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Gardenia / Le Numero Cinq (1925)

Cabaret LPT vol.6 "The Time Travellers 2" に登場した1925年発売の香りで、LPTではまだご紹介していなかった作品をテーマ別にご紹介します。香りの解説というよりは、発売や時代背景的な内容が多くなりますが、キャバレーにご参加になった気分でお読みいただければ幸いです。
 
Chanel and Molyneux, the light and shadow
 
Gardenia (1925)
 
シャネルは沢山文献もありますし、公式サイトでも歴史はひとつのプロモーションアイテムとしてしっかり活用しているので、ここで詳しく説明する必要もないのですが、一応このガーデニアは、シャネルの初代調香師、伝説のエルネスト・ボーが手がけ、シャネルが5番のメガヒットから気焔を吐いていた頃の作品ですね。昭和の時代は普通にシャネルカウンターで買えましたが、現在はレ・ゼクスクルジフ・シリーズの1つとして、シャネルの限定店舗で販売されています。今回お試しいただいているものは、日本で普通に売っていた時代のオードトワレなので、昨年リニューアルしたオードパルファムとは多少香りが違うかもしれません。その辺はシャネルブティックにお出かけになった時にでもご確認ください。今でも人気のある香りです。
 
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ガーデニア EDT 35ml
 
ところでこれ、ガーデニアじゃないですよね?色でいったら「マットなドピンク」を感じる、前歯に口紅でもついていそうなド派手なホワイトフローラルの権化みたいな香りですね。また、クチナシの香りってとても解釈が難しくて、欧米人はチュベローズと混同したり、チュベローズ・ガーデニアという香りまである位だから、本物のクチナシっぽいな~と思うものが凄く少ないし、あっクチナシ!と思っても、その瞬間がとてもはかない。物凄く照準が狭いのか、すぐチュベローズか、ココナッツか、なんか違う生き物になっちゃう。最後まで、ああクチナシ…と堪能できるものに出会ったことが殆どないです。クチナシ自体からも香料は殆ど取れないのと、日本の和のクチナシと、海外のガーデニアは品種も違うので、価値観の違いもあり「ガーデニア」という名前の香水で日本人の私たちが「くちなし」を感じる事がないんだと思います。
 
 
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ムズカシイネ、クチナシ…
 
 
Le Numero Cinq (1925)
 
続いてモリニューのヌメロサンクをご紹介します。
 
1891年、ロンドンの高級住宅街ハムステッドに生まれ、1974年、82歳で亡くなったイギリス人デザイナー、エドワード・モリナックス、フランス語風に発音するとエドゥアール・モリニュー(写真下)が、1919年パリにアトリエをオープンしました。 f:id:Tanu_LPT:20180301202159j:image
この人、第一次世界大戦中はイギリス陸軍に入隊して、ウェリントン公爵の部隊で活躍して、部隊長として片目をなくすほど勇敢に戦ったので、その武勇伝からのちにキャプテン・モリニューと呼ばれるようになったんですが、このブランド初の香りとして1925年に登場したのがこのル・ヌメロ・サンクですね。
 
 
写真のボトルは40-50年前のヴィンテージで、去年買った時は結構いい香りで、肌に乗せても十分いけたんですが、なんか今回キャバレー用に久しぶりに出してきて、ご参加の皆さんに会場で配布するムエットを作成してみたら経年劣化がもろ判りで、かなりカビジュースになってますね、ムエット嘘つかない。でも肌に乗せると出だしはイカれているけど途中から巻き返します。まだまだいい香りなんですよ。

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何で今回ヌメロサンクを「光と影」としてシャネルとセットでご紹介したかというと、ヌメロサンクとはフランス語で「5番」を意味しますが、発売に関して有名な逸話があって、シャネルとモリニューが協議の末、同じ5月5日に同じ「5番」という意の香りを、シャネルは数字で、モリニューは綴りで発売する予定を、何らかの理由でモリニュー側の発売が出遅れ、4年後には後の祭りですよ。どう転んでも「5番のパクリ」と謳われ、遂には協議したはずのシャネル側から同一名称使用で訴えられ、発売から2年後の1927年より、フランス国内では「ル・パルファム・コニュ(有名な香り)」と改名を余儀なくされてしまいます。
 
シャネルひどいですね~。そういうシャネルも5番を発売する時に、ユダヤ商人のヴァルタイマー兄弟から資金提供してもらう代わりにシャネル10%、ヴァルタイマー90%という利益配分で契約した後、5番が爆発的に売れたけど、売っても売っても儲からないから再三契約の見直しをお願いしては断られていて、どっかに因縁つけたかったんだと思います。この1対9という利益配分もびっくりですが、2018年の今この瞬間においても、シャネルの親会社は未だにそのヴァルタイマーですから、どっちにしろ諸行無常です。
 
香りとしては、5番とは方向性の違うフローラルシプレで、トップのドライなベルガモットに始まり、アイリスやカーネーションのどっしりとしたフローラルがオークモスの底支えに拡がり、ラブダナムやアンバーの甘く深いドライダウンが肌を包む、切れ長の瞳で微笑みを返すような、どこか東方のエキゾチズムすら感じる香りです。って、買った時はその位いい香りだったんですよ!嘘じゃないです。ムエットの嘘つき!
f:id:Tanu_LPT:20180301202317j:image モリニューはフランス国外の欧米諸国でもパフューマリーとして成功し、ル・ヌメロ・サンクは戦前~戦後と長らく売り繋がれていきますが、残念ながら1970年代初めに廃番となりました。モリニュー自体はグループ・ベルドゥというフランスの老舗トイレタリー会社のいちブランドとして、超アフォーダブル系ではありますが現存していて、去年戦後のヒット作、ヴィーヴのリニューアル版が出たものの、新作なのに100mlで2,000円とか、クオリティは推して知るべしというか、亡骸を嗅ぐ気分になりそうなので近づかないほうが夢が壊れないでいいと思います。
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