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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Gardenia Passion (1989)EDP and EDT

13. Tour de Nederland 03. Modern Classic
昨年、アニック・グタールが生前手掛けた香りをシリーズでご紹介しましたが、紹介しきれなかった作品の一つがこのガルデニア・パッションです。日本では取扱い終了したので、廃番になったと思われている方も多いと思いますが、現在はオードトワレ1濃度、100mlサイズのみの展開で手に入ります*。
 

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ガルデニア・パッション旧ボトル 左:EDP50ml、右:EDT100ml

 

日本では1990年代半ば、服飾輸入及び卸商であるチャールズ・レイス・ジャパンが初めてアニック・グタールを紹介し、バーニーズ・ニューヨークの各店舗や同じくアパレル会社、ワールドのセレクトショップ、オペーク(オペークギンザや丸の内など都内店舗はすでに閉店、現在は大阪と広島のみ)で相応のスペースを確保し、香水というよりはファンシーなアクセサリーを並べて手に取るようにしつらえる、服飾卸ならではのディスプレィ展開と、伊勢丹やバーニーズ、オペークといった日本としてはハイエンドなショップに限定されていたため、一層ブランドの差別化に拍車をかけていたのも記憶に新しいですが、2011年のアモーレパシフィック買収により日本での代理店がブルーベルに変わり、メインストリーム系ブランドと十把一絡げに並ぶようになり、 本国でのロングセラー品廃番は勿論日本での取扱いアイテムの大幅な縮小も重なり、正直なところ人の心は移ろい易いもので、白いハンカチに染みがついたかのように評価の地滑りが起きているのは否めない事実です。
ちなみにアメリカでは数年前終了した長寿テレビ番組、オプラ・ウィンフリー・ショーの司会者、オプラ・ウィンフリーが大のガルデニア・パッション好きで、オプラ・ウィンフリーといえば彼女が個人的に愛用しているものを紹介したりプレゼントする番組の1コーナーであるOprah's Favourite Thingsで 「この人が薦めるものは一流品」というお墨付きがお茶の間に登場する瞬間つき、ものによってはこれ見よがしに「オプラお奨め」のステッカーが貼られる程の影響力がありますが、そのオプラが番組で自分のガルデニア・パッション愛を延々語ったのは有名な話で、この人が紹介する商品への信頼は単なるセレブお気に入りの範疇を軽く超えており、日本で言えば「暮らしの手帖」の商品テストで勝ち抜いた逸品級の説得力があり、アメリカの香水本ではガルデニア・パッション愛用者と言えばそれまでほかの女優がちょろっと紹介されるくらいだったのが、番組紹介後、オプラ・ウィンフリーが筆頭にあがるようになりました。
 
香りとしては、アニックが日本を訪れた際、おりしもそれは梅雨時で、雨露に濡れた満開のくちなしが放つ美しい香りにインスパイアされて作ったというストーリーが有名なガルデニア・パッションは、ガーデニアと銘打ってはいますが、確かに雨露に濡れた梅雨どきの白いくちなしを一瞬フラッシュバックしますが、すぐにグリーンノートをアクセントに置いた、濃密な、しかし出過ぎた真似はしない知性派のチュベローズへとシフトしていきます。
チュベローズは人気の高い花香料ですが、主軸に据えるととかく主張が強くなりがちで、何を合わせるかのさじ加減が重要になってきます。チュベローズの香りと言えば、徹頭徹尾外向きで、破滅的に華やかなフラカ(1948)が何といっても横綱ですが、1980年からスタートしたアニック・グタールでもチュベローズはローズと並んで重要なファクターで、このガルデニア・パッションの他にもパッション(1983)とチュベローズ(1984)があり、そのどれもがあと一歩前に出ると受ける印象が変わってくる所での寸止めの引き具合が美麗で、抑えた美しさの中に激しい情熱が溢れる手前のバランスで魅了するものがあります。パッションのレビューをお読みになった方はお気づきかと思いますが、名前からして前年登場したパッションの妹分であり、パッションの方がより濃厚で肉感的、このガルデニア・パッションもグリーンとオークモスを多用することで、オペラピンクと肉色の混じった(花弁は白いが、瞼に映る色合いとして)チュベローズの中に、より多くのマーブルを描くグリーンやベージュがモアレのように輝き、肌に馴染んでいく様はパッションと血のつながった姉妹であると言えましょう。EDPは花の生々しさを、EDTはボタニカルな青みを感じますが、どちらも基本はチュベローズです。チュベローズの香りをお探しで、華やかだけれども出過ぎない色香のある、普段使いにもここぞという場にもふさわしい、良い意味で使いやすい1本なら、ガルデニア・パッションをお奨めします。そういうわけで、名は体を現しませんが、くれぐれも、くちなしの香りを期待したら違うではないか、と一刀両断の答えを出さないでほしい作品です。
 
*リアンヌ・ティオ・パルファムでは廃番のEDPも在庫あり(2016年10月現在)
Gardenia Passion by Annick Goutal EDT 100 ml 95 euros & EDP 100ml 130 euros