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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Peche Cardinal (2009), Un Coeur en Mai (2009/2014)

Peche Cardinal (2009)

MDCIの第2弾ラインナップとして2009年に登場した、チュベローズ好きなリアンヌ・ティオ・パルファムのリアンヌさんも一押しのペシェ・カーディナルです。調香は世界的ヒットとなったリニューアル版クロエ(2008)が押しも押されぬ代表作である若手、アマンディーヌ・マリーで、クロエのパルファムも手掛けています。

「枢機卿の罪」という、これまた大袈裟な名を持つペシェ・カーディナルは、Peche=ピーチと宗教上の大罪を掛け合わせ、香りも若々しいピーチからスタートします。ただフルーティなトップはあっという間に収まって、すぐに直球のチュベローズ香に展開し、そこからはあまり変わりません。ココナッツの甘さも効いてよく拡散します。よくよく嗅ぐと、レザーが潜んでいるような気もしますが、立ち姿勢で新品の革鞄の匂いを嗅ぐ程度のアクセントでしかありません。公式ウェブサイトではフルーティ・フローラルと定義していますが、チュベローズの強いホワイト・フローラルな時間が長く、雑に嗅いだらフラカのイントロ違い、というのが率直な印象です。フラカがド派手なフューシャ・ピンクだとしたら、ペシェ・カーディナルも印象は派手ですが、肉色寄りのサーモン・ピンクです。

名香フラカを先に知っているから、結局はフラカの比較対象の一つとして後発の印象が薄くなるだけかもしれませんが、同じチュベローズ&ココナッツの近作なら、強烈なバスクリン臭で始まるカーナル・フラワーの方が香りにパンチがあります。あれも法外にお高い一品ですが、展開の面白さという点では軍配が上がります。レディスの香りですが、同じタイトルでベースのウッディレザーをもっと前面に出したら、ユニセックスな変態度が増して「ボトムレスの枢機卿が、肉色の頬と×××を露わに染めて…」なんて能書きで「イケナイ枢機卿」なんて訳されてエタリーブルドランジュあたりに出てきそうです。そうしたら頭付ボトルの1/10位で買えますね。

   イケナイ枢機卿・・・確かに下半身はありませんね。

 

Un Coeur en Mai (2009/2014)

アン・クール・アン・メは、ペシェ・カーディナルと同時発売されたMDCI第2弾シリーズのひとつで、調香は来週特集するパルファム・ニコライのオーナー調香師、パトリシア・ド・ニコライが担当し、大変わかりやすく心地よい、まさに「5月の心」という名前が言い得て妙なグリーン・フローラルです。物凄く透明度が高く繊細で、美しい青葉輝く5月の朝を髣髴とし、EDPとはとても思えない程うっすらと軟らかく香り立ち(註)、つけ始めのベルガモットやプチグレンなどの苦酸っぱいシトラスがクラシックな幕開けを呼び、ヒヤシンスやガルバナムに後押しされたスズランやミモザが終始瑞々しく香ります。調香にはコリアンダーやペッパーもありますが、全く気づきません。爽やかで甘さ控えめですので、たっぷりつけて楽しんだ方がよいと思いますし、季節としてはまさに5月、または春夏向けで、秋冬に衣服の下につけても、香りが立ってこないと思うので、秋冬につけるならニナリッチやティーオ・カバネルのライトフレグランスのようにあえて肌の露出する部分がよいでしょう。

海外では、現代版シャマードと良く評されていますが、激情型花束爆弾であるシャマードに比べたら、アン・クール・アン・メには人を挑発するというDNAが全くない、お育ちの良さそうで野暮ったくはないけれどおっとり型のグリーンフローラルですので、香りが苦手な人や初めて香りをつける方にお奨め、と言いたいところですが、おいそれとプレゼントにしようものなら、その価格ゆえ贈る方も貰う方もかなり負担な気がします。
目新しさは全くなく、こういった香りは高度成長期から現代にかけてのグリーン・フローラル系がお好きで色々お持ちの方なら、1本位家にそっくりなのがありそう(でも何だか思い出せない。今私がそのジレンマに陥っています)なので、決めの一押しがないのですが、もしMDCIの中でどれか選びたいというのであれば、年齢を問わず素直に心地よい香りなので間違いはないでしょう。何かを買ったおまけで、これのサンプルをくれるお店があれば、ぜひ貰って下さい。

註/補足)発売より5年後、うっすらと柔らかく香る発売当初の処方では持続時間が短かかったため、処方はそのままに賦香率を上げて(香料の濃度を高めて)持続時間を延ばそうとしたのですが、原料の幾つかにIFRAの規定値を越えてしまうものが出てしまうことがわかりました。そこで、ニコライ女史はいったん処方をご自身のアトリエへ持ち帰り、可能な限り香りを変えずに賦香率を上げて持続時間を延ばすべく、一から処方を見直すことにしました。

具体的には、もともと余り効いていなかったペッパーやクローブなどのスパイス類を丸め、ヒヤシンスやスズランといったアン・クール・アン・メの核となるアコードをそっと前へ後押しし、ガルバナムやプチグレン、ヘディオンなどが織りなすグリーンノートとのハーモニーをより声量のあるものにした結果、個人的な体感としては2倍近く持続時間が延び、しかも一点の濁りもないペリドットのような香りの色合いはそのままに厚みが増し、オリジナル版・処方変更版を左右につけても何ら違和感を感じないごく自然なリニューアルとなっています。確かにクラシック香水のリニューアルと違い、初出から5年以内の処方変更なので、香料自体が入手/使用不可能というわけではない分、変わり果てた姿になる危険性は低かったでしょう。予算削減で香料の原価を下げるための変更でもありません。しかし、処方変更で少しでも納得できないなら潔く廃番、より良くなるなら原価が上がってでも実施するメーカーの不器用なまでにまじめな姿勢には新鮮な驚きすら覚えます。


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