La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Grossmith London, the Greatest revival ever : day 1

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Prologue - a letter from London via Rotterdam
-なぜ今グロスミスなのか:Why LPT features Grossmith London now in 2017
私は、ブログ開始よりグロスミスとその香りを、当LPTブログ上およびリアルイベント「キャバレーLPT」、そして香水専門誌パルファム(連載「忘れられない香り」)にて折々紹介してまいりました。グロスミスは1835年ロンドンで創業し、ビクトリア朝時代から戦前まで栄華を極めた、当時のイギリスを代表する香水会社で、1980年代に休眠会社となり権利関係が隠滅するも、約30年後の2009年、創業者の末裔であるブルック家の手により復興した、昨今の「復刻系ブランド」の先駆け的存在です。昭和の時代から香水を愛するクラシック香水ファンの私にとって、消えた名香が往時の姿を現生にあらわすという事象は、計り知れない魅力があり、またその蘇った香りも、その後追随する復刻系ブランドとは一線を画し、今後もここまで心血を注いだ復刻はありえないだろうと思われるほどの素晴らしさがあり、とくにイギリスでは2009年の復興から数年はファッション誌や香水コミュニティだけでなく、一般の新聞やビジネス誌でさえも頻繁に復興グロスミスとそのビジネスモデルを紹介していましたので、お伽噺のように夢のある復興ストーリーを憧れの眼差しで見つめていた私にとって、グロスミスは常に別格の存在でした。ただ、復興後初の新ライン、ブラック・レーベルを2012年にリリースしてからのグロスミスは、店舗限定の香り(フォートナムアンドメイソン(英)限定シルヴァン・ソング、パリ・ギャラリー(カタール)限定パリ・レザー、パリ・ローズ)を3つ発表しただけで、公式ウェブサイトを見ても特段の新展開もなく、LPTとしてもグロスミスを単独で大きくフィーチャーする機会を逸していました。

 (写真左)グロスミス・ロンドンを復興させたブルック家 上左よりサイモンさん、ご長女エレナーさん、奥様のアマンダさん、ご次女ケイトさん 今回来日したのは右上のエレナーさん。お嬢さんお二人とも大変聡明そう

そんな2017年のある春の日、LPTではいつもお世話になっているロッテルダムの香水店、リアンヌ・ティオ・パルファムのオーナー、リアンヌさんより一通のメールが転送されてきました。「こんなメールがきたけど、あとは任すわね」と短く締めくくられていた本文から転送されてきたのは、なんとグロスミスの現社長、サイモン・ブルック氏のメールで「…(中略)日本でどうしても取引をしたい香水店があるんだが、リアンヌさん、君はなんでラ・パルフュムリ・タヌと付き合いがあるんだね?日本で販売している(当時)同業の仲間が、イセタンに話をつけようかと言ってくれたんだが、うちはLPTさんと商売がしたいので、その話は断ったんだ。ひとつLPTと繋いでもらえないだろうか」と、天地がひっくり返るような内容でした。
 
 
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「2009年最大の話題」と世間が沸いたあの会社が、なぜうちに?
まずは、ブルック社長の誤解を早急に解かなければなりません。一番気になったのは、すでにフォルテを国内総代理店として日本上陸した(現在は取扱終了)イギリスの某ブランドから伊勢丹への顔つなぎ話があったにも関わらず、うちのせいで断ってしまったという、何とも勿体ない話が文中綴られていたことで、LPTはただの香水ブログで実店舗としての香水店ではないこと、グロスミスは復興時からのファンだったので、興味を持っていただいたことは非常に光栄だが、とにかく伊勢丹の話は早急に蒸し返していただいて、LPTとしては後方支援しかできないが、2017年の今、これまで断片的に紹介してきたグロスミスを総括的に紹介させていただきたい…という内容で、急いでブルック社長へ連絡を取りました。
 

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バカラコレクション。ボックスは鍵付き!開けると(左)、閉めると(右)こんな感じ

 

その後、LPT実店舗説の誤解は解けましたが「ちょうどうちの娘がそちらの連休中に日本へ行くんだ。グロスミスのサンプルと資料を持たせるので、娘が東京に寄った際、会ってやってもらえないか」という、予想外のセカンドステージに突入してしまいました。来日したのはグロスミスのブラック・レーベルのボトルデザインも手掛けた、本業は建築デザイン会社にお勤めのご長女、エレナーさん(28)。エジンバラ大学院建築学部を首席で卒業後、いくつかのビジネス・インターンを経て2012年から本格的にグロスミス•ロンドンの一員になった方です。プライベートな旅行のついでとはいえ、都内の高級商業エリアをしっかり視察しながらロンドンへ帰国する直前に銀座でお会いしました。
エレナーさんは写真の通り、生真面目で非常に身持ちのよさそうな、最近の若い女性としては華美なところが全くない清楚なお嬢さんでしたが、さすがはイギリス人、会話の端々に絶妙なブラックジョークが挟まる楽しい方で、同じイギリスのハイエンドなブランドの話になった時、クライヴ・クリスチャンのクライヴ&ヴィクトリア・クリスチャン親子について「クライヴ・クリスチャンもグロスミスも同じ家族経営といえば同じですけど、あそこは超ド金持ちですよね…派手だし…うちは至って普通の家族です」といって、ヴィクトリア・クリスチャンが製品プレゼンテーションで必ずやる、香水を空中に吹いて、でっかいセンスでわっさわっさあおいで広げる真似をしてくれました。話は相次ぐメゾンフレグランスブランドの買収話に至り、ちょうどメゾン・フランシス・クルジャンのLVMH買収が話題に出たので「グロスミスには大手からの買収話は来ていないんですか」と尋ねたところ、それまで朗らかに話していたエレナーさんが急に真顔になって「そんな話はありません。グロスミスは、いずれ私と妹のケイトが両親から継いでいきます。どこへも売る気はありません」と毅然とした表情で応えてくれたのを見て、この家族は生半可な気持ちで先祖の会社を復興させたのではなく「さだめ」に近いものを背負っているのが伝わってきた気がしました。全部で数キロはあるであろう全9種のサンプルアトマイザーと美麗なブックレット、何十枚ものポストカードを収めた箱を手ずから受取り、LPTブログでグロスミスの歴史的背景総括と全点踏破特集をさせていただく固い約束を交わして別れました。

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クラシック・コレクションのオリジナル版。色彩豊かでエキゾチック

次は、なぜ21世紀の現代にヴィクトリア朝の香水会社・グロスミスが蘇ったのか、そのきっかけになった時代背景およびグロスミス社の栄枯盛衰を時代別にご紹介いたします。
 
註)話の流れで、オリジナルのグロスミスと現在の復興グロスミスが紛らわしい場合のみ、オリジナルを「グロスミス社」、復興グロスミスを「グロスミス・ロンドン」と表記させていただきます。