La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Age of Neo-Powderist 5 : The Sexual Powderists

 【パターン5:エッチな粉物】
はい、それでは21世紀の粉物ばんざい、最後のテーマは「エッチな粉物」です。エッチと一言でいっても色々ありますが、粉物の似合うエッチを厳選しました。
 
13.1889 Moulin Rouge (2010)「ムーランルージュ/キャバレー/バーレスク」 
エッチな粉物、最初はムエット13番の1889ムーランルージュをご紹介します。本国ではレストランもやっている実業家、ジェラール・ジスラン率いるイストワール・ドゥ・パルファムから、19世紀末のパリ・デカダンを代表するキャバレー、ムーランルージュへのオマージュ作品です。ムーランルージュと言えばフレンチカンカン、そしてバーレスクですね。バーレスクダンス、平たく言えば高級ストリップです。乳に房つけてグルグル回す奴です。19世紀末のベルエポックな文化人も通いつめました。皆さんエロいの大好きですからね。欧米でバーレスクダンサーはただのストリッパーではなくてセレブ級の扱いを受けています。
 
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このなんだかちょっと薬臭いのは、アブサン、ニガヨモギですね。このアブサンていうお酒も19世紀末パリの風物詩というか、抽出したニガヨモギの成分で幻覚症状などを起こす中毒者続出でした。現在のアブサンは処方が変わっていて中毒にはならないそうですが、アイリスとアブサンにシロップみたいな甘い香りやローズ、タンジェリン、レザー香など、ざわざわしたキャバレーの雑踏の演出が良くできていますが、まろやかに寛げる感じの香りではない一方で、アブサン効果か、結構癖になります。
 
14.Maitresse (2006)「愛人」
次はムエット14番、アジャン・プロヴォカトゥール(エージェント・プロヴォケーター)のメイトレスをご紹介します。メイトレスはフランス語で「愛人」ね。アジャン・プロヴォカトゥールは、ヴィヴィアン・ウエストウッドの息子がやっている高級エロ下着メーカーですね。アジャン・プロヴォカトゥールとは、フランス語で取り締まり対象を挑発してわざと不当行為を犯させ、摘発する「おとり捜査官」の事です。カイリ―・ミノーグをフィーチャーしたテレビCMが放送禁止になるなど、エロすぎて話題騒然のお騒がせブランドで、これそのCMのカイリーですね。

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アジャン・プロヴォカトゥールの2001年テレビCFでのカイリ―・ミノーグ
下着は高いですが、香水はインターパルファムが製造元で値崩れが激しく、100mlで実売40ドルするかしないかのアフォーダブル系です。香りとしてはレトロモダンなクラシック路線で、こんな手榴弾みたいな見た目の割に中々出来が良くて、初出のアジャン・プロヴォカトゥールは1970年代にヒットしたジャン・クチュリエのコリアンドルを彷彿とする、時代錯誤なローズシプレでしたし、このメイトレスもフローラル・アルデヒド系で21世紀にわざわざ出てくる香りとは思えませんが、この辺も古き良きバーレスク、ストリップ路線の延長と言えますね。調香は、アジャン・プロヴォカトゥールの手榴弾シリーズはすべて担当し、バイキリアンとかクライヴクリスチャンなども手掛けている、クリスチャン・プロヴェンザーノです。
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ちょっと硬めな仕上がりで、つけると前半で紹介したパルファン・ロジーヌのローズ・ニュに良く似ているので、ロジーヌのご予算が出ない方はジェネリック香水としてこちらのメイトレスをおすすめします。
 
15.Tom of Finland (2007)「トムオブフィンランド」 
ラストは、ムエット15番、知的エロの殿堂、エタリーブル・ドランジュから、トムオブフィンランドをご紹介します。このブランド、今月ついに日本上陸を果たしまして、今から7年以上前ですが、LPTでトムオブフィンランドを紹介するにあたり、エタリーブルドランジュに画像提供を依頼したんですよ。そしたらオーナーのエチエンヌ・ド・スワールさんからご丁寧に提供してはいただいたんですが「他に転用すんなよ」とがっつり釘を刺された上に「あんた、伊勢丹のほかに、うちの商品おいてくれそうな店知ってたらおしえてくんない?」とカウンターオファーが来まして、もちろんそんなの知らないので「わからない」と答えたらそれっきりでしたが、丁度そのメールの半年後、現在の代理店であるビオトープインクが創業して、こうして上陸できたんだから、LPTは何の役にも立たなかったけれど、結果オーライで本当に良かったです。新宿のノーズショップでも買えますよ
 
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調香はピュアディスタンスのブラック、ホワイト、ヴァルシャーヴァを手掛け、LPTではおなじみのマスターパフューマー、アントワーヌ・リーが担当しています。当時リーさんは、エタリーブル品を多数手がけていました。さてこの題材になっているトムオブフィンランドという人は、世界で最も有名なフィンランド人アーティストとして、フィンランド大使館もイチオシの、ゲイアートの巨匠です。ムーミンを越えたね!ちなみにムーミンの作者、トーベ・ヤンソンもLGBTです。ご覧のとおり、2014年にはフィンランド郵便から記念切手も発行されました。
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出すなよ、こんなの…
 
それでは箱の内側を見てみましょう。

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まずいですね
 
トムオブフィンランドはフランスを含む欧米各国の成人年齢である21歳未満の方は購入できません。ノーズショップではどうなんでしょう?未成年の方でも買えるんでしょうか。要確認ですね。発売当時はパッケージのイラストが選べて、水夫、屋外の兄貴、室内の兄貴や、兄貴がサンタの格好をしているクリスマス仕様のも限定でありました。
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一般的な香調は、メンズのアルデヒド・パウダリーレザーとなっていますが、その一言ではすまされない、現代の香りにしてはかなりストーリー性のある展開をします。ほわっとしたアルデヒドのリフトで始まり、パウダリー・フローラル系かと思いきや、リフトがひと段落するとじわじわとパインニードルやヒノキなどのドライな消毒系ウッディノートとレザーノートが顔を出し、ハードゲイな革ジャンを顔にかぶって昼寝したら窒息、みたいな妄想が沸き立つ革ジャンノートとなって呼吸器系にのしかかってきます。しかも案外体臭とは無縁な、猛烈にバイキンバイバイ系の清潔感がありますね。これかなり残香性が高くて、トムオブフィンランドを付けた後に来た服が、その後何度他の香水をつけた後に着てもレザーノートになるんですよ。だから、これつける時は洗える服を着た方がいいです。ボトルを手にする勇気があるか否かは別として、コンセプト香水としては、上出来というか、傑作の域に達していると思います。
 
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<note>
以下2点は下記リンクをご参照ください。
11.Perlerette / Parfums Volnay (1925/2014)
12.Pourpre d'Automne / Maison Violet (1924/2017)