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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Complice of Francois Coty (1973) parfum / Coty, The Post War Dream : part 2

02-1. Classic A-G

Coty, The Post War Dream : part 2

ファイザー買収から10年後の1973年、コティ社とコティ・インターナショナル社は合併し、それまでの「最高の品質を手の届く価格で」というコンセプトを一新し、一気にマス化・拡大路線への道を驀進していきます。路線変更したコティはワイルドムスク、スティクスなど、現在もドラッグストア・クラシックとして庶民派香水史に名を残す新作を矢継ぎ早に発売しますが、コティ往年の幻想香水として発売された最後の作品がコンプリスです。

Complice of Francois Coty (1973)

日本ではファイザー(1963-1980)とサンスター(1982-1990)の代理店2社にまたがって販売され、発売当時は135種類の香料をふんだんに使用した、戦後コティの最高傑作と銘打ち、継続生産されていたロリガンなどの戦前の名香よりワンランク高い価格帯で販売されました。

アールデコの結晶とも言うべき往年のラリックらしいキャップデザイン

コンプリスは、実は全くの新作ではなく、故フランソワ・コティが生前残した調香と、ルネ・ラリックに依頼していたクリスタルボトルのデザインをもとに、約40年の歳月を経て初めて製品化された未発表作品で、どうりで非常にラリック的な30年代ど真ん中アールデコデザインのボトルと、いかにも戦前の装飾品に身を包んだ、荘厳な女性の面立ちを感じるヴィンテージテイスト溢れる香調で、1973年をして既に時代のトレンドを度外視した(それでも戦前の香りは普通に手に入る時代だったので、今ほどの「おばあちゃんの鏡台」的陰性反応はないと思いますが)香水らしい豊かな香りです。すべてにおいて戦前のクラシック香水然とした、序破急がきちんと計算されたパウダリーなフローラル・アルデヒド系で、ベルガモットアルデヒドがバーストした幕開け後、じわじわとパウダリーなアイリスやライラック、ナルシスなどの甘重いフローラルが展開し、ベースにあるサンダルウッドとムスクの甘さをオークモスが伏せ目がちにまとめ、ふつふつと、時に体温の上昇と共に溢れるように薫る、かなり正装感の高い戦前香です。同じ戦前王道フローラル・アルデヒド系でも5番のような目のすわった微笑みとか、アルページュのような柔和な母性、または同時期のジョイの如く自分が自分が、という孔雀のような高い心根も感じず、ひたすら予定調和でスクエアなのですが、そこがまた不思議と、激情や堕ちる定めを仕立ての良いドレスや美しく着付けた和服の奥に押込め、正しく生きると決めながら、いつか生きられなくなる隠微なざわめきのような、そんな危うい雰囲気すら漂うところが、名の如く「共犯者」たる所以と言えましょう。日本でも「愛の罪人」などと大島渚っぽい邦題で紹介されていましたので、こういう印象は当たらずも遠からじと思います。

コンプリスに続くニュアンス(1975)からは、手磨きのクリスタルボトルに納められたアンプレヴーやラリックデザインのコンプリスに比べるとプレーンなプラスチックキャップにプリントロゴのスプレィボトルと言った、見るからに低予算なパッケージになり、マス化の轟音が土埃をあげて聞こえてきます。

さらにコティは1992年、ファイザーが株式非上場の投資会社、ヨー・A・ベンキーザー(独)へ売却し、ベンキーザーはコティを自社のマスブランド、クインテセンス部門と合併、1996年にはコティに先立ち買収していたモナコのランカスターグループとも合流させ、ファイザー時代のそれとは比べ物にならないほど大規模かつ複合型のマスプロダクト化を推進するだけでなく、ファッションブランドのライセンス香水に代表されるプレステージ部門をも積極的に拡大、現在では世界ランキング第2位の売上高を誇る香粧品企業に返り咲きました(ちなみに2014年現在、世界第1位はロレアル)。現在もベンキーザーはコティの親会社として株式を保有していますが、拡大を続けるコティは2013年、NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場を果たしました。企業の成長に反比例して時代を作った名香たちが粗末に処方変更され、または忘却の彼方へと葬られていく姿は、諸行無常としてくくるにはあまりに寂しい、虚しいものを感じます。それは、かつて香水王として野心と革新に生き、栄華の極みを謳歌し、史実としては語り次がれる偉業をなすも、死して遺族に「興味なし」と言わしめたフランソワ・コティの生涯とも重なります。

パルファム 7.5ml

参考文献
Perfume Shrine (Imprevu)
http://perfumeshrine.blogspot.jp/2010/05/coty-imprevu-fragrance-review.html?m=1
Coty Perfumes (Imprevu)
http://perfumeshrine.blogspot.jp/2010/05/coty-imprevu-fragrance-review.html?m=1
The Non Blonde (Complice de Francois Coty)
http://www.thenonblonde.com/2010/06/complice-de-francois-coty-vintage.html#.U5aow8tZqM8

ボトル提供(Imprevu,Complice de Francois Coty)  江口彩子氏