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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Eau de Charlotte (1982) and Eau de Camille (1983), the two daughters

 

1980年にチェリストのアラン・ムニエ氏と結婚したアニック・グタール(当時35歳)は、それぞれに娘が一人ずついた連れ子婚だったため、いきなり二人の子持ちになります。ムニエ氏の娘、シャルロットとアニックの一粒種、カミーユはずいぶんとキャラの違う子供だったらしく、少しお姉さんのシャルロットはわんぱく盛りのおてんば娘な一方で、年下のカミーユはどちらかというと内気でおとなしい少女だったそうです。
アニックは結婚の翌年パリに小さなお店を開き、たった1種類の香り、フォラヴリル(1981)の販売からお店はスタートします。オープン後は精力的にアイテム数を増やし、現在もブランドの顔であるオーダドリアン、オードラヴァンドやオードムッシュ、そして彼女の姉妹が経営する子供服店の為に作ったノンアルコール・フレグランス、オードボンポワンも同じく1981年に発売されました。

 
1986年、シャンパンメーカーのテタンジェ・グループの傘下に入るまでの5年間、アニック・グタールがまだ小規模な家族経営のブランドであった時代に生まれた香りは、オーダドリアンのような代表作だけでなく、サーブル(1982)、パッション(1983)、ウール・エクスキース、チュベローズ、ローズ・アブソリュ(すべて1984)と、地味ながらブランドにとってなくてはならないロングセラーとなったものが集中しており、生命体としてのアニックが世に放出するエネルギーの大きさを感じます。その一方で、娘をいとおしむ一人の母として残した二つの香りも、忘れてはなりません。
 
ある時、新しく娘となったシャルロットが「ママン、私自分の香りが欲しいな」とねだります。「どんな香りがいいの?」子供ながら、相当のグルメだったシャルロットは「好きな食べ物に囲まれているような香りがいいな」ブラックカラント・ジャムをこよなく愛するシャルロットのお眼鏡に叶うよう、新しいママンはブラックカラント・バッド(蕾)を主軸にし、そこにココアとミモザ、バニラを合わせた、ちょっと不可思議な甘くてフルーティなフローラルノートの香りを作ってあげて、オードシャルロットと名付けてお店に並べます。それから少しして、アニックの実子であり、後にブランドを継承することになるカミーユに「カミーユさんはどんな香りがいいの?」と聞くと「私はお庭の香りがするのがいいな」ー「お庭」とは、彼女が長じたパリのお家に花咲くスイカズラ、フェンスに絡まる蔦が、朝露に濡れ涼やかに薫る庭の記憶ーその通り、青々としたアイビーと甘いスイカズラのシンプルで穏やかなハーモニーが爽やかな、自らの分身であるカミーユそのもののようなグリーン・フローラルノートの香りをママンは心を込めて作り、オードシャルロット発売の翌年、オードカミーユと名付け世に出します。

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オードシャルロット EDP 100ml

 
オードシャルロットは、口の中にじんわり味わいが拡がるようなブラックカラント(カシス)とバニラというグルマンなキーノートにパウダリーなミモザと同じくマットな粉質のココアが加った香りですが、面白いことにいきなり違う生き物が生まれたかと思うほど超硬質なパウダリーノートに変化しています。EDP( アモーレ買収後廃番)とEDTは大分面立ちが違い、EDPは重たい練白粉(香料たっぷり)のような、はたまた蝋で練り上げた舶来クレヨンを彷彿する香調で、特に肌に乗せるとブラックカラントのフルーティな味わいが練白粉の濁流に呑まれてしまい、ココアとバニラの甘さが強い硬質なパウダリーフローラルになるので、少しでもフルーティに装いたい場合は服地かムエットにつけるのをお勧めします。香りの変化もあまりなく、ものすごく持続もよく、かく力強いので、控えめにお使いになった方が良いでしょう。ムエットから漂うオードシャルロットはずいぶんと聞き分けがよく、おしゃまなパウダリーに落ち着きます。EDTは香りの音量としてはEDPの3割程度といったところですが、オードシャルロットについてはEDTの方がつけていて心地よく、多少の硬さはあるものの、ふんわりと美味しいフルーティ・パウダリーに落ち着き、自然と消え入ります。個人的には一般的に深くてしっかりした香り立ちが好みなので、濃度が選べるなら一番濃いものを選ぶ方ですが、これに限って言えばEDP/EDTどちらも手にはいるならEDTをおすすめします。現在日本では販売終了、欧米ではEDT1濃度、100mlワンサイズの展開です。

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オードカミーユ EDT15ml サンプルボトル

オードカミーユは、オードシャルロットとひとつの接点もない、どちらかというとその後に続くパッションやウール・エクスキースなど、グリーンのアクセントが利いた美しい香りのイントロとも言える、グリーンに特化したフローラルで、ある意味当時としてはかなり斬新だったオードシャルロットに比べると、SMNの王妃の水など元祖オーデコロンや、バルマンのヴァンヴェール(1945)を鼻祖とする王道のクラシックグリーンで、手でちぎって指で揉んだようなアイビーの青い葉汁がついた手で鼻を撫でられたようなスパークに、甘くて愛くるしいスイカズラの優しさが溶け込んで、非常にデリケートで抑えた美しさが輝く肌馴染みの良いフローラルへと移ろいます。残念ながら、この儚さが仇になって、肌にのせて香りが数時間と持ちません。もともとがEDT1濃度で、朝、派手につけても昼前には消えてなくなっており、これでもう少し押しが利いたら申し分ないのにな、と残念に思うのですが、カミーユさんのリクエストが「庭から漂ういい香り」なので、強さ的にもこの位でないと、毎日お庭で香り酔い、ではせっかく腕を振るったママンもがっかり、というところなのでしょう。こちらも、オードシャルロットとは別の目的で、香りを長持ちさせたい時は布地かムエットに含ませると良いでしょう。さらに残念なのはしばらく前に廃番になってしまい、お好きな人が買い占め終わったのか、デッドストック品も見かけなくなりました。もし縁あって入手する機会に恵まれたら、クラシックなグリーンフローラルのお好きな方、ナチュラルなハニーサックルがうまくブレンドされた香りをお探しの方には迷わずお手に取ることをお勧めします。
 
テタンジェ・グループの傘下に入ってから支店をオープンするなど拡大方向に向かうも、1988年にガンを患い、実際の経営から一線を退いたアニックは、ガルデニアパッション(1989)の発表後暫くは新作を出すことができずにいましたが、1992年、症状の一時的緩和を見て、当時の社長でありよき理解者であったブリジット・テタンジェがあえてアニックをブランドに戻す決意をし、1995年から1999年8月にこの世を去るまで、かつて揚々とパリのお店で次々と新作を増やしていったあの頃のように、一心に香りへ命を込め、毎年新作を発表していきます。そして亡くなる前年である1998年、愛娘がまだ小さい頃、いつもこう呼んでいた懐かしい愛称をつけた香り「小さな愛しい人」プチシェリーをカミーユに贈り、辞世の句「今夜でなければ」スソワールウジャメ(1999)を残して散るのです。