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Lyric Man (2008) / Cuir Cannage (2014) / B683 (2016) | AGTP6 : Gentleman's Thumbs-up & down

【ジェントルマン低評価】Gentleman's Thumbs-down

 

Lyric Man EDP / Amouage (2008) 

 

今年の8月、夏のバラ色ジェントルマンで登場したアムアージュのリリックマンです。当然ボトルは高いので、メーカーサンプルを買ってレビューしてもらったんですが、本人から漂ってくる香りがあまりに良くて、私の方が気に入って、結局フルボトルを購入したのですが、ジェントルマンには非常に低評価でした。理由は「経時変化が激しく、いろいろ高級で複雑な香りがして、どれも好きじゃない。ロケンローラーな人に間違えて現代音楽聞かせたみたい」との事。厳しいですね!メンズのローズでいいものを探したつもりだったんですが。香りって、私のようなクラシック香水ファンの場合「複雑でトップからラストへの起承転結がしっかり楽しめるのが良く出来た香水」と思いがちですが、世の中そういう作りの香りって確かに減っているし、またこの高級感が疲れるというのは、私が会社の接待など、たまに普段食べ慣れない上等なものを外食すると必ずお腹を壊すのに通じるものがあり、気持ちはよくわかります。

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ムエットだとアロマティックなウッディグリーンローズに感じると思いますが、肌に載せると非常にクリーミーなローズに展開するので、メンズですが男女問わず使えますし、むしろ女性にお似合いだと思いますね。ちなみにこれのペアフレグランスのリリックウーマンは、リリックマンより重厚なウッディスパイシーローズで、リリックウーマンの方がどすが効いています

 

Cuir Cannage EDP / Maison Christian Dior (2014) ポラロイドに映ったのは:SPKの「Metal Dance」のジャケット

 

次はメゾンクリスチャンディオールのキュイール・カナージュです。こちらもジェントルマンと私の評価が大きく割れました。調香は、専属調香師のフランソワ・デュマシーです。メゾンクリスチャンディオール、日本でも大人気で毎シーズンごとにバンバン新作も出ますね。ただし、エリアによってアジア向け、欧米向け、中東向けとがっつりマーケティングをしているので、日本は薄くて軽いフローラル系が集中していて、フルボディのものはすぐに販売終了してしまいます。このキュイール・カナージュも今年の春、ヨーロッパでも終売して、現在は中東でしか売ってません。また今年の秋はオリエンタルグルマン系のフェヴ・デリスィオーズが終売して、やはり中東専売になりました。日本での展開は全21種、そのうち実に15種類がライト系かフローラル系に集中しています。ローズジプシー、ローズカブキ、サクラ…バラバラ、花花!そんなんばっかりですね。ディオールといえば、親会社のLVMHがジャン・パトウを買収して「ジョイ」の名称使用権をディオールに委譲して、約20年ぶりのオリジナル新作レディス香水としてジョイを世界発売しましたが、この「20年」てどこから20年かと数えたら、ジャドールが1999年発売で、そこから約20年だって言いたいのかな。ディオールのレギュラーラインって、確かに無数のドジョウと限定品やなんとかコレクション、また過去のアーカイブの復刻シリーズ、そしてこのメゾンクリスチャンディオールみたいな販路限定品が多いですが、2002年のディオール・アディクトがなかったことになっています。ディオール・アディクトはドジョウも沢山生まれた21世紀の大ヒット作ですが、まあ、調香がティエリー・ワッサーだからかな?

 

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キュイール・カナージュは、初めて嗅いだとき、物凄い驚いたんですよ。メゾンクリスチャンディオールのラインって、全く興味がなくてノーマークだったので、こんな戦前のヴァイブを感じるカッコいいフローラルレザーを作っていたとは、目から鱗で嬉しくなりました。奇をてらった要素は何もなくて、フローラルの部分はローズ、ジャスミン、イランイラン、アイリスで超どフランスな王道フローラルで、そこにバーチタール系のレザーと甘いタバコノートが重なっていて、丁寧に嗅ぐと香りの解像度とか、透明感は全く今時の香りなんですよ。リリックマンみたいな香りの展開もないしね。でも全体に醸し出すオーラが、きちんとクラシック香水の王道を踏襲していて、ヴィンテージ探してカビジュースで玉砕するより、少しずつこういう新作に出会えれば、慢性的な欲求不満も解消されそうですね。でもまあ、もう日本じゃ買えないですけど。

 

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基本的にジェントルマンは端麗辛口な香りが好きで、アンテウスのような一部の例外を除いて、濃厚な香りやベースの甘い香りが苦手です。苦手な香りの要素として、レザー系の香り自体は大丈夫なんですが、レザーノートに甘さが加わると辛いみたいで、その上レザー、イコールボンデージみたいな紐付が頭の中で出来上がっているのか、こんなに品の良いキュイール・カナージュで映ったのがこの(80年代インダストリアルノイズ系バンド、SPKの「Metal Dance」)アルバムジャケットというのも、そりゃないぜという感じですね。

