La Parfumerie Tanu

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Rose Gold (2016)

A Gentleman takes Polaroids chapter nineteen : Oriental Gentleman
 
立ち上がり:かなり濃い白檀系の甘い香りの中に柑橘系の爽やかさが絶妙な感じでミックスされてます。こりゃあ高そうな香りだ。つけてる人間が安っぽいとキツイぞ。
 
昼:持続性高し。香りのニュアンスはあまり変わらない。
 
15時位:甘い感じが強くなってきましたが嫌な感じでは全くない。こりゃあ良いねえ
 
夕方:消えません まだいい感じで香ってます。ちょっとオリエンタルな感じの残り香。こりゃあ高いぞ・・
 
ポラロイドに映ったのは:好青年で嫌な感じはしないんだが横に並ぶと自分の卑小さが嫌になってくるタイプの厄介な人。厄介の原因がその人ではなく自分なだけにますます落ち込む。
 
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ローズゴールド パルファム 120ml

 

Tanu's tip :
 
2002年にロンドンで開業し、昨年15周年を迎え、イギリスのラグジュアリー・フレグランスを代表するブランドの一つとなったオーモンド・ジェイン。どの香りもブランドの顔ともいうべきフルーティなジャスミンが必ずどこかに顔を出す「OJトーン」が魅力的な高品質の香り作りに加え、購入者にとっては嬉しい適正価格も高評価でしたが、昨今のメゾンフレグランスブームに乗り遅れまじと、2012年から高級ライン「フォーコーナーズ」、そしてさらには今回ご紹介するローズゴールドを含むプレミアムライン「ゴールドシリーズ」と、しっかり3段階の松竹梅展開を導入、そしてハロッズ・フォートナムズ・セルフリッジといった、現在イギリスでもっともフレグランスに注力している3傑デパート限定もバカスカ投入するなど、ものごとをビジネス中心に考えた時、同じロンドン出身のブランドで、オーモンド・ジェインの前後に開業したクライヴ・クリスチャン(1999~)やロジャ・ダヴ(2007~)が1ケタ違う商売で成功し、価格をうなぎ上りで吊り上げているのを目の当たりにして、そういつまでも指をくわえて見ていられなくなった、というのが人情ではないでしょうか。特にオーモンド・ジェインとクライヴ・クリスチャンは殆どの作品を同じ調香師、ゲザ・ショーンが手がけているので猶更だと思いますが、3年前あたりから高級ラインや限定品の勢いが上がりすぎ、長年のファンから反感を買ったのか、最近では「梅コース」にあたるレギュラーラインにもVanille d'Iris(2015), Ambre Royal(2016)などぽつぽつ新作が加わっています。
 
さてこのローズゴールドですが、元々は2016年5月、ハロッズ限定でパルファム1濃度、120ml£345(≒50,000円)で発売されたもので、現在では販路限定ながら各国のオーモンド・ジェイン取扱店でも広く販売されるようになりましたが、何故か公式サイトでの取り扱いはありません*。ただ公式サイトでは時折プロモーションを兼ねてゲリラ販売されており、私が所有しているのは2016年のリオオリンピックでイギリス選手団の金メダル獲得を祝し、ゴールドに引っ掛けて1日だけ販売された8mlのトラベルサイズで、なんと送料込£34、当時のレート換算で4,500円もせずに購入できたのは嬉しかったですが、さすがはプロモーション。なんとEDP濃度に薄めたものが届きました。

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オーモンド・ジェインは自社製造・自社ボトリングが信条で、同じ香りで濃度を自由にカスタマイズできるメイド・トゥ・メジャー(最大賦香率50%まで)が売りなので、濃度によって処方を買えるのではなく濃縮ジュース原液感覚でその場で濃くも薄くもできるため、こういった非売品の濃度でプロモーションもコストを下げて易々とできるのですが、プロモーション品で気に入って、現品を買ったら「あれっ?」て事にならないんでしょうか。現品買ったら薄かった、ではマニアは炎上ですが、現品買ったら濃かった♡で丸く収まるのか、そのプロモーションはちょっと微妙な気がします。

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ローズゴールドEDP (2016年リオ五輪金メダル獲得記念仕様 プロモーション品)
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外箱&製品名なし、濃度/容量のみ記載の汎用アトマイザーで来ました 製品名くらいは欲しいね

 

香りとしては、オーモンド・ジェインの初期代表作の一つであるタイーフでも用いられた、酸味とコクが両立したサウジアラビア特産のタイフローズを主軸にしたウッディローズで、立ち上がりに香るライムやベルガモットなどのビターな柑橘類と、ひと嗅ぎでオーモンド・ジェイン作品だとわかるOJトーン、すなわちジューシィでフルーティなジャスミンが、ハーバルなクラリセージやスパイシーなカーネーションやペッパーと共に併走しながら、硬く締まったバラの蕾が徐々に開き、やがて大輪の薔薇へと昇華する展開が、甘露ながらストイックな印象を与えます。ムエットで嗅ぐと薔薇の中に顔を埋めているようにナチュラルなローズが前面に出ますが、ジェントルマンが肌に載せるとサンダルウッドがしっかり主張して、その後ろに控えめなウードを感じるウッディオリエンタルとなり、私がつけるとあまりオリエンタルな雰囲気にはならず、シンプルでちょっとスクエアなパチュリローズのようにも感じ、ジェントルマン、私、ムエットでは三者三葉、全く印象が違いました。男性にも女性にも胸を張ってお奨めのローズゴールドですが、ただ一つ、つける人や気候、体温によって相当印象が変わるので、肌に何度か載せてみないと相性のわからない、少々難儀な香りともいえましょう。ゴールドシリーズはウードが用いられているのがウリですが、ローズゴールドの場合ウードは記憶に残るエキストラか脇役として主役級の俳優を贅沢に起用した、といった立ち位置で、元来ヘヴィなものはあまり出してこないオーモンド・ジェインらしいバランスだと思います。香りの持続も良いのに香りのフェイドアウトの仕方が美しく、ラストノートが過剰に甘くならず、すっきりとした若干の硬さがあるのは、アンバーなどの樹脂系香料やバニラやトンカビーンを置かず、ムスクの代わりにアンブレットシードで整えているからでしょう。パルファムも同時に片腕ずつ試してみましたが、パルファムとEDPでは濃度が違うだけで原液は同じだからか腕の左右差はゼロ。これなら確かにプロモーションでEDPを配っても炎上セーフです。

ジェントルマンも終始「これいい香りだなあ…」とご満悦でしたが、いい香りなのは自分なのに、歯が立たないほどリッチで素敵な殿方と対峙しているような気分も味わってしまいました。お世辞にもジェントルマンはリッチではありませんが、素敵な殿方には違いありません。それは読者の皆さんが一番よくご存知だと思います。ゴーゴー、ジェントルマン!

ウー度:★★☆☆☆

*オーモンド・ジェインのカスタマーサポートに確認したところ(2018.3.21)、現在公式サイトはリニューアル中で、現在掲載されていない製品も追加されるとのことですので、そのうちローズゴールドも加わるかもしれません。

 

主な取扱店 

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3012 NC Rotterdam
The Netherlands
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