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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Nuit Andalouse (2013) and the everlasting hunger for Japanese Gardenia

Nuit Andalouse (2013) and the everlasting hunger for Japanese Gardenia

年に1,2作のペースで丁寧に、かつ順調に新作を出しているMDCIにとって1年ぶりの最新レディスとなる、ニュイ・アンダルーズです。MDCIは2012年にシプル・パラタンというユニセックス系(MDCIのユニセックス系は頭にカラカラ帝がつく)を出していますが、爽やかなグリーンフローラルシプレで結構気に入って毎日のように何度も使ったんですが、毎日つけても翌朝には記憶まで消えてしまうのか、不思議なくらい印象に残らない香りで、いい表現がまとまらないうちにラッキーセントから購入したサンプルを使い果たしてしまい、後程MDCIから大容量サンプルを買い直しましたが、今回はレビューが間に合わないので1作飛ばしてご紹介します。

発売後半年はとうに過ぎた現時点でなお、公式ウェブサイトでの紹介が間に合っておらず、正しい名前の由来がわからないのですが、かつてはイスラム教の支配下にあり、中世においてレコンキスタによりキリスト教を取り戻した後もアラベスク文化が色濃く残る、アラブ流に呼べばアル=アンダルースことスペインのアンダルシア地方、そのエキゾチックな「夜」を名に持つこの香り、調香はロベルテの研修生時代に手掛けた処女作がアムアージュのエピック(2011)という大型新人にして、既にジョヴォワ・パリや新興ニッチブランド、中東向けウードフレグランスのカスタムメイド製作など精力的にこなす女性調香師、セシル・ザロキアンが担当しています。

今回も男子禁制、MDCIトーン炸裂のピーチシプレが核に坐ってはいますが、今回の主役はガーデニアです。ただし、ガーデニアといってもいかんせんティアレフラワー寄りな、トロピカルムードたっぷりのエキゾチック・ガーデニアで、 雨露に濡れた肉厚な純白の花弁から溢れかえり 、くつろぎと心のざわめきを同時に与えるような、日本の梅雨を彩るむっくりとクリーミーな和のくちなし香とは似ても似つきません。和くちなしの真骨頂である、触れると吸い付くもち肌のような色っぽいもったり感とはまた違う洋のガーデニアに引立て役のアル=アンダルース香(サンダルウッドにオレンジをブレンドした伝統的な中東香)やバニラムスクとローズ、イランイラン少々で厚みととろみを出し、低湿度のムラムラ感を演出しています。「夜」といっても、8時9時でも太陽が沈み切らない黄昏時の終わり頃、赤と青のないまぜな夜を眼奥に感じます。

閑話休題、和くちなしの生花が形(一重も八重も)、香りともに大好きなのですが、あの和くちなしの香りを忠実に持ってこれている香水に、今だ出会ったことがありません。ガーデニアの天然香料は収率が悪く殆ど取れないので、調合香料(ガーデノールことスチラリル・アセテートやラクトン系合成香料を中心にしたガーデニアベース)を用いるのも再現が難しい一因かもしれませんし、梅雨時の湿度が決定的なトリガーとなる和くちなしは欧米では縁のない香りでしょうから仕方のない話なのですが、この大和撫子的不完全燃焼感が更なるくちなし香の探求へと触手を延ばす悪因でもあるのです。

話がそれましたが、ニュイ・アンダルーズはレディスのうち一番肉感的ながら催淫性のある動物的要素は一切なく、既出の香りと同様に上品で親しみやすいMDCI流穏やかなオリエンタルで、肩に流した長い黒髪に緑の瞳、そして何故かテラコッタ色をしたスパニッシュ系の女性ではなく、抜けるように色白で豊胸な、プロメッス・ド・ローブやアンレヴマン・オ・セライ(廃番)の美しい従姉のように感じます。

MDCIのレディスは良く言えば徹底した統一感、悪く言えばいつもどこかうすらサーモンピンク色したピーチシプレ仕立てなものが多いですが、確かに、いつもボトルには同じ頭がつくわけですから、頭のイメージとかけ離れた女性像にはならないのも道理で、頭のモデルは好みの女性♪とのたまう創業者のクロード・マーシャル氏、あたかも最愛の女性の肖像画を幾枚も、世界中の名だたる画家に腕を振るわせ描かせているような、画風は違えど現れる女性はただ一人、と言わんばかりなマーシャル氏のぶれない方向性と言えましょう。MDCIトーンでボディのある物をお探しでしたらおすすめのひとつです。

 

箱が、地味・・・。マーシャル氏の「こだわり」はあくまでボトルと頭にあるようだ