La Parfumerie Tanu

- We are a non-stop Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Mérefame (1979) / Gold Woman, Gold Man (1983) / One Perfect Rose (1990), new & revised reviews

Dedication Festival for Master Perfumer Guy Robert 4 : late 1970's - 1990's

Mérefame / Nippon Menard 1979

f:id:Tanu_LPT:20180828103524j:plain

1970年代最後の作品は、今回のダークホース、日本メナードが創業20周年記念に社運をかけて発売した、戦後昭和の国産香水、メルファムです。現在はオードトワレとパフュームドパウダーの2アイテムになりましたが、3年前まではパルファムもあって、このパルファムのボトル、凄い豪勢ですが、限りなく広がる宇宙空間に存在する太陽、月、そしてそれらにかかる霞や雲を表現しているそうで、このボトルが製造できなくなったので、2015年に販売終了発表となったそうです。それでもしばらくは顧客の要望に応じ、詰め替え用ボトルにて販売していたそうで、いかにメナードがメルファムの源であるパルファムを大切にしていたかがわかりますが、2011年メナードの練馬サロンにメルファムの件で取材に行った時、メナードレディに伺った話では、メナードの大ヒット作である緑映が出るまでは、エステの仕上げにメルファムのパウダーを使っていたそうで、これが時代と共に「古臭い」と評判が悪くなって、ある時仕上げを緑映のパウダーに変えたら、オードトワレ、パウダー、シャワージェルと緑映がフルセットで飛ぶように売れたそうで、諸行無常を感じました。確かに、香りとしては、非常にスケールの大きいフローラルブーケパウダリーで、現代的な透明感というよりは、ちょっとくぐもった、向こうが透けない重厚なグリーンシプレ感が時代を感じさせて、ここが今の人が「古臭い」と一歩引くところかもしれません。

f:id:Tanu_LPT:20180828103714j:plain

ところでメルファムのパルファムには、ロベール師のメッセージ(上)が入っていて、スライドでは字が小さくて見えないので読み上げますが「私が創作しました香水、メルファムは、いままでにない新しい魅力でいっぱいの香りであり、私の作風の中に新風をもたらせた香りです。それは、日本の伝統の中でつちかわれた幽玄や情緒のすばらしいハーモニー。興味深く、私の作品の中でも最高傑作の香りです。」と書いてあります。なんか、自分の作った作品を語るには、ちょっと他人行儀ですよね?ちなみに「私が創作しました…」と書かれていますが、実際にはメナードの調香チームとの共同制作なので、ロベール師のフレンチシックを引目鉤鼻にして、大風呂敷を広げたような感じがしないでもありません。その後、ロベール師の作品に日本の伝統で培われた幽玄や情緒を感じさせる作風の香りは現れなかった事を考えると「依頼主の希望にいかようにも答えるのが名調香師」という手本を見せてくれた作品でもあると思います。

 

Gold woman, Gold man 1983/1998

アムアージュのゴールド、ウーマンとマンのペアフレグランスです。まずはこのオマーンの高級ブランド、アムアージュについて説明します。

1971年にイギリスから独立した絶対君主制国家・オマーン国のブーサイード朝君主、スルタン・カーブース・ビン・サイード、現在も国王47年目続投中ですが、この方凄い親日家で、さきの東日本大震災の際には義捐金を1000万ドル、ざっくり10億円送ってくれました。その太っ腹国王の命をうけ、親族のサリード・ハマド・ビン・ハムード・アル・ブーサイード殿下が国策として1982年創業したのがアムアージュです。当初はオマーンの国策企業でしたが、現在は実質イギリスの会社です。そのサリード殿下の奥方様が、マダム・ロシャスの大ファンで、最初の香りはギィ・ロベール師に白羽の矢が立ったわけです。アムアージュの香りは香料の予算に際限がなく、調香師が心ゆく まで最高の材料を持って作る事が出来るので有名ですが、今でこそ「採算度外視」なんてニッチ系ブランドでは誰でも軽々しく口にする売り文句ですが、1980年代当時の調香師が「採算度外視で好きなものを作って下さい」なんて依頼はまずなかったと思うんですね。それで、名人ですからこの香りも予算がもっとあれば、みたいな予算の限界を何度も体験してきたところに、オマーン特産のシルバーフランキンセンスをはじめ、高価なオリス、ジャスミン、サンダルウッドなどをふんだんに使う事が出来た。そういうわけで、ゴールドについてロベール師は「ゴールドは最高の誉れ」 と語るほど、ご自身も本当に納得のいく作品が出来たわけです。メルファム、残念でした。結果どんな香りが出来たか。たとえて言うなら 「オリジナル版マダム・ロシャスのプレミアム・ヴァージョン」。そんな感じしませんか?だって依頼主がマダムロシャスの大ファンなんだから、その路線で頼みますよね!ただし原料が段違いにプレミアムだと、こうも輝きに満ちた力強いフローラルになるか、めくるめく華やかさと厚みです。ゴールドは、発売当時ただの「アムアージュ」という名前で発売されましたが、その後幾つか新作が出る中「ゴールド」と名前がついて、1998年にはペアフレグランスのゴールド・マンが出来ました。

f:id:Tanu_LPT:20180828103508j:plain

かつては1本1本に箱詰めした方のサインが入っていたが、現在はサイン省略、箱も簡素に。そのかわりキャップが流行のマグネット式になった

ウーマンとマン、ムエットで比べていただきたいのですが、基本形は同じですね。たとえて言うなら「同じ顔をした美しい一卵性双生児の男女が、完全なる女装あるいは男装をしているような、どちらがどちらの香りをまとっても、目を覆いたくなるような美しさ」とでも言いましょうか。同じ顔した物凄い美男美女が、アラブのフォーマルウェア、カンドーラを着ているかアバヤを着ているか、その違いだけですね。後からできたマンの方に、ちょっと爽快なグリーンノートがあってスッキリさせた感じですが、女性が使ってもとても素敵です。思うに、今、クラシック香水が処方変更でどんどん亡骸になってますが、現行品の物足りなさを嘆く方に 是非ともゴールドをお試しいただきたいと思います。メイドインオマーンですが、往年のフランス香水が忘れた「夢」がここにあります。

 

One Perfect Rose / La Prailie 1990 ※ボトル及び試香資料入手できず

f:id:Tanu_LPT:20180828103721j:plain

1980年代の作品は先に紹介したゴールド一点で、次は1990年に、スイスの高級化粧品メーカー、ラ・プレリーの香り、ワン・パーフェクト・ローズを手掛けます。ラ・プレリーといえば、スキンキャビアで有名な高機能ブランドで、池袋には東武百貨店にカウンターがありますが、親会社はニベアと同じドイツのバイアスドルフ社です。ずるって感じですよね。ワン・パーフェクト・ローズはオードパルファムとパルファムの2種作られて、現在廃番で、流通量が少なかったのか、結構なプレミアがついています。30mlのパルファム(写真)が、先ほどのゴールドのオードパルファムの3倍以上しましたので、当然手が出ませんでしたが、写真だけは拾ってきました。香りは、香調を見ると名前の通りローズのソリフロールみたいです。

contact to LPT