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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Joy(1930)parfum, before P&G and now


Joy(1930)parfum, before P&G and now

 2011年にP&Gから英デザイナー・パルファムズ社の手に渡ったジャン・パトゥですが、ぎゅっとターゲットを絞りウェブサイトも一新、P&G時代のエンジョイとシラデザンドは廃番、現行品はボトルを統一しジョイ、ミル、スブリームの3点のみとなった一方で、過去のアーカイヴからエリタージュ・コレクシオンとしてジャン・パトウ本店(パリ)とハロッズ(英)、バーグドルフ・グッドマン(米)などの高級百貨店及びロシアとドバイといった(極東と中東の富裕層は当然はずせません)個数・販路限定で復刻を進めていくようで、第1弾は昨年カルデア、パトゥプールオム、オードパトゥの3点が復刻、第2弾は1925年初出の3部作であるデュ・アムール(もとアムール・アムール)、アデュー・サジェス、クセジュ?が本年発売、第3弾としてすでにルール・アタンデュー(1946)、ヴァカンス(1938)、コロニー(1938、ただし復刻ではなくリメイク)の発売も決まっています。さらには今回の買収からブランド建て直しの総指揮を託されている専属調香師、トーマス・フォンテーヌによる新作、ジョイ・フォーエバー発表で、このように「多国籍コングロマリットからの脱却」といわんばかりに、生産拠点をフランスに戻し、戦略的に歴史的名香を生んだ老舗パフューマリーの再興へとイメージを刷新すべく尽力しています。

日本では P&G時代はブルーベル・ジャパンが代理店で、シラデザンド取扱い終了後はジョイとミルだけ国内販売されていましたが、一時日本撤退し、ブルーベルのサイトからも姿を消しましたが、本年同じブルーベルから日本再上陸が決定しました。ブルーベル・ジャパン営業担当に確認したところ、まず8月20日(水)から伊勢丹新宿店本館1Fフレグランスコーナーにて先行発売、追って三越日本橋本店など全国主要デパートに展開する同社フレグランス・コーナーでは11月12日(水)より順次発売されるそうで、現時点での取扱予定アイテムは

【ジョイ】パルファム15ml、EDP50ml、EDT50ml
【ミル】EDP75ml
【ジョイ・フォーエヴァー】EDP(2013)、EDT(2014)各1容量ずつ(容量未定※)
 ※EDP:30ml,50ml,75mlあり。EDT:30ml,50ml,100mlあり

以上6点となります(変更の可能性もあり)。スブリームは選外となりました。

今夏急遽再上陸決定となったそうで、伊勢丹以外の主要デパートに展開するブルーベルのフレグランス・コーナー販売員には、伊勢丹の先行取扱はおろか自店でのパトゥ取扱に関しての情報すら届いておらず、顧客からの問合せで知った店舗もあるようです。内輪の事情はさておき、まずは少ない扱いアイテム数の中にジョイのパルファムが含まれている事にサムズアップと言えましょう。

 ジョイを初めて店頭で試香した時、いきなり目の前に、厚化粧の古臭い金満女優が、歯にべったり口紅をつけて笑っているイメージが浮かんだのを、今でも鮮烈に覚えています。 今でもその基本イメージは変わらないのですが、花の香りで「豪華」を描くとこうなった、金字塔のようなフローラルです。最高級の天然香料をふんだんに使用している事でも有名な ジョイですが、ジャン・パトゥが、世界大恐慌の嵐が吹き荒れる中、いいものを作れとアンリ・ アルメラスにたきつけ、必死に試作品を作っても作ってもボツになり、やけくそになったアルメラスが「ここまで原価が高けりゃ、パトゥもぎゃふんと参るだろう」と精油の使用量が臨界点を突破したのがジョイで、企画が通って一番ビビったのは当のアルメラスだった、というのは有名な話ですが、P&G時代の公式処方でも、ベースノートの合成ムスク以外はすべて天然香料であるとされていました。確かにつけると物凄い濃厚で、香水というよりは「花の汁」という体感で、フローラル系なのにいつまでもどこまでも厚みのある香りが体から滲みだします。ジャスミンを髄とし、イランイランが肉となり、ローズ・チュベローズ・ムスクが色を成すシンプルな構成ですが、どれもが主役級の花精油、しかもグラース産最高級品。五者五様に香るのではなく、見事なまでに渾然一体となり、一塊の「華」として開花するのはこれが名香と言わずして何という、の迫力です。かなり生々しい香りなので、体調によってはジャスミンとイランイランのハーモニーが生臭く感じ、香り酔いを感じる事すらあります。個人的には神経が立ち上がる100%ハレの香りで、 オフタイムのリラックス用には向きません。しかし、ジョイは好き嫌いにかかわらず、クラシック香水ファンは必ず一度は試さなければならない香りだと思います。 

現在のラインナップはパルファム、オードパルファム(昔のオードジョイ)、オードトワレです。パルファムは、かなりの販路限定で販売しています。今回紹介したのは、パトゥがP&Gに買収される直前、1990年代後半に流通 していたパトウ社最後期ロットのパルファム(見出し画像)です。P&G最終品に近いロットでも、香りは パトゥ品とほぼ寸分たがわないと言われていたので、現行流通品の印象も殆ど変わらないのではないかと思います。しかし、ジャスミン精油やローズ精油が今後IFRAの規制により、 自由に使えなくなったら、ジョイのような精油のかたまりみたいな処方はひとたまりもないので、我が血となり肉となっている5番も心配ですが、ジョイも「終わり」かな、と 諸行無常を感じます。一方、デザイナー・パルファムズに買収されてから、パトゥ版「世直し隊長」フォンテーヌ氏の指揮のもと原料ルートやボトル工場まで見直し、原価がぐっと上がったそうで「品質が著しく向上した」と鼻息の荒いフォンテーヌ氏、いったいP&G品はどんだけ品質が落ちていたのか、それを嗅いでも「寸分たがわない」と絶賛していた人たちはなんだったのか、結局香りよければすべてよし、というところでしょうか。

閑話休題、「世界(近代)3大名香」と称されるのは5番(シャネル)、アルページュ (ランバン)、カレーシュ(エルメス)またはマダム・ロシャスなのだそうで、すべてフローラル・アルデヒド系に偏っている所を見ると、この3点が3傑となったのは3~40年前なのではないかと思います。てっきり私は「5番、ミツコ(またはアルページュ)、ジョイ」だと思っていたので、なぜ あの臍下丹田にさっぱり力の入っていないカレーシュが3傑の一員なのか、これだけ自らを女王だと言って聞かないようなジョイが圏外なのか、ところでミツコはどうなんだ、なんで3傑全部、ゲランやキャロンみたいな香水店ものではなくクチュリエ物なんだ、そもそもいつ誰が決めたんだ、と謎は謎を呼ぶ「3大名香」です。

パルファム 15ml 1970年代流通品、欧州空港免税店にて購入 (ボトル提供:江口彩子氏)