La Parfumerie Tanu

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Diaghilev (2010)

f:id:Tanu_LPT:20160130180031j:plain2010年のヴィクトリア&アルバート美術館でのお披露目光景。たまたま旅行で出くわして、75ポンドなら、まあ冥途の土産に買ってもいいかな

 

ディアギレフは、もとは英ヴィクトリア&アルバート美術館にて2010年9月25日より開催されたディアギレフとバレエ・ルッスの黄金時代1909-1929展(Diaghilev and the Golden Age of the Ballets Russes 1909-1929)に合わせロジャ・ダヴ氏が調香し、V&Aのミュージアムショップにて限定1000本で記念頒布されたEDPで、ロシアの革新的芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)をモチーフにしています。100mlで£75と美術館の頒布品としては中々勇気のいる価格ですが、自分の店、ハロッズのロジャ・ダヴ・オートパフューマリーでは初出3部作のEDPを100ml£195(当時)で販売する、あのロジャ作だと思えば非常に良心的なお値段で、当時V&Aで実際に入手できた方はウルトララッキーだったと言えましょう。美術展から2年後の2012年、ディアギレフはロジャ・パルファムのラインナップとしてパルファムにパワーアップしてカムバック、価格も1桁アップの£750/100mlとV&Aのなんと10倍。そしてさらに2014年、同年発売された人類創生の女神、女媧をイメージしたヌワ(NUWA)と共にインペリアルシリーズの一員へと昇格しました。
 
フレグランス界の出世魚ともいうべきこのディアギレフ、同じ香りでこんな短期間にここまで価格とプレステージが自主高騰するとは、よそのブランドでは聞いた事がありません。いつまでも価格据え置きでやれとは言わないが、こういうイギリスの住宅並みに価格が上昇するさまは逆に一流どころの商法とは言いがたいのは素人判断でしょうか。これは円安の影響で国内販売価格が値上がりしたゲランなど外資系ブランド話ではなく現地価格の高騰なので、もしこれが既に日本上陸しているブランドだったら円安x値上の二乗効果で天文学的数字になりますが、そもそも彼らは中東&ロシアのオイルマネーを回収することに注力しており、EUメイン諸国はおろか我々のような国土に資源の少ない黄色いサルめの懐をあてにして日本上陸などありえませんので、ご安心を。

 

世知辛い商売の話はこの辺にして、肝心の香りの方はというと、歴史の教科書を読んでいるかのような玄人向きの超どシプレで、ベルガモットーピーチーオークモスというミツコの骨格を持ち、フレッシュなシトラスフルーツとピーチの鮮やかさとクミンやクローブといった涎を呼ぶスパイスに、だっぷりとシベットやレザー、ムスクやぬめっこい樹脂系・樹木系ベースが肉付きと胸板を与え、髭も陰毛もきちんと生えて分泌物もにじみ出す生々しさに溢れています。このオークモスの影を持つフルーティ感の強さが時に息苦しくのしかかってくるようで、ユニセックス系というよりは、男の中に男が欲しい女が棲んでいるような男性寄りポリセックス系の構成で、さすがはロジャ氏、己の行き方を重ね合わせたか、芸に行きゲイを貫く真性ゲイ、芸術家ディアギレフの一生そのものを見事に醸し出しています。ミツコに始まりクセジュ、ファム、ラニュイ、モンタナ系へと続く道がディアギレフの前世にはありますが、オマージュのその先を行っているのは伊達じゃありません。しかもフルコース3回りくらいの香圧ですので、多めにつけたら命取り、体調も考えて慎重にお楽しみにいただきたいリーサルウェポン系の1本です。今、人の迷惑顧みず、骨のあるシプレに酔いしれたい方にはうってつけ。後はお財布と相談して下さい。

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