La Parfumerie Tanu

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La Douceur de Siam & Le Sillage Blanc (2017)

La Douceur de Siam (2017)
 

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黄昏時が訪れる 名もなきいのちが、この悲しみすら拭い去ってくれる
                   ーモントリー・ウマヴィジャニ
 
「私たちのゴールは、洗練されたフランスの伝統に優美なシャムのエレガンスが融合した、模倣しようのないほど素晴らしく比類なき価値を持つ香りを生み出すことです」パルファム・ドゥシタ創業の抱負をこう語るタイ出身のオーナー調香師、ピサラ・ウマヴィジャニが、エキストレ三部作につづき世に送り出したふたつのオードパルファムをご紹介します。
 
フランスのクラシックな香水スタイルに、ジャスミンをはじめ、セージ、ローズ、ベンゾイン、蜜蝋、ベルガモット、サンダルウッドといったタイの伝統儀式で用いられる希少な天然香料をふんだんに取り入れているのが特徴のパルファム・ドゥシタですが、タイは世界の有力香料会社が数多く自社・合弁で香料プラントを構える、香料の一大産地であることは意外に見落としがちで、国内企業でも曽我香料や長谷川香料が進出しています。
 
「シャムのやさしさ」という、ご本人のオリジンを直球で冠したラ・ドゥスール・ド・シャムは、「うつくしい心を持って生まれてきた香り」という第一印象が終始ぶれることなく香る、甘美なローズドメを中心に、フランジパニやチャンパカフラワーといった南国らしく甘重い花々の良さを十分に活かしたコクのあるアンバーローズで、ベースにはバニラオイルやサンダルウッドに加えチャルードという、タイでは薬用に広く用いられるキョウチクトウ科の木の樹皮から産出するオイルも使用し、まさにピサラさん内のタイ文化が炸裂した盛り込みようですが、タイのローカル香料に詳しくない日本人(や殆どの欧米人)にとって、それは目で追う追加情報のひとつにすぎず、なんの予備知識なしでも充分に美しい香りです。
 
濃度としてはEDPですが持続はむしろ同じフローラル系のメロディ・ド・ラムールを上回り、チュベローズが軸になるメロディ・ド・ラムールと比べ、ウッディノートの底支えがしっかりしているので、ふたつのフローラルを美しい女性に例えたら、華やかで壊れそうな危うさすらあるメロディ・ド・ラムールと比較して、ドゥスール・ド・シャムのほうがより作り手であるピサラさんご自身のイメージに近く、日本に負けじと劣らず高温多湿で雨季も乾期もあり、その激しい気象が心魂に刻まれた、しっとりとした肌のきめと芯の強さを感じます。これまでLPTでご紹介してきた香りの中では、ローズムスクという点で近似値にオーセントを彷彿としますが、クールでソリッドな印象のオーセントよりクリーミーなコクがあり、ふくよかな印象です。ドゥシタの現行5作品の中で、最も日本女性にお似合いなのはドゥスール・ド・シャムに思いますし、日常使いなら私もこれを選びます。
 
閑話休題、非常に個人的な話で恐縮ですが、私は日本で生まれ育ちましたので、国籍とアイデンティティでいうと日本人ですが、日本ブランドや日本人調香師が、日本の伝統文化や古典、要は「和」をコンセプトに作るクリシェ的アプローチは個人的にあまり好きではありません。海外のブランドにしても、日本を題材にして作品を作ると、結局ダルマとか神社とかスカイツリーが、なんかの思想とごっちゃになって出てくるのも、見ていてしんどいというか、日本側もいつまでたっても源氏物語だ、京都だ、禅だワビサビだといっては、現代に生きる日本人にすらもはや身近な存在ではなくディスカバージャパンネタに感じるアイテムを看板にしているのを見ると、もっと作品本位で勝負というか、根源的なアプローチでものづくりができないものか、というより世界が日本のフレグランスに求めるのはジャポニズム位しかないのかな、と思うとやっぱりちょっとしょっぱい想いを抱きます。いやそれよりも、よくある「調香師が旅先で出会った風景」的アプローチも、そこに暮らす地元民にとってはもうどうでもいいものにひっかかった世界観で、きっとどこかずれているんだろうなと思い始めると、こういう穿った視線は暴走するし「香り良ければすべてよし」なのでこの辺にしておきます。そういうわけで、ドゥシタはオーナー調香師のバックグラウンドを最大限に活用していて、私はタイと文化的接点が殆どないので素直にエキゾチックで魅力的なのですが、もしタイのローカルな香水ファンが聞いたらどう思うかは、ちょっと興味があるところです。
 
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ドゥスール・ド・シャム EDP50ml
 
 
Le Sillage Blanc (2017)
 

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光がふたりに降り注ぐ-ほのかな光が、埃の舞う凍てついた空気に道しるべを作る、あなたの愛を読み解くように
                   ーモントリー・ウマヴィジャニ
 
「白い香跡」という胸を洗われるように淡麗な名を持つル・シャージュ・ブランは、ブランド初のメンズフレグランスで、アラミス(1966)やカボシャール(1959、ともにベルナール・シャン作)を更にビタードライにしたような、ダスティなイングリッシュ・レザーノートが際立つクラシカルで端正なグリーンレザーシプレです。アルテミジアやガルバナムなど、ビターグリーンな表情満載で、そこにオークモスやパチュリが畳みかけるように重なり合い、甘さを排除したふくらみが、相手を惑わすような無駄な微笑みは返さない、自制のきいた身持ちの良い男性の姿を投射します。色で言ったらまさに白色、暗明を破る真白な月明かりのような光を眼下に感じます。
 
初出のイッサラやウード・アンフィニのように、カップルでシェアできそうな幅のある香りではなく、もっぱら女人禁制の近寄りがたさが全面に出ており、このダイナミックレンジの狭さが逆に強烈な粋となって印象に残ります。作り手のクラシック・メンズフレグランスへの愛が溢れる、完璧なオマージュと言ってよいでしょう。当LPTメンズ担当のジェントルマンも「これはいい、かっこいいねえ」と大絶賛。汗と脂の季節、適度に体温を奪ってくれるル・シャージュ・ブランの冷涼感は、日本の夏にもお奨めです。
 
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ル・シャージュ・ブラン EDP50ml
 
 

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