Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Musc Ravageur (2000)

Musc Ravageur (2000)

フランス語の Ravaguerは、英語ならdevastating、原意は「壊滅的な」「破壊的な」というおっかない単語で、そこからの意訳か、身を焦がすほど心をかき乱されて抗えない破壊的魅力むんむんのムスク、というところからつけられたようですが、第一印象は「こ、焦げない・・・」で、香りとしては、尖ったところのまるでない、暖かくスムーズな「ムスクも一応そこにいる」アンバー・バニラで、ムスクというよりはアンバーが番長、バニラは影番、周りにスパイスがぐるりとしゃがんでムスクの焚き火をあたっている感じで、特にオレンジ・ポマンダー(イギリスで最も古くから作られているポプリの原型で、オレンジに十字のリボンをかけ、隙間にびっしりクローブの実を埋め込み、天日で乾かして作るスパイシー・オレンジのポプリ。イギリスでは小学校の工作の時間などで作る懐かしい香り)を彷彿とするタンジェリンとクローブ、シナモン、バニラといった欧米人なら誰でも好きな、DNAレベルで食い込んでいるスパイスが、アンバーやムスクが主張しようとするオリエンタリズムを丸め込んでいます。いわば「身を焦がすムスク」というネーミングの妙で相当稼いでいる感があり、ハッタリ度は名前8、中身2の普通に使い易いオリエンタルアンバーなので、身が焦げるほど扇情的でもなければ、拒みきれないほど激情型でもありません。つい「焦げないムスク」と呼びたくなる親しみ易さで、アンバー系がお好きなら、1本無駄にすることなく使いきれると思います。品質的にも賦香率12%と薄めながら、きちんと計算された拡散力と香りの厚み、適度な重さと持続性がありますので、その辺はさすが「妥協なきオリエンタル」とマルちゃんが言い張るだけの事はあります。

蛇足ですが、公式ウェブサイトにはLPTなら「マルちゃんに何でも聞いてみよう」と訳したいQ&Aコーナーがあり、この一問一答が秀逸で、中には「新しい彼氏が私のお気に入りの香りを嫌がる。どうすればいいですか」など、フレデリック・マルの製品には特別関係のない、若干人生相談的なものもあり、一応マルちゃんが一人称でファンからの奇問珍問に汗拭きながら一生懸命答えているのが、一昔前に人気を博した「生協の白石さん」のようで読み飽きません。その中でもムスク・ラバジューは名指しで幾つも寄せられていて、「ムスク・ラバジューを会社につけていっても大丈夫ですか」「ムスク・ラバジューをぼんのくぼにつけても大丈夫ですか」「ムスク・ラバジューは男がつけても大丈夫ですか」など、何でみんな、こんな難しくない香りをつけるのに社長の一押しが要るんだよ!!と、どいつもこいつもおっかなびっくりなところがミソなのですが、ひょっとしたら欧米では、気候の違いから本当に嗅いだら焦げちゃうのかもしれません。


 

 

画像提供:HLグループ広報