La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Parfums Dusita, scents from a paradise

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-古きシャムの言い伝えは、純粋な悦びと満ち足りた心の世界をドゥシタ(楽園)と呼ぶ。
うちなる幸福がすむという、天高く輝かしき依処よ…
 
LPTは基本クラシック香水・モダンクラシック香水にフォーカスしたブログで、新しいブランドや新作をガツガツ情報収集したりいち早く紹介したりはしないのですが、昨年末より何故か特別な理由もなく吸い寄せられるように興味がわき、LPTできちんと取り上げたいと思ったのが、今回ご紹介する新しいパリのブランド、パルファム・ドゥシタ(Parfums Dusita)です。ドゥシタおよびオーナー調香師、ピサラ・ウマヴィジャニへの注目は、ブランドの代表作となったメロディ・ド・ラムールが、アート&オルフェクション・アワード2017(後述)にノミネート、今年5月の本選でアーティザン・アワードを受賞した事で最高潮にたかまり、この春最も欧米のニッチ系香水紹介サイトで話題になるも、ここ日本では海外のドゥシタ取扱店がほとんど日本発送対応しておらず、中々試香のチャンスに恵まれませんでしたが、幸運にもオランダのリアンヌ・ティオ・パルファムが取扱を開始し、同ショップを通じブランドからの資料提供もいただきましたので、現在発売している3つのパルファムと、最近発売されたばかりのEDP2点を一挙ご紹介いたします。
 

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パルファム・ドゥシタのエキストレ(香水)3部作

 

タイ語で「楽園(パラダイス)」を意味するドゥシタは、クラシック香水愛好家でもあるタイ女性オーナー調香師、ピサラ・ウマヴィジャニが、往年の名香に敬意を表し、香りへの愛を形にすべく2015年にスタートした若いメゾンフレグランスブランドですが、まずこのピサラさんがどういう経歴の持ち主か、ざっくりおさらいしてみます。

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オーナー調香師 ピサラ・ウマヴィジャニ 超美麗

 

ピサラさんは仏教哲学詩人の父・モントリー・ウマヴィジャニ(1941-2006)と国立タマサート大学で哲学を教える母・チュータチップ・ウマヴィジャニとの間にタイに生まれ「タイの東大」といわれる名門チュラロンコーン大学に進学、社会人経験を挟みながら社会心理学の修士号を取得後、同大学の交換留学生プログラムに参画。その後「自分の香水ブランドを持ちたい」という夢を実現すべく2011年に渡仏、日本にも分校があるファッション教育機関・エスモードに学び、のちカルティエが1990年に開校したラグジュアリー業界のマーケティングに特化した教育機関・サップ・ド・リュクスを卒業しMBAを取得した2014年には自身のブランド「パルファム・ドゥシタ」のオーナー調香師となり、翌年にはデビュー作、イッサラを発表ー、という順風満帆、天下無敵のアカデミックな経歴を持った方で、ご本人のお姿も本当に上品でお美しく、なんの苦労もなく真綿に包まれてあっという間に成功したように思えますが、本年1月のウェブ版コスモポリタンでは、そんな上品さが吹っ飛ぶような「趣味を仕事に!海外女子」汗かきベソかきサクセスストーリー的紹介をされていて、渡仏はしたけれどブランド立ち上げまで、無給不休でつっぱっして来たから今があるーと、ある意味ブランドとご本人の超然とした美しさに水を差すようなイメージを持ち込まない海外香水サイトのインタビューでは垣間見れない一面に触れ、ちょっとホッとしました。

f:id:Tanu_LPT:20170610225714j:plainそれぞれの香りには 、父モントリー・ウマヴィジャニの詩の一片が添えられている

 
パルファム・ドゥシタの香りを語る前に、押さえておかなければならない点があるとしたら、ピサラさんの亡き父・モントリーさんが魂となってなお創作の原動力となっていることでしょうか。父の遺した詩から今も多くのインスピレーションを浴び続けている彼女にとって、魂の大いなる参謀として君臨していらっしゃるのでしょう。日本では翻訳も出版されていない仏教哲学詩人のモントリーさんですが、タイ国内よりも海外で評価が高く、生前27冊もの英詩を国外で発刊し、欧米では学術機関でも熱心に研究されている高名な詩人のため、はるかなる日本では想像しえない光明が娘のピサラさんの頭上に燦々と注がれているのは勿論、お父上はブランドの共同創業者といっても過言ではありません。
 

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アート&オルフェクション・アワード授賞式でのスピーチ(2017年5月6日)

前出のアート&オルフェクション・アワード授賞式では、受賞したメロディ・ド・ラムールを亡き父に捧げ「父の詩を読むたび、そばにいてくれると感じる。私は、この手で父の詩を香りへと翻訳していくことに生涯を捧げたい」と涙ながらに謝辞していた姿が、謙虚で印象的でした。文学に暗い私としては、香りのコンセプトになっている哲学詩の深いところまで掘り下げてご紹介できる自信はありませんし、香水はなんの予備知識もなく「良い香り」であるのが本懐であり、そうあるべきだと思うので、次回よりあまり背景的な部分には注力せず、シンプルに香りの魅力をお伝えしたいと思います。
 
LPTおすすめの日本発送可能な取扱店 (2017年6月現在):
公式オンラインショップ (パルファム3種取扱、フランスよりコリッシモにて発送)
リアンヌ・ティオ・パルファム (全5種取扱、オランダよりポストNLにて発送)
 
取材協力 Special thanks to:
Lianne Tio Parfums (Rotterdam, NL)