 

【ジェントルマン高評価】Gentleman's Thumbs-up

 

B683 EDP / Marc-Antoine Barrois (2016) 

はい、それでは今回最後にご紹介するのは、ジェントルマンから高評価を勝ち得た、フランスのクチュリエ、マルク=アントワーヌ・バロワ初のメンズ・フレグランス、B683です。受付でお配りしたサンプルアトマイザーにも入っています。今回のキャバレーのためにメーカー協賛をいただきました。ブランドオーナーのマルク=アントワーヌ・バロワさんは現在35歳、アクセサリーやジュエリーも手掛けるメンズ専門のクチュリエで、ご本人の趣味と実益を兼ねて、メンズ以外は作らないそうです。フレグランスも対面販売を基本としていて、公式サイトでの販売はありませんが、このところニューヨークを中心に欧米での販路拡大が目覚ましく、高級デパート、バーグドルフグッドマンや、メゾンフレグランスストアのツイステッドリリーなど、着実に販売拠点を増やしています。昨年LPTでも紹介しましたが、このB683は、バロワさんと同い年の調香師で、次回のジェントルマンコーナーに登場するヴァン・クリーフ&アーペルのコレクシオン・エクストラオーディネーのアンブル・アンぺリアルなどを手掛けた若手実力派、ジボダンのクェンティン・ビッシュが担当することになり、意気投合した二人は、バロワさんがこよなく愛するサン=テグジュペリの星の王子さまの生まれ故郷、小惑星B612にちなみ、バロワさんの生まれ年である1983年6月からB683と命名し共同制作しました。見てくださいこの写真。いい写真ですね。

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「出来たわ!」「すてきよ!」

「出来たわ!」「すてきよ!!」「B683は僕の架空の小惑星です」と処女作の出来栄えには大変ご満悦のもようです。右がバロワさんで左がビッシュさんですね。ジェントルマンも昨年のレビュー時「これは良くできてるな!」と声に出していました。全く出過ぎたところのない、まじめで上品なスモーキーウッディレザーで、ミドル以降、心地よいムスクとラブダナムの甘さが肌の上にしっとりと残ります。

さて先日大阪と東京の二都市でLPTのファンミーティングを開催した際、ご参加のLPT読者に先行でB683の協賛サンプルをお渡しして、後日レビューをお願いしたんですよ。男女問わず好評で、特にミドル以降がいい、と満場一致でした。女性からも「パートナーからふっと香ったり、彼の残り香をいとおしく思う香り」と、バロワさんが聞いたらさぞ喜ぶだろうな、という高評価でしたが、その中でも非常に興味深い、時系列の実装部位と経時変化を記録した実装報告をいただきました。

1日目)手首:これはメンズ?嫌いではない。まだ、香りの骨格がつかめない。

2日目)おへそ下:つける部位によって香り立ちが全く変わることを実感!いつもおへそ横のウエストが定番でしたが、おへそ下の香り立ちの美しいこと…

      

3日目)サンタルウッドローションをベースに…メンズフレグランスが女性の香りになる隠し技です。甘さがでます。いい感じでした。まろやかに女性の香りになりました。


4日目)耳の後ろ:鼻が慣れてしまったので、よりダイレクトに香る部位に。アンバーの美しい香りをしっかり感じ取れました。

5日目)ムエット:冷静に香りを嗅ぐとどんな感じか実験。やはりアンバーの香りの美しさを感じました。

私的な香りの連想ゲーム:付けた瞬間ではグレのカボシャール、パロマピカソ、ゲランのサンタルロワイヤル。最後のほうでは
アザロのクローム(オリジナル)が思い浮かびました。

映像:仕立てのよい濃紺の三つ揃いのスーツを着た30代後半の細身の男性。エレガント、内に秘めた情熱…季節は晩秋、時間は午後8時。そんなシチュエーションが浮かびました。

実装して聴きたくなった音楽:Bill EvansのWaltz for Debby。

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このレポートは凄いですよ。これだけ立体的なレビューは、LPTでも行ったことがありません。5日間もじっくり向き合ってくださった上に、なんといっても注目は3日目の「メンズフレグランスが女性の香りになる隠し技」ですね!この方、大阪のファンミーティングにご参加くださった女性ですが、この実装報告を送っていただいた後に東京のファンミがあり、東京でも「一体そのサンダルウッドローションとは?!」と場内騒然となりまして、皆さんのために教えていただきました!はいこれ、モルトンブラウン ココ&サンダルウッド ボディーローションだそうで、日本でも入手可能です。300ml、使い出がありますね!女性の皆さん、もしこれからメンズの香りを手にして、自分にはちょっと無理…という時は、このローションでまろやかに女性の香りにしてくださいね!では、実装報告をしてくれた読者の方と、ご協賛いただきましたマルク=アントワーヌ・バロワさんに、盛大な拍手をお願いします!


