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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Puredistance White (2015)

ホワイト 17.5mlボトル。

オランダ北部の商工業都市フローニンゲンに居を構えるオーナー、ヤン・エワルト・フォス氏が妥協のない香水、すなわちパルファム・エキストレだけをハイスピードかつ膨満な香水市場に杭を打つかのように輩出している、真の香水好きにはたまらない会社、ピュアディスタンス。一昨年調香を一切公表しないという、使用原料に対し過分にディスクロージャーを求められる昨今の風潮に真っ正面から背を向けたブラック(2013)の登場から既に1年半が経過した今春4月末、いよいよ新作ピュアディスタンス・ホワイトが登場します。
 
各国香水関係者及びブロガーに先行配布されたプレスキット。2mlのサンプルが塗り箱入り…
上が「香りの取説」、下が塗り箱入りサンプル。この箱どうしよう

ホワイトは、ブラックを手掛けたフランスの大御所調香師・アントワーヌ・リーが製作期間に1年をかけ、満を持して誕生しました。賦香率が最大32%とパルファムとしても贅沢な濃度が自慢のピュアディスタンスですが、ホワイトの賦香率は当社比118%、アラブ香油もびっくりの堂々自己ベスト更新38%。さすがはオーナーがデジタルイメージ会社も経営しているだけあって、毎回徹底したコンセプトとイメージワークで押して押して押しまくるピュアディスタンスですが、今回のホワイトもご多分に漏れず「香りの取説」的コンセプトノートが用意されており、産地限定・最高級香料を最適な濃度でベストブレンドしているのは既作と変わりませんが「接近戦用非拡散香水(ピュアディスタンス・アイ)」「考えるな、感じろ(ピュアディスタンス・ブラック)」など、これまでの甘味のないコンセプトとは少々ベクトルが違います。
 
「ホワイトとゴールドに包まれた夢、溢れるしあわせー世界がネガティヴな事象に覆い尽くされているこの時代、香った瞬間ポジティヴに、幸福な気持ちに包まれ、現実を忘れることが出来る、そんな香りを作りました」
ーピュアディスタンス・ホワイト公式プレスキットより
 
……??普段はもうちょっとソリッドなコンセプトで押してくるピュアディスタンスが、しあわせ香水ってか?LPTではこういう売り口上が最もいじりの対象になるため、この、ちょっと電波入っている的なプレスキットを読むや、平常心で紹介できるか不安になりましたが、香りとしてはそんな不安は杞憂に終わる、非常にまろやかで奥行きの深いロージィ・フローラルウッディで、控えめなベルガモットのスプラッシュからすぐに華の華・ローズドメに凛々としたイタリア特産オリス・アブソリュートが相当量積載された王道のパウダリーなフレンチフローラルが現れ、マイソール産サンダルウッドとベネズエラ産トンカビーンが甘露を、ハイチ産ベチバーとインドネシア産パチュリが乾いた奥行きをもたらし、ひとつの暖かな雲のように心と体を包みます。まあこの産地、特にマイソール産サンダルウッドについては世界中の仏舎利(お釈迦様のお骨)をかき集めると1トン越えると言われるくらい「気は心」なので、さすがのピュアディスタンスとしてもまさか本物じゃあなかろうとは思いますが、素人鼻にも良いものを使っているとわかる上質な香りに仕上がっており、香った瞬間しあわせ炸裂、気持ちがポジティブになるほどのドラッグ効果はないにせよ、しあわせとは何か、というところを考えた時、例えば困難を伴う止まらない日常において自分を取り戻す瞬間とか、もういつの話か忘れるほどの昔、灯りを消す直前に撫でてくれた誰かの掌の温もりを、うずくまり両腕で頭を抱えている今、このベッドのなかで思い出すような、ふとこういう香りで抱く根拠のない安堵感、それがしあわせというのなら、ホワイトは十二分にコンセプトを具現していると言えましょう。さすがは賦香率38%、内腿にたったワンプッシュで一日中ふわふわの雲が全身をくるみ、ミドルからラストは甘く、しかしべたつきのないクリーミィなローズとなっていつまでも薫ります。
 
他のピュアディスタンスの香り同様、古くも新しくもない、時代を越えた飽きのこない普遍的な香調で、既出のレディス作品ではアイとオパルドゥの中間地点にいるようなホワイトですが、レディスのラインナップでは一番暖かく柔らかい香りで、華やかな場にも眠りの友にも相応しい出番の多い香りに思えます。ちなみにホワイトはブラック同様ユニセックス扱いのようですが、直接肌に乗せて10日ほど使用した体感ではレディス寄りに思えました。参考までに印象が一番近いのはディオールの限定品、ジャドール・ロー(2010)で、どちらもベースノートはバルサミックですがバニラとトンカビーンでバニラ勝ちのジャドールローと比較して、ホワイトにはトンカビーン=クマリンが主体でバニラはメインで使われていない上、ベチバーやパチュリといった乾いたウッディノートが効いている分メンズフレグランスベースの要素もあり、濃厚ながらも寸止めでハイカロリーにならないのと、圧倒的に拡散が控えめで自分の形に涌きいづるシャージの違いでしょう。またオーモンド・ジェインのタイーフも彷彿としますが、タイーフよりは気持ちストイックな印象です。
 
本製品の発売にはあと1ヶ月ほどありますが、発売に先駆けて公式オンラインショップでは2mlサンプルサイズが29ユーロ(約3,700円)で先行発売されています。本製品は17.5mlが175ユーロ(約22,500円)、60mlが295ユーロ(約38,000円)、100mlが590ユーロ(約76,500円。価格はいずれも送料込、レートは2015年3月現在)の3容量展開で、決して値頃な価格とはいえませんが「ワンプッシュ、または2プッシュで一日中存分にお楽しみいただけます」とメーカーみずから「つけすぎ注意」を謳うほどで、一番小さい17.5mlでもかなり使えると思います。いまやゲランのパルファム各30mlボトルが41,580円(税込)となった日本の相場からしても、もはや法外とも言い難くなっています。まずはサンプルサイズで「白金夢」を見て、夢から醒めてご検討下さい。ただし、大概はサンプルの残量が少なくなるたびにボトルが欲しくなる、それがピュアディスタンスの香りです。
 
左:2mlサンプル 右:ピュアディスタンス全6種が一堂に会すお得なサンプルセットもあります 送料込69ユーロ
 
<2017.4.7追記>
2017年4月現在、オンラインショップでの送料込価格は以下の通りです。(円価格は1ユーロ=118円にて換算)
 
・17.5ml:175ユーロ(≒21,000円)
・60ml:295ユーロ(≒35,000円)
・100ml:490ユーロ(≒58,000円)
・ギフトセット(7種x2ml) 59ユーロ(≒6,900円)
 
※なんと現地価格自体が一部値下げ断行、円高傾向も手伝い、発売当時から25%も下がった100mlボトルや、サンプル数が7種に増えて10ユーロ安くなったギフトセットなど、一層身近な存在になってきました。日本への送料込の価格ですので、上記価格だけで購入可能です。
 
 
 
 
公式オンラインショップ  http://www.puredistance.com/shop/
画像提供:ピュアディスタンス