La Parfumerie Tanu

- The Olfactory Amphitheatre -

- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -

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Gucci pour homme (1976)

立ち上がり:これはまた懐かしい感じの香り、70年代を感じさせます。スパイシーでスモーク系の香り漂う オフィスの机に煙草盆があった時代の香りだ。
昼:香りの印象変わらず。今回の中では持ちが良い感じ
15時位:ややスパイシー系の香りが強くなってきたか?持ちいいな
夕方:この時間でもまだ香る。良い感じですがつけすぎると危ない
ポラロイドに映ったのは:三つ揃え 白髪(ややごま塩系)短髪の神経質そうなおじさん
 

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グッチプールオム(1976) EDT 30ml 来年はギィ・ロベール師7回忌
Tanu's Tip :
 
エキパージュに続き、このグッチ・プールオムも、ギィ・ロベール師がグッチの為に初めて作ったメンズフレグランスです。ミシェル・アルメラック作の2003年版グッチ・プールオムとは違う香りです。 1974年、グッチ初の香りとして世に出たレディスのグッチNo.1(1974)のペアフレグランスで、イタリアン・フレグランスに特徴的な、立体的で胸板が厚く、体毛の手触りすら感じてしまいそうな、70年代らしい劇画調のウッディ・シトラスシプレです。もちろんスーツは三つ揃えのぴっちぴち。ちょっとでもシャツの襟を開けると体毛が見え隠れ。腕ももしゃもしゃ。それ以上は言いません。イタリア香水は体感的に濃度というか持続がフランス香水よりも良く、イタリア香水のオードトワレ=フランス物のEDP、イタもののEDP=仏もののパルファム、イタものパルファム=濃すぎて酔う、みたいな印象があるのですが、このグッチプールオムも、多少疲弊しているはずのヴィンテージEDTなのに、朝から晩までしっかり香り、経時変化で香りの存在を見失いやすいジェントルマンですら仰天の持続性、一言でいうと「くどい」。これはその他のフランス作品を思い返しても判るように、決してロベール師の十八番な作風ではなく、ひとえにグッチ側の依頼に応えたものと思われます。ここに、今回のテーマ「イカすジェントルマン」の「イカす」の神髄を見るようですね。そのくどさに「神経質」が加わると、もうこれは粘着質に発展しそうな空気が充満してきます。煙草盆の吸い殻も、しっかり吸いきらずに長いまま煙草盆にひねり潰して山盛り。グッチはNHK特集が1本出来て本が一冊出てしまうような壮絶なお家騒動が80年代にあり、

グッチ家・失われたブランド―イタリア名門の栄光と没落 (NHKスペシャル 家族の肖像)

結果この時代のフレグランスも一挙廃番になり、トムフォードとか呼んできてV字回復して今に繋がるわけですが、同じファッションブランドでも、例えばディオールやサンローラン、ジバンシィなどフランスのメゾンは定期的にアーカイヴを蘇らせて温故知新しているのに対し、グッチやフェンディなどイタリアのメゾンは親会社が変わったとか、折々の事情があると、フレグランスに関してはアーカイブをいとも簡単にバッサリ消去してしまい、更地スタートするのはお国柄なのでしょうか。ファッションブランド的立ち位置は、ファッションに詳しくないので何とも言えませんが、少なくともフレグランスに関して昨今のグッチやフェンディが一流の空気を醸し出せないのは、そういう根っこのない更地感が関与しているのかも、とプールオムを通してふと気づきました。
 
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