La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Habit Rouge l'Eau (2011)

立ち上がり:つけてすぐは「あ!良い感じ」と思うのですがすぐ後から私には少し苦手な感じに変わってくる
昼:バニラっぽい香りが出てきた
15時位:ここらへんになると落ち着いた感じまあまあ悪くない。レザー系の残り香が出てきました
夕方:最初はダメ!と思ったけど時間経つにつれて良くなってきました。珍しい。
ポラロイドに映ったのは:ロジャー・ウォーターズ

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アビルージュ・ロー EDT 50ml
Tanu's Tip :
 
2)値崩れして安いもの
アビルージュ・ロー(2011, ゲラン、100ml€92⇒実売価格50mlUS$21.98)
価格統制&在庫管理が甘く、過剰在庫分が市場へ流出し、値崩れして安いブランドは多々ありますが、ここ2年くらいのゲランは目を疑うものがあります。「ゲランは値崩れの定番」というのが私の中での位置づけです。ゲランは昨今中東、ロシア向けの高いラインに注力し、1本10,000€以上するものもボカスカ出しては瞬殺で売れている一方で、一般品の値崩れとディスカウンター流出が激しい老舗ブランドとして突出している気がします。
同じLVMHグループのディオールは、価格統制がしっかりしている方で、香水コミュニティなどではディオールの限界価格がよく討議されています。つまり「この香りのこのサイズで幾ら以下なら偽物を疑え」という事です。シャネルも世界的に販売価格差が少なく、どこで買えばすごくお得、というボーナス国はないようです。一般的にシャネルとディオールは各国の定価設定と価格管理がしっかりしていて、もしこの二つのブランドで半値以下なら偽物を疑うのが定説ですが、ゲランについては製造ロットまできちんと確認できるので偽物とは考えにくいのに、3割4割安いのは当たり前、国内ではゲランブティック等の限定店舗でしか購入できないルールブルーのEDT50ml(税込14,040円)は、アメリカ国内定価US$83(≒9,300円)のところ、同じくアメリカのディスカウンターでは日本への送料込US$32.51(≒3,500円)とほぼアフォーダブル系の仲間入り。この傾向はメンズフレグランスの近作に顕著で、ティエリー・ワッサー調香のアビルージュ・ロー(2011)も日本では終売しているのと容量差で国内価格との単純比較ができませんが、現行品であるフランスでは100ml€92(≒12,000円)⇒アメリカ実売価格50mlUS$21.98という、サイズも国も違うけれど、とにかくジ・アフォーダブルの名に違わぬお値頃っぷりに驚きを隠せません。とにかく、2,500円ぽっちで「ゲランのEDT」がアメリカから送料込みで買えるのは、お財布には優しくてありがたいですが、それでいいのか感がむくむくと募ります。

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EDT50mlで2,500円って…
さて肝心の香りですが、全体を通した印象は、妥当なところで「アビルージュのオーレジェール、さわやかビターオレンジましまし」なんですが、今回ジェントルマンは珍しく「ダメ、この香り…」とシリアスに実装を嫌がったものの、難所を乗り越えポラロイドした経緯があります。本人に「どの辺が苦手なのか」と、試しに私が腕につけ、数分おきに横で香りの変化を確認してもらったところ「これ!この甘ったるくて息苦しい、これがダメ!まあこの匂い、しばらくすると消えてまたいい感じにはなるんだけど、それまでは結構苦手」との事。私は香料にあまり詳しくないので、特定の何が苦手なのか、漠然と「石膏みたいに不透明な、へばりつうようなこの甘さの塊」が香料でいうと何なのか、名実ともに世界№1ゲラン博士(たぶん30年前はロジャ・ダヴだったんだと思いますが)、デンマークのムッシュ・ゲラン主宰「ミツバチとゲランファン友の会」に公開質問してみました。わからない事は詳しい人たちに聞くのが一番です。
今原稿を書いている時点でもぞくぞくと回答が集まってきているのですが、友の会メンバーから「ティエリー・ワッサー氏が多用する、ホワイトムスクの過積載に負けてるんじゃないですか?」と「ジャスミンじゃないですか?」というコメントがあり、ホワイトムスクについてはゲランの近作をまめに嗅いでないので判断しかねますが、ジャスミンは過去同じ不透明感をヴィンテージのジュルビアンで体験したことを思い出しました。ジャスミンも使いようで色々なんだと思いますが、なんでオーレジェール系なのにこんな不透明なジャスミンを投入するかね?というのが率直な感想です。もうちょっと向こうが透けて見えるホワイトフローラルだったら良かったのに…まあ、ホワイトフローラルは結構胸にうっとくる香調をもたらし、透明感とイコールにならない結果を散見しますので、一応「アビルージュ・ローは、爽やかなのに人によっては胸にくる」という事をお伝えしておきます。

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ロジャー・ウォーターズ(1943生まれ) 左:20代半ば。右:60代後半~70代初頭。
そしてポラロイドに映ったのは、ピンク・フロイドのロジャー・ウォータース。なぜ彼が?それはこの人、写真を見てもわかるように、若い頃(左)はこんなにキモい青年だったのに、70近くなって(右)、なんでここまでリチャード・ギアばりにカッコよく老けるかね?!と、年取って良かったと思えるミュージシャン№1ですが、ジェントルマン曰く「最初の苦手な香りがラストは結構良かったんで」映ったんだそうです。人間、若けりゃみなカッコいいとか美しい、なんていうのは幻想です。年取ってカッコいいと言われるのが一番カッコいい。中年女のボヤキじゃありません。どっとはらい。

 

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勿体ないから、夏用に自分で使うかな…



 

 

 

 

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