La Parfumerie Tanu

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- The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes -


I'm a Stranger in Arab - introduction

 

I'm a Stranger in Arab

ー 異邦人が訪ねるアラブの香り -

 

一昔前のアンバーに続き、近年の香水業界はどこもかしこもウードばやり。そんなウードのたけのこ状態から本当のウードがひしめくアラブ香油の世界へ滝登り。アラブ社会に縁故なし。ちょっと振り向いて見ただけの異邦人、何も知らないLPT店主が滅多やたらに体当たり。


アラブ香油の基礎知識から主要ブランドを一挙紹介、各ブランドの代表作・佳作・秀作・問題作をLPT初の試みでチャート化。さらに、すぐそこに香るアラブが絵に描いた餅にならぬよう、アクセス至便な優良アラビアンパフューマリーもご案内と、シーズン3はアラブに捧げたLPT渾身の大特集、まさに千夜一夜物語。

 

中東香。えええ〜香りや〜

 

アラビアン・フレグランスの基礎知識

 

我々日本人が普段使用している「香水」は、英語ではPerfumeまたはFragrance (フランス語ではParfum,ドイツ語ではDuft)と表記しますが、アラビアン・フレグランスの場合基本的に「香油」を指します。フレグランスと言え ば香水しか馴染みのない我々日本人を含む西欧化社会にすむ人種にとって、香油はそれだけでエキゾチックな存在ですが、世界的に見ればアルコールベースの香 水よりオイルベースの香油の方が伝統と歴史に育まれたフレグランスの元祖と言えましょう。

 

アラビアン・フレグランス基礎単語

大手アラブメーカーのウェブサイトはアラビア語と英語の二か国語対応である場合が多いのですが、英語であってもその商品が「香水」なのか「香油」なのか、或いは香なのか、予め幾つかのキーワードを知っておく必要があります。

香油:Concentrated Perfume Oil (CPO) / Attar(アッター) / Itr(イトル), Arabian perfume oil
香水:Spray, eau de parfum / eau de toilette, Occidental perfume (Occidental = 西欧の意)
香:Bakhoor / Bukhoor / Boukhour (バフール), Arabian Incense

香油の単位

油は十進法ではなく、トーラという単位が用いられることが多いです。1トーラは十進法で12mlを指し、その半分の1/2トーラ(6ml), そのまた半分の1/4トーラ(3ml)単位または3トーラ(36ml)で取引されます。4000年の歴史を誇るアラブ香油は今もなお量り売りや十進法では なくトーラ単位での取引が中心で、量り売りの場合は1トーラ当たりの価格が表記され、トーラ単位で幾らでも(多くも少なくも、ただし最小は通常1/4トー ラ)購入可能です。業務用ボトルについては100ml,500ml,1000mlといった十進法になります。一方、そのまま店頭に並べることのできるパッ ケージ売りの香油については、欧米向けに10進法の単位で販売されますが、ボトルに重厚なクリスタルを使用したハイエンドなパッケージではやはり1/4 トーラや1/2トーラのボトルが多く見られます。

香油のメリット

1)賦香率が高いので少量で長時間持続する

我々日本人が慣れ親しんでいるアルコールベースの香水は、賦香率(香料の濃度)がオードパルファムで10~15%、一番濃度の高いパルファムでもせいぜい30%どまり(ピュアディスタンスのレディスが賦与香率32%というのはパルファムでも濃厚な方)ですが、アラブ香油 は基本的に香水でいったらすべてパルファム濃度で、低くても25%は下らず、ものによっては賦香率が40%もあります。よって柔らかい香りがまろやかに長 時間持続するものが多いです。人気の香りの多くは欧米向けにアルコールベースのオードパルファムも出していますが、アムアージュのようにアルコールベース のパルファムを出しているメーカーは殆どなく、ラインナップとしてEDP(EDT)とパルファム、と記載されていても、パルファムは香油を指すのでご注意を。

