La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Robert Piguet classic collection

Robert Piguet classic collection

 

伝説のクチュリエ、ロベール・ピゲはパフューマリーとしても歴史的意義のある作品を幾つも残しました。代表作のバンディとフラカはご他聞に漏れず愛用者も多い名香ですが、現在の親会社であるファッション・フレグランス・アンド・コスメティックス社が、廃番になっていた名作を、今では世界的調香師の仲間入りを果たした若き復刻王、オーレリアン・ギシャールを起用し、丁寧に復刻させたのが、ロベール・ピゲ・クラシック・コレクションです。全7種ですが、うちFuturはアメリカ向けオンラインショップでは取扱がなく、かわりに他の国向けには入らない新作、ダグラス・ハナントがクラシックコレクションにラインナップされています。ヌーヴェルシリーズと違い、クラシック・コレクションにはすべてEDPの他にパルファムも現行販売されています。

Bandit(1944/1999) G・セリエ調香

・「フラカ」を筆頭にロベール・ピゲの香りをはじめ初期バルマン・ニナリッチの香りを手がけた名調香師、ジェルメーヌ・セリエ最初の香りです。一言で言って「猛烈」カッコいいビターなレザー・シプレです。つける人の経験値がものを言いそうです、ご用心。メンズでもいけるEDPと比較して、パルファムはレザーがいい革になったのか、かなり艶っぽい色香が増しています。若い子には無理。イメージは岩下志麻版(実際の番組では山本陽子)・黒革の手帳。

Fracas(1948/1996)G・セリエ調香

・押しも推されぬロベール・ピゲの、そして初期バルマン・ニナリッチの香りを手がけた名調香師、ジェルメーヌ・セリエの代表作。チュベローズ、といえばフラカ、という方も多いのでは。つけた瞬間、目の前がフューシャ・ピンクに見える位のむんむんなフローラル・ブーケで、かなり華やかな香りなので、生半可な気分でつけると香りに振り回されますのでご用心。海外では根強い人気を誇り、芸能界での愛用者も多いことで知られています。ド派手なEDPと比較して、Pはいい意味で重さが出てチュベローズだけが突出せず、美しいホワイトフローラルブーケとしてバランスよく香ります。何故かEDPより持続が短い。女性であることの歓びをかみ締めたい方、そうでない方も知っておいて損はない、歴史的名香の一つだと思います。

Baghari(1950/2006)F・ファブロン調香、復刻:A・ギシャール調香 第1章参照

Visa(1945/2007)G・セリエ調香、2007年復刻:A・ギシャール調香

・オリジナルはレザー・シプレとのことですが、ギシャール版はご本人作・ボン9のチャイナタウン(2005)が少し斜に構えたような、バックでパチュリやモスが睨みをきかす、現代的な美味しいフルーティ・シプレに仕上がっています。復刻というよりはオマージュですね。秋冬には本当にお世話になりました。

Futur(1967/2009)復刻:A・ギシャール調香

・さすがは復刻王、黙ってつけたら上物のヴィンテージと錯覚する程モダンな要素が何処にもない、冷酷極まりない人工的なグリーンシプレで、21世紀の今となっては、まさしくレトロ・フューチャーな香り。「これはノスタルジーではない、時代錯誤である」と発売当初から愛情の裏返しみたいな讃辞を浴びています。かなり上級者向け。香りもちは短めです。発売当初は英ハロッズ限定発売でしたが、ようやくアメリカでも販路限定で発売開始、ただし自社オンラインショップでの扱いはなし。

Calypso(1956/2010)復刻:A・ギシャール調香 第1章参照

Douglas Hannant(2011)A・ギシャール調香

・アメリカの香水メーカー、ファッション・フレグランス・アンド・コスメティックス社を親会社とするロベール・ピゲが、アパレルブランド、ダグラス・ハナントのシグニチャー・フレグランスとしてコラボレート製作した香りです。デザイナーであるダグラス・ハナント氏はアメリカ中西部出身で、米有名デパートのディスプレィマネージャーを経て独立、90年代後半から自身のコレクションをスタートし、近年はブライダルラインも手がけています。公式サイトを見た感じ、セレブの授賞式系ドレスが満載だったので、そういうブランドなんだと思います。今春より、サックス・フィフス・アベニュー及びニーマン・マーカスなどアメリカの高級デパートにて発売中で、ピゲの他の香り同様、50ml・100mlのオードパルファムと30mlのパルファムがあります。こちらの解説はEDPとなります。

調香はピゲですので当然、復刻王・オーレリアン・ギシャールが担当していますが香りとしては一言でいって「フラカ・オーレジェール」。チュベローズが大部分を占めるホワイト・フローラルですが、フラカの一種破滅的ともいえる官能性を現代的にクリーンでフレッシュにアレンジした、というのが一番的確な表現だと思います。

一応公式な香調ではトップはオレンジブロッサム、ペア、ガーデニアとありますが、つけた瞬間、そんな能書きは頭から吹っ飛ぶほど物凄く人工的な「何か」が炸裂します。今のは何だったのか、と混乱のまま、やがて長期間チュベローズに沈丁花が重なったような、美しく強香の花束爆弾系ホワイトフローラルとなって拡散し、やがてジャスミン様ムスクとなって終息します。フラカほど脂性の精油感はなく、あえて生花の持つ一種自然界の生物ばなれした人工的な美しさに着目して作りこんでいるかのようで、最後まで肌に溶け込まないまま終わりますので、一口にフローラルといってもつける服と場所は選びそうです。まあ、セレブの授賞式でつけるのだったら全く問題はありません。

良く考えたら、コラボ香水とはいえダグラス・ハナントは復刻ブランド、ロベール・ピゲとしては初の新作ですが、もしフラカがどこかの段階で廃番となり、失われた名香としてギシャール氏が復刻させたら、まさしくダグラス・ハナントになって戻ってくるのではないかと思われる程のオマージュっぷりなので、クチュリエとしてのピゲを信奉するハナント氏があれこれ注文を出すうちに、フラカに辿り着いてしまったのではないかと察します。

EDP 100ml

カリプソ パルファム30ml