La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Brut (1964)

A Gentleman takes Polaroids chapter fifteen : 
Gentleman's cheap thrills 1
 
立ち上がり: うは!学生の時何の気の迷いかコンビニで買った安香水の香り思い出す。やっすくてキツい匂いだ
昼: こういうのに限って持続力強いんだよな。朝とあんまり変わらない強さだ
15時位: まだ匂い絶賛発散中。ますます安っぽい輝きを増しながら
夕方: ようやくおさまってきた・・・・でもこの匂い散らしながら電車乗りたくないな。
ポラロイドに映ったのは: 地方から出てきた勘違い私大生(キャンパスは23区内には無い感じ)
 

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ブリュ スペシャルリザーブ 3oz.ガラス瓶に入っている 通常はプラボトル
Tanu's Tip:
 
2017年のLPTは、パルファム・ドゥシタ、グロスミスなどラグジュアリーなメゾンフレグランスブランドとのタイアップが多かったせいか、全体的に紹介する香りの価格帯が上がってしまいました。読者からのアンケートでも「値頃なものを紹介して欲しい」と、リアルな声が上がっているのも確かです。本来LPTにはジ・アフォーダブルという良心価格品紹介に特化したコーナー及びカテゴリーがあり、当の本人ですら香水の販売価格には常日頃非常に厳しい目を向けているだけに、自分のやっている事に矛盾を感じながら歩を進めてまいりました。
そこで、今年は大きな特集も無事終わりましたので、残る日々は心行くままアフォーダブル香水を紹介したいと思います。我らがジェントルマンも「いい香りで安ければそれに越したことはない」素敵な男性ですので、ジェントルマンコーナー年末大企画「安物買いのジェントルマン」のクロスレビューを快諾。今回も店主タヌが選んできた傑作アフォーダブル香水を、あてがわれるがまま体当たりでポラロイドしてくれました。 

  まずはジ・アフォーダブルの定義を、上記過去記事にておさらいしてから、今回の安物買い特集をお読みください。

今回は、根本定義から一歩進み「何故安いか」を傾向別に3種あげ、その代表例を3回にわけご紹介いたします。
 
1)もともと安いもの
ブリュ(1964,ファベルジュ 3oz コロンスプレー、オリジナルグラスボトル US$11.7)
発売当時はアメリカのトイレタリーブランド、ファベルジュから発売されていたブリュは、当時世界でもっと売れたメンズコロンと言われ、女性物のティグリス(1938)に並びブランドの屋台骨でした。ファベルジュは、かなり怪しい形で立ち上がった会社で、元々1842年創業のフランス系ロシア由来の宝飾商、ファベルジュ社の名前をロシア系アメリカ人経営者、サム・ルビンが無断借用し創業、すぐに前出のティグレスでスマッシュヒットをかますも、本家ファベルジュ家と訴訟、1951年に本家がたったUS$25,000でルビンに商標権を売却後、ルビンはさっさと良く肥えたファベルジュを1964年、ブリュの生みの親であるジョージ・バリーに売却。その後転々と商標が転がされエリザベス・アーデンへ、アーデンがユニリーバに買収され、ユニリーバ内でもファベルジェというブランドネームの所在がころころ変わるうち、最後は掃除用品のブランドに零落後消滅しました。一方本家のジュエラー、ファベルジュはゾンビ系宝飾商として蘇り、過去のアーカイブから豪華宝飾品や腕時計をハロッズなどの高級特約店にて販売しています。

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メイド・イン・ザ・USA。でもアメリカン・プライドにこれを加えていいのか
ブリュもヒット作だったのでファベルジュ消滅後も処方が転々とし、現在は米トイレタリー大手、Helen of Troyが販売しています。最初はまともだった処方も、こうして転売が進むうちに、結果定価なんかないような、元々安いドラッグストア香水に身をやつしたのが現在のブリュです。市場価格は5oz(150ml)プラボトルが$10.7ですが、驚くことにブリュには実売価格$26.0のお徳用25.6oz(750ml)サイズがあることで、確かにブリュ一筋のダイハードユーザーがまだ存命だという事が判ります。路線としては資生堂の オードロードス(1972) を思わせる、多少嗅覚が傷んだ高齢者にもわかりやすい甘さと押しの強さが印象的な、おっさん、まいるの~なフジェール系で、持ちが多少悪いのが救いです。既にプラボトルが標準仕様のブリュは、おじいちゃんが万が一お風呂場で落しても割れないのがユニバーサルデザイン。ガラス瓶には「スペシャル・リザーブ」という王仰な名前がついているのですが、それでもたったの3oz$11.7。今回ご紹介したのはそのスペシャル・リザーブ版で、中身はプラ版と絶対同じだと嗅がなくても確信できます。 これは親会社が転々としてひどいことになっているクラシック香水の典型例です。

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スペシャル・リザーブ版にはメダリオンがついている

ふだん使うものは、できるだけ値頃な方がいい。東京都下のキャンパスに4年間通った地方出身の私大生時代から、身だしなみ(特に匂い)には人一倍気を使っていたジェントルマンも、経験値の低さから玉砕したほろ苦い思い出を語っています。でも、ものには限度というものがあり、限界価格も歴然と存在します。LPT的には、①オープン価格 ②実売価格2,000円/100ml以下 ③やたらと箱にキャッチコピーが書いてあったり、製作者コメントがかかれている安い香水は、お奨めできません。だったらとりあえず何もつけず、しばらくはいい香りの石鹸で風呂でも入り、もう少し予算がたまってから、LPT推奨ラインの製品をお求めください。よろしくお願いします。

 

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