2)オイルベースなので拡散が抑えられる

香水は香料を アルコールで薄めているため、濃度に関わらず肌に乗せるとアルコールの揮発作用で香料が拡散します。賦香率が低ければ低いほど拡散力が高い(パルファムよ りEDP、EDPよりEDTの方が薄くて軽く、時にきつく香るも持続が短いのは、より少ない香料をより多いアルコールが拡散させるため)のですが、香油に はアルコールが入っておらず、代わりに香料とも肌とも馴染みのよいオイルがベースになっているため、肌の上で体温に温められた力で香料がやんわりと拡がる ので、香水よりも拡散が控えめになります。よって、自分には大変ふくよかに香っていても、じっとしている分には隣に座っている方ですら気づかない事すらあ りますが、ふとした仕草でふんわりと拡がるシャージュは確かに賦香率の高さを味わえます。ただし、ニューシトラス系など西欧のトレンドを意識した香りでは 香料の性質上、アラブで主流のウードミックス系やムスク系よりは拡散します。

3)消費期限が香水より長い

香油には、劣化の原因となる水分が含まれていない為、香水よりも消費期限が長く、通常2年といわれている香水に対して香油は5年は持つので、幾つもボトルを所有しても劣化による香りの変化を起こす前に使い切りやすいと言えます。

4)量り売りで少量から買えるものが多い

一般的にアラブ香油は、装飾の施されたボトルの他に、100ml・500ml・1000mlスチール缶の業務用ボトル入りルースオイルも多数販売しており、 小売店ではこの業務用ボトルから、タッチスティックかロールオンヘッドのついた小分け用ボトルにトーラ単位で量り売りしています。勿論缶単位でも購入でき ますが、香水でいったらパルファムをスチール缶で100ml買うのと同じで、少量つければ充分な濃縮香油は新鮮なものを小分けする方が一般的のようです。 また、伝統的な高級メーカーは量り売りと専用ボトル売りの比重が前者の方にあります(アラビアン・ウード、アブドゥル・サマド・アル・クラシは圧倒的に ルースオイルの方が主流)。スイス・アラビアンやアル・ハラマインなど、人気の香りはパッケージボトルと並行してルースオイルも用意しているメーカーも多 く、同じ香りならボトル入りよりも量り売りの方が安く、愛用者にとっても、試してからボトルを購入したい人にも非常に親切なシステムが普及しているのは、 香りと共に生きてきた湾岸文化の証でしょう。

香油の注意点

1)色素の濃いものは衣服の染みになりやすい

香油の基本的な付け方は、ボトルのタッチスティックやロールオンで、香水のパルスポイントと同じ、体温の高い場所に薄く伸ばします。香水と違い香油は揮発性 ではないため、オイル分が肌に馴染むまで一呼吸おいてから衣類を着用する事を心がけましょう。アラブ香油に使用されるウードオイルやブラックムスクなど は、他の香料とブレンドしても単体の色素が濃い上、オイルベースなので衣服につくと色のついた油染みになりやすく、洗濯をしてもうっすらと油染みが残る場 合があるので、淡色の衣類を着用する際は、良く肌に馴染ませてから衣服を着用するか、染みになっても目立たない濃色の下着を身に付けてから上物をお召しに なることをおすすめします。アラブ社会でウードとは別次元で抜群の人気を誇るホワイトムスクは、正装が白装束のアラブ男性の切なるニーズにも叶っているのです。

2)高濃度の香料が肌刺激になる場合も

高濃度・長時間持続が自慢のアラブ香油ですが、香料によってはせっかくの高い賦香率がアレルギー反応を起こす場合もあるので、肌に乗せてみてかゆみや湿疹が 出たら、品質よりも賦香率の仕業かもしれません。その場合は無香料のキャリアオイルなどで薄め、賦香率を下げて使うか、それでも肌に刺激を感じるようなら コットンに多めに含ませ(アルコールベースの香水のように拡散しないため)、直接肌に触れないよう下着の間に挟むと良いでしょう。また、香水でも特定の原 料にアレルギーがある場合の肌刺激は、勿論香油でも同じ症状が出ますので、その場合は残念ですが肌への使用は控えましょう。

3)日本では店頭で買えるところがない

これは、私の出不精と勉強不足だと思いますが、今のところアラブ主要メーカーの香油は日本の小売店で販売されているのを見たことがありません。アムアージュ ですら日本上陸していない状況では、いわゆる「アラビアン・インスパイア系」、欧米メーカーが輩出する、なんちゃってウードみたいなファッション・フレグ ランス以上のものは上陸しそうにないのが現状です。今のところ、この特集の最後にご紹介するオンラインショップで購入するか、お土産に買ってきて貰うしか ないのが残念なところですが、香水好きの方はチャンスがあったら一度はお試しいただきたいと、LPTは熱く願っています。