La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Trois Fleur (2009)

Trois Fleur (2009)

調香師兼科学者であるモロッコ生まれのコルシカ人、マルク=アントワーヌ・コルティッチエートが2003年に立ち上げたニッチ・フレグランスブランド、パルファム・ダンピール(香水サイトなどではパルファム・ド・エンパイアと表記されていることが多い)から、2009年に発売されたトロワ・フルールです。

パルファム・ダンピールは当初ブランド名「帝国香水」(笑う所ではないんですが、漢字で書くと右翼っぽくておかしいですね。マークもフレッドペリーっぽいし)のとおり、世界の名だたる帝国に思いをはせたオマージュ香水を出していたのですが、帝国も底を尽きたのか、最近は小説の登場人物やトロワ・フルールのような「そのまんま」な名前の香りを普通に出しています。ご本人がヨーロッパの辺境出身なため、着眼点が生まれ持ってエキゾチックなのか、フレンチシックの王道からはかなり逸脱した、力強く個性的な香調のものが多く、ユニセックス系のものが殆どですが、アンブル・ルッスやキュイール・オットマン、名前で日本人のハートわしづかみなイスカンダルなど、見えないところが毛深そうなものが人気な印象のブランドです。本年ボトル及びパッケージ、ウェブサイトを大々的にリニューアル、2014年7月時点のラインナップは13種、EDPの1濃度、50/100mlの2サイズ展開で(リニューアル後は基本100mlの1サイズ中心になる模様)、そこそこ値頃な価格帯でぼちぼち精力的にやっています。数年前には日本上陸も果たしましたがさっさと撤退、現在は日本未発売のブランドです。

香りとしては、もう本当に「そのまんま」なローズ、ジャスミン、チュベローズといった3本柱のフローラルど真ん中で、しかもこの3者が暴力的なまでに声高な笑い声を同時多発にあげて始まるトップノートにのけぞります。ローズの青み、チュベローズの甘味、そしてジャスミンの生臭さ、三者いずれも主役を張れるだけの力量を持つノートなだけに、三者三様相手を立てずに譲らず、俺が俺が、私が私がと香ります。かなり強香なフローラルで、しいて言えばチュベローズが半馬身程抜きん出てあまり展開せずに着地、といったところでしょうか。雑味がなく透明感があって、フローラルの出来としては上等なのですが、砂糖で言ったらグラニュー糖、塩で言ったら精製塩、といった純度の高い衝撃を感じます。ロベール・ピゲのフラカ(EDP)から脂っぽさをとことん精製し、ローズとジャスミンをぶち込んでよく混ぜていない、といえばお分かり頂けるでしょうか。食事時や通勤時は要注意。気温の高い時期は下半身だけにつけた方がよさそうで、間違ってもうなじや耳の裏にはつけませんように。香水に「力」を求めるフローラル好きには問答なしにお奨めです。

トロワ・フルールを嗅ぐと、どうしても冨士眞奈美岸田今日子(故人)・吉行和子の「仲良し三人組」が一緒にバス旅行して温泉宿で舌鼓、みたいな番組を思い出します。絵的にあれだけ百鬼夜行でも、本人たちが「仲良し」だと言い張るのですから、外野は物言いのしようもないのですが、こっちの精気まで吸い取られそうな気持ちになるのと似ています。

2014年版新デザインボトル、100ml

画像提供:パルファン・ダンピール