La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


Oud Black Vanilla Absolute (2015)

 
立ち上がり:名前通り。強烈なバニラの香り、微かにお酒っぽい感じも。こりゃあ日本人で合う人少なそう。
昼:つけはじめはかなり強烈な印象でしたが昼過ぎには大分落ち着いてきました。香りの感じは変わらないです。
15時位:基調の甘いバニラ香は変わらないんですが背景にアンバー系の感じが出てきたような
夕方:かなり薄くなりました。大まかな印象は最後まで変わりませんがつけてから数時間以降は大分飼いならせそうな感じになってます。最初は「こんなの無理!」という感じですが。 
ポラロイドに映ったのは:薄口のグレースジョーンズ
 
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ウード・ブラック・バニラ・アブソリュート EDP 100ml
 
Tanu's Tip : 
 
1978年にアメリカで創業したファッション・ブランド、ペリー・エリスは、創業から10年も経たない1986年にペリー・エリス本人が急死してしまい、その後はマーク・ジェイコブスやトム・フォードがデザイナーを歴任し、現在もカジュアルからフォーマルまで守備範囲の広いメンズファッションブランドとして健在ですが、フレグランスもエリスが逝去する前年の1985年から発売、トレンド感を重視したアフォーダブル香水を出しています。今回ご紹介するオード・ブラック・バニラ・アブソリュートは、2015年に登場したペリー・エリスとしてはラグジュアリーラインにあたるウード・コレクションのひとつで、他にサフラン・ローズ・アブソリュートとベチバー・ロワイヤル・アブソリュート、計3種ラインナップしています。ウードの流行がニッチ市場やプレステージブランドだけでなく、こんなアフォーダブル系ブランドにまですみずみ浸透し、ウードがお茶の間の市民権を得た≒飽和状態になっている事を教えてくれます。
 
日本ではフレグランスブランドとしては全くノーマークなペリー・エリスですが、なぜこの香りを知ったかというと、昨秋渡英した際ブリティッシュ・エアウェイズを利用したのですが、成田→ヒースロー直行便の機内で、外資系航空会社らしく英国採用の方も多く搭乗しているのか、客室乗務員さんの人種がダイバーシティを重視しており、日系航空会社ではほぼお目にかからないアフリカン・ブラックのCAさんもいらっしゃいました。制服はしゃがむとパンツが見えそうで危機一髪なムチムチパンパン、白い出っ歯がチャーミングなブラックビューティのそのCAさん、飲み物サービスから機内販売までなんでもこなしますが、とにかくアクションが派手、いや超ド派手。食事前のドリンクサービス時「お飲み物は?」「ワインあるわよ」「アルコール何でもあるわよ」とホットにお声かけ。ジントニックをオーダーした乗客には、ジンの小瓶に何か硬いものを当ててカンカンカーン!!と小気味よいスナップ音を立ててピシ!と差し出し「どぉ~ぞ♡」、私にも「なぁ~にか飲むぅ~??」と聞いてくれたので「あ、お酒飲めないんです…」と答えるや「あらぁ!それはあーた、命拾いしたわねぇん♡私なんか結構お酒で失敗してるのよぉ~ん」その後、通路のあちこちでカンカンカーン!カンカンカーン!!という金属音が響いていました。ちなみに復路ではこの金属音は一切しなかったため、このCAさんのスペシャルサービスだと判りました。お客が1言うと3か4は必ず返してくれる、場合によっては5分10分平気で立ち話に花が咲く、しかも相当声が大きい激アツなCAさんは、3メートル以上近づくと気配が判るほど、ふんふんとバニラの香りを漂わせていました。それもフーディじゃない、複雑でダークなバニラが猛烈似合っていたので、ついに溜まらなくなって「あの、今つけている香りはなんですか?」と尋ねてしまいました。すると、元々キラキラした眼を光量5割増で「ペリー・エリスのウード・バニラよ!どこでも売ってるからロンドン着いたら探してみて!私も気に入ってるのよ~嬉しいわあん♡」と、間髪入れず教えてくれました。これだけ密室でふんだんに香らせても運航規定上NGじゃない空間て幸せだなあ、なんて大らかなんだろう。色々な知らない良い匂いがして、そこで新たないい香りに出会える。これは国全体が匂いに対してヒステリー状態な日本では決して叶わない、海外渡航の醍醐味のひとつかもしれません。

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ウード・バニラ…ペリー・エリス…ブランド名を無事覚えていた事と、本当はもっと長い名前だったけれどとりあえず肝心の「ウード」と「バニラ」をCAさんが外していなかった事で、ホテルに着いた後ネットで検索したらすぐヒットしたのでその場でオンライン注文しました。しかもアメリカのディスカウンターサイトで。結構ニッチな感じに香っていたのが、ディスカウンターでは100mlで40米ドルもせず、50mlなら30ドル、100mlなら40-50米ドル…改めて日常使いの価格帯ってこの位だよな、と納得しました。
 
さてこの流行り物全部盛りみたいな名前のウード・ブラック・バニラ・アブソリュートですが、なんとゲランのエクスクルーシブフレグランス、ラール・エ・ラ・マティエールシリーズの中でも人気のドゥーブル・ヴァニーユ(Spiritueuse Double Vanille,2007)のインスパイア系アフォーダブル品としてかなりの高評価で話題になった作品であるのは、この記事を書く際に知りました。
ドゥーブル・ヴァニーユは店頭でちょっと試した事がある位で詳細に違いをご紹介できませんが、片や75mlで32,000円(税抜)、片や同じEDPで100ml、海外通販で送料込4,500円足らずと1桁違う価格帯に、ゆきずりのヒャッハーCAさんに教えてもらったドゥーブル・ヴァニーユのジェネリック品は、立ち上がりこそオーブンから出てきたばかりのバニラクッキー、ラムレーズン入り?!バニラ好きのアメリカ人なら幸福感で悶死しそうな、猛烈フーディなバニラで幕があけ、いったいどこがウードなの?とこれもまた名前負けか…と肩を落としそうになるも、その肩がじわじわ上がってくるような、ウー度は名前程じゃないし、これまたアブソリュートって単語はやめときなさい!だけれど、何かしらよさげな材木がダークな表情を見せ、ウードブラック・バニラアブソリュートに落ち着き、厚みがあり、しかもケミカルじゃないフェイドアウトの仕方がこの価格帯にしては上出来だと思います。この「大人のほろにがバニラプリン(洋酒使用)」のようなウードブラック・バニラアブソリュートをジェントルマンが一通りつけてもCAさんのようにはふんふん香らなかった事を振り返ると、彼女は相当盛大にプッシュして搭乗し、しかもそれは既にミドルノートをかなり越していたと判りました。バニラ好きな香水ファンの方に試してもらったところ、バニラの雲に抱かれているみたいで心地よい…と手放しに喜んでいましたので、子供っぽくないバニラを、あわよくばエクスクルーシブライン級のクオリティで、アフォーダブルに探している方にはお奨めです。ヒャッハー!

Slave to the Rhythm

しかしながらポラロイドに映ったのはグレース・ジョーンズ。「薄口の」という但し書きがありますが、グレース・ジョーンズの薄いのって、テレビで司会者に暴力を振るわないグレイス・ジョーンズとか、移動中の機内で客室乗務員に暴行を働かないグレイス・ジョーンズって事でしょうか。その辺はぜひこの香りをお試しいただいてご自分のポラロイドで映してみてください。私なら絶対、あのヒャッハーCAさんしか映りませんが。
 
ウー度 ★★☆☆☆
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