香りのご紹介は以上でございます。今回も長い時間お聞きくださいまして、ありがとうございました。

 

- English translation -

B683 EDP / Marc-Antoine Barrois (2016)

We would like to introduce B683 by Marc-Antoine Barrois. This is his first fragrance launched in 2016. B683 has got a high reputation from our Gentleman and we gave you the sample kindly offered by Marc-Antoine himself.  Marc-Antoine, 35, is a French couturier who specialized 'Gentleman's only' couture which also handles accessories and jewellery. He basically prefers to sell his fragrance face-to-face to customers, therefore there is no sale on the official website, but recently sales routes in Europe and the United States centering on New York have been remarkable, steady sales such as luxury department stores, Burgdorf Goodman, Twisted Lily the haute parfumerie (They ship to Japan) etc. I think you might remeber my review of B683 at LPT blog last Autumn, and the nose behind B 683 is Quentin Bisch from Givaudan who also composed Ambre Imperial by Van Cleef & Arpels which we are going to  introduce at the upcoming AGTP published in early December. Quentin is a talented young perfumer I must say and you will find his name more and more in the nearest future. Coincidently Marc-Antoine and Quentin are the same age and they got along very much when they began B683 project together. The name 'B683' is derived from an asteroid B612 appeared at 'Le Petit Prince' by Antoine de Saint-Exupéry which Marc-Antoine loves. Then he named his first fragrance B683 as he was born in June 1983. Marc-Antoine described B683 as 'my imaginary asteroid'. 
 
Please have a look at this picture (the one Marc-Antoine and Quentin appear). You love it, don't you ?
I can hear thier voice like 'Done !' 'Oh, Great !' Actually Marc-Antoine said he is absolutely satisfied with his first fragrance.
 
Our Gentleman also gave his two thumbs-up to B683 at his review last year - elegant and sophisticated smoky woody leather that never be assertive, and when going to the drydown, sweetness of musk and labdanum remains on the skin very comfortably.
 
Meanwhile, LPT hosted our fan meeting 'Meet LPT' in Osaka and Tokyo this Autumn. I handed out a B683 samples for participants and asked them to review it later. As promised B683 got very positive feedbacks both from ladies and gentlemen - one lady said "I would be melting If I could smell such an irresistible scent this from my beloved partner or his clothes while he's not there". I am sure Marc-Antoine must be happy when he knows that ! 
 
I would like to introduce the most inspiring review among the feedbacks from LPT readers to you - She reviewed B683 in chronological order. Listen carefully :
 
day 1) where to wear : Wrist 
Is this for men? I don't dislike it. I need to take my time to grasp the olfactory structure...
 
day 2) where to wear : Chakra (Tanden area below the navel
I realize B683 change the expression drastically when I change where to wear ! Usually I wear perfumes on both sides of my waist & never worn on my Chakra point, but I was so surprised how beautiful the scent wafts from my Chakra...
 
day 3) I apply sandalwood boldy lotion no my skin prior to B683... It is a 'hidden trick' that mascurine fragrance transforms a scent of woman. It turns soft & sweet nicely, feeling so good. It mellowily became a scent of women.
 
day 4) where to wear : behind the ear
Since the nose has got used to the scent, I choose a new part where I can smell it more directly. I could feel the beautiful aroma of amber firmly.
 
day 5) from blotter :
I think I need to catch the scent a bit objectively, so I sniff B683 from a scented blotter. After all I felt the beautiful amber again.
 
Personal 'olfactory' association game : 
B683 reminds me of Cabochard by Gres, Paloma Picasso by Paloma Picasso, Santal Royal by Guerlain, then Chrome by Azzaro (original version).
 
Impressions :
A slender man in his late thirties wearing a well tailored three-piece suit in dark blue. Elegant, hiding his passion inside
 
Season & time : 
Late Autumn, 8 pm
 
Music I happened to feel like after wearing B683 : 
Waltz for Debby by Bill Evans
 
This report is amazing I must say. Such a  comprehensive review has never been done with LPT. Five days in-depth report ! The most sensational line is definitely day 3, "a hidden trick to transform a mascurine fragrance to a scent of woman", isn't it ?! This was from a female reader who participated in Meet LPT in Osaka, and I talked about this report to guests in Tokyo. Everybody was incredibly curious to know what was on earth the 'sandalwood body lotion' ! You are dying to know that, aren't you ?? She specially told me what it was ! Yes Yes, it is Molton Brown Coco & Sandalwood Body Lotion, you can get the 300ml bottle in Japan. So, Ladies, now you don't have to feel disappointed anymore if you got some men's fragrance which might be a bit hard to wear, it will all be yours with this Sandalwood body lotion ! Well, please give a great applause to the reader who gave us the great report and Monsieur Marc-Antoine Barrois who generously offer us the samples !
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