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La Parfumerie Tanu

The Essential Guide to Classic and Modern Classic Perfumes

Mystere de Rochas (1978)

Mystere de Rochas (1978)

1930年代後半から香水を扱い始めたロシャスがパフューマリーとして業績上最も勢いがあったのは、ファムが爆発的ヒットとなった1940年代でもなく、マダムロシャスが世に出た1960年代でもなく、実の所1970年代なのだそうで、実際ロシャスは70年代当時ゲラン最大のライバルだったようで、ラインナップとしてもファムやマダムロシャスの盤石な売上に 加え、もう一つの傑作、オードロシャス(1970)が加わり、老舗グラン・ パルファムからも最重要メゾンとして火花を散らす存在として恐れられていたとは、現在の先細りな影の薄さからは想像しがたいのですが、このミステア・ド・ロシャスもロシャスが最も勢いのあった70年代の作品で、廃盤になった今も、新品や状態のよいボトルがオークションに出ようものなら、ロシアやフランスの業者があきらかに転売目的で日本の代理人を使って買いあさる程、カルト人気が衰えないひとつです。ロシャスには同じくオーダスという米国市場向けに作られたミステアと近似値の香りがあり、こちらも早々に廃番となりましたが、出物は争奪戦になります。

調香は当時の専属調香師でオードロシャスは勿論ビザーンスや初代ルミエールを産み出し、戦後ロシャスの黄金期を築いたまごうことなき立役者、ニコラ・マムーナスで、彼の調香したロシャスの香りは印象的なものが多く、ロシャスというととかくファムのエドモン・ルドニツカやマダム・ロシャスのギィ・ロベールが語られがちですが、累積的に最もブランドに貢献したのは、マムーナスではないかと思います。香りとしては、まず昨今のロシャスやアパレル系のブランドからは絶対出てこない、ドライでアニマリックなシプレで、どうみても成人指定の催淫性すらありそうなアダルトな香りです。立ち上がりがダスティなグリーンノートですが、徐々にドライなリフトのアニマリックでビターな熱っぽいシプレノートに変わり、体臭の様に肌から湧いてくるように香ります。バンディがもっとエッチになった感じなので、こういう香りが普通にデパートで売っていて、普通に買う人がいたのだと思うと、いかに現在の流行や女性の嗅覚がネオテニーのカワイイどまりかわかりますが、70年代後半から80年代前半、つまり日本で言えばちょうど昭和50年代は、他のメーカーでも成人指定アダルトうっふん系の香りがラインナップの柱の一つとして登場しており、マジ・ノアール/ランコム、ラニュイ/パコラバンヌとこのミステアが昭和50年代うっふん系の3傑(オーダスもアダルトなグリーンシプレですが、ミステア程エロではない)として君臨しているので、いい時代だったなと改めて憧憬の念を隠せません。残念ながら時流の変化には勝てず、3傑もマジノアールは大々的に処方変更、残り2つは廃番となりました。着物にも似合いそうですが、この香りが冠婚葬祭の場で留袖の奥様から香ってきたら、私ならかなり警戒します。

ちなみに、現在入手するとしたら内外のオークションサイトやヴィンテージ香水ショップ等になるかと思いますが、ミステアは劣化が進むとトップが焼けるどころの騒ぎでは収まらず、猛烈に埃臭く、とてもつけられない香りに変化するので、購入前に試香できない場合、多少値が張っても未開封が確認できる品を、それも可能ならフラコンではなく形状上密閉度の高いアトマイザー型かアトマイザーのリフィルを入手されることをお奨めします。

 

パルファム リフィルボトル