の男の子は190cm以上はありそうな見上げるほどの長身で、お友達だって180cmは下らないはずなのに小さく見えるというトリッキーな2人。お友達の方はぼんやり付き合いで来ている風でしたが、とにかく背の高い子は超本気!やっぱりシャツをまくり上げ、リアンヌさんに何かをスプレィしてもらった後、何も買わずにお店を出て行きました。そりゃそうだよね、あのくらいの子供がポンと買えるものって…リアンヌさんのお店はオートパフューマリーだし、あまり選択肢がないのでは…と妙に納得するのもつかの間、30分ほどして、何とその二人が戻ってきました!背の高い子が、袖をまくり上げた方の腕をインゲさんに差出し「おばさん、どう思う?時間経って変わってきたけど、僕に似合うかな?」的な事を言っているようで、インゲさんがうんうん、とうなづくと…やりました!青少年、1本お買い上げ!しかも彼が買ったのは、ロジャ・ダヴのデンジャー・オム!子供がロジャを買うお店!!リアンヌさんもインゲさんも満面の笑みで、それはもうポイポイ、サンプルをショッパーに投げ込んであげていました。男の子も俺遂にやった感炸裂な最高のスマイルで、ぼんやり横に立っているお友達も何だかよくわからないけど嬉しそう。二人が帰った後、インゲさんが話してくれました。
インゲ「あの子はね、お父さんがうちの常連なの。小さい頃からお父さんに連れられて、良く来ていたわ。それで大きくなって、自分でも1本欲しくなったのね。3か月くらい前から、しょっちゅううちに来ては色々試しては考え、試しては考えて帰って行ったわ。欲しいものは決まっていたみたいなんだけど、その間、ずっとお金を貯めていたみたいなの。今日もね、やっぱり腕にスプレィして「ちょっと時間を置いてみる」って一旦出て行ったでしょう?戻ってきて、私に腕を出して「おばさん、どう思う?時間経って変わってきたけど、僕に似合うかな?僕は好きだな」っていうし、若い彼にもデンジャー・オムは良く似合っていたので「お似合いよ」と言っただけなんだけど、その瞬間運命決まったみたいね!「じゃ、ください」って、あの位の子にしては思い切った買い物だけれど、遂にお気に入りの一本を自分の力で手に入れたのよ!その喜びは格別だと思うわ」
-いやもう、いい話すぎて目頭が熱くなりました。香水って、本来はそうやって大事に選んで買うものだって、初心に戻るというか、心が洗われる想いがしました。確かに高い買い物だったけど、君に相応しい香りだってオートパフューマリーも太鼓判だ!最後のワンプッシュまで大事に使って、いい男になるんだよ!ちなみにその日の週末はキングスデー。彼女との勝負デートに間に合ったね、少年!
 
<繁盛レポート3:Fort&Manle>
今年のリアンヌ・ティオ・パルファム新規取扱ブランドの中でも、リアンヌさんが心血注いで紹介しているのが、オーストラリアはメルボルンのオーナー調香師、ラセイ・フォート率いるフォート&マンル。フレグランス・アワード界の本屋大賞、The Art and Olfaction Awards2年連続ファイナリストと若き実力派でもあります。店頭でもショーウィンドウ越しと店内双方向から楽しめる、美しいディスプレィが施されていました。香りは古き良きオスマン帝国の主人公、スレイマン大帝やスルタン、さらにはモネの「睡蓮」に描かれたジヴェルニーの庭や、ノーム(スマーフ様みたいな奴ですね)まで題材になる幅広さ。基本的に香調はユニセックスで、ウッディ、オリエンタル系が中心ですが、店頭で試香した印象は、いずれも香りを乗せた肌から息遣いが聞こえてきそうな、生々しく豊かな表現力を持った「生きてる香り」。中でも1961年、海賊の奇襲により、メキシコ湾の底に船もろとも沈んだ最高級の葉巻(マデュロ)と隙間に埋め尽くされたトロピカルフルーツに想いを馳せて生まれたマデュロは、リアンヌさんが「葉巻を愛した亡き父を思い出すの」と、特に気に入っている作品です。

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フォート&マンル。アイコンの道化師には「スルタンの傍で喜ばせる道化師のように、張りつめた中にもどこかおどけた抜け感が人生には必要」そんなメッセージが込められている

リアンヌ「最近のメゾン・フレグランスって、昔と違って毎日毎日掃いて捨てるほど新しいブランドや新作が出てくるじゃない?ニッチ系だからどこも最高の香料を使っているなんてありえないわ。最近は結構ケミカルな作品も多くて、辟易していたのよ。昨年の見本市でフォート&マンルに出会った時は衝撃だったわ。ラセイはトルコの血を引く独学の調香師で、自分のルーツ、オスマン帝国やスルタン、遥かなる大地に想いを巡らせ、出来る限り天然香料を中心に、彼と彼の血が受け継ぐ世界観を香りという形にしているのよ。ホント、久しぶりに惚れ込んでいるわ。どれもスケールが違うもの!ボトルもほら、持ってみて頂戴。ずっしり重いでしょう?フロントには分厚いエッチング板がセットされていて、ラセイがひとつひとつ大切に作っているのが、ボトルを手に取るだけで伝わってくるわ。自分が好きなものにはおのずと販売にも熱が入るから、今年に入って倍々で売れているのよ。また取扱店に対してもフォート&マンルは非常に紳士的で、この店頭ディスプレィもすべてブランドの提供品なのよ」

-えっ、という事は、他のブランドは多少は持ち出しありなんですね?!それはさておき、やっぱり推してるブランドが売れたり成長すると嬉しいですよね!
リアンヌ「勿論よ!でも一方で最近はニッチ系を扱う競合店も増えたし、何よりデ・バイエンコルフみたいな老舗デパートがロジャを扱うようになったりと、うかうかもしていられないのよ。うちの角を曲がったところに、ニッチ系のチェーン店がオープンして、そこと扱いがかぶったAJ Arabiaは在庫限りでやめるわ」
-でもこうしておじさんが店内でゆっくり話してクライヴ2本も買ったり、青少年が何度もやってきては買わないで帰って、それでも最後は買いに来る…なんて、若いバイトしかいないチェーン店やデパートではなく、ずっとそこに居て、お客さんの成長まで知っているお店ならではだと思うんですよね。リアンヌさんのお店は、何か買いたくなるお店なんですよ。

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今回で会うのが三度目のリアンヌさん。毎度のことながらやっぱり話が盛り上がりすぎた上、帰国前にはハン1共々お食事に招待して下さったりと大変お世話になりました。私も盛り上がりすぎて「お店に行ったらこれを試して、あれを頂いて…」と考えていたのが頭真っ白、香りのレビューは繁盛店レポートを持って代えさせて頂きます。どっとはらい!
 
[リアンヌ・ティオ・パルファムからのお知らせです]
日本の読者の皆様へ嬉しいお知らせです。
昨日ご紹介したリアンヌさんのお店がリニューアルオープンまで一時閉店しますが、本日6/15から7月いっぱい、日本への発送が送料無料になります。
クーポンコード:FSWW
詳細は、下記お店のリンクから、オンラインストアのトップページでご確認くださいね!
私もアレとアレとアレ注文しちゃおうっと。お見逃しなく!
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Lianne Tio Parfums
Weena-Zuid 144
3012 NC Rotterdam (NL)
tel : +31 (0)10 4049602

営業時間
火-土 : 10:00 - 18:00
日 : 12:00 - 17:00
月、祝休
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