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Portlait of a Lady (2010)

Portlait of a Lady (2010)

マル品のロピオン作としては最新作にあたり、文豪ヘンリー・ジェイムズ(英)の小説「ある婦人の肖像」を題材にした香り、ポートレイト・オブ・ア・レディです。
原作は10年ちょっと前にニコール・キッドマンとジョン・マルコヴィッチの配役で「ある貴婦人の肖像」として映画化されたりBBCドラマにもなっていますが、話としては19世紀末のアメリカに住む、とある女性が①若い頃両親が死んだので親戚を頼って渡英②親戚がド金持ちで、自分も美人だったからモテモテ③色々男に言い寄られるが、選んだ男は金目当て④(中略)すっとこどっこいの末、自立への道へ、というベタな演出満載の昼メロ系歴史ドラマです。

わざわざロピオン師が香水の題材にする位ですから、さぞ壮大なスケールのお話なんだと思いますが、香水自体も情熱の花に続き、またもや「限界に挑戦」系、今回はターキッシュ・ローズとパチュリの「積載量世界最大(2010年現在)」が売りで、ローズとパチュリのベストバランスを決めるために行った試作が数百、と体育会系の熾烈な情熱が込められています。
香りとしては、①酸味のあるシャープなローズに②パチュリ、フランキンセンス、ベンゾイン等の樹脂系が相まってキリッキリに香り立つものの、③ローズアブソリュートのキリキリ感をせっかくの樹脂が誰も丸め込める事ができておらず、④結果として寛ぎを感じさせない仕上がりになっています。
トップからラストまであまりドラマティックな展開はなく、徐々にキリキリ感が小声になってフェイドアウトする感じです。ボトルに賦香率が記載されていないので、確かな濃度はわかりませんが、朝つけてキンキンに香っていたのが昼ごろ急に小声になり、夕方には殆ど香らないので、多分EDP程度だと思います。樹脂系モリモリの割にリフトが軽く、香り持ちが短いです。あと、マル品の商品解説にベストバランスという言葉が良く出て来ますが、黄金比率は人それぞれ、とこのブランドの香りを嗅ぐたび思います。
ちなみに日本未発売ですが、公式オンラインショップでは50mlで155ユーロとなっています。

確かに美しく、神経が立ち上がる華やかな香りなので、ハレの香りとして良いと思いますが、体調のすぐれない時には無理しない方が良いでしょう。「ニコール・キッドマンは美人過ぎて苦手だ」という男性が多いのもわかる、そんな感覚に似ています。個人的には同じパチュリローズ系でメインの1本を選ぶなら、香りも価格も寛げるランスピラトゥリス(ディヴィーヌ、EDP50ml、直販価格72ユーロ)をお奨めします。

 

画像提供:HLグループ広